占いと悩み。
マルーナさんの意味深な言葉。
必死で涼しい顔を保つけど、内心は荒れていた。そんな私の心の内を分かっているかのように頷き、微笑んでからマルーナさんはさらに言葉を続ける。
「リーシュ様は今、恋愛が遠退いていると思っているかもしれません。しかし、遠回りに見えて、それが近道のようですわ。」
「本当に!?」
「あら、冷静な仮面が崩れましたわね。可愛らしい」
くすくす楽しそうに笑う彼女の様子にハッ!と我に返る。 つい本音が漏れてしまった。彼女の不思議な話術と雰囲気に、どんどん引き込まれる。多分…私自身も一人で悩みを抱えるのは限界があったんだ。誰かに聞いて欲しい…。相談したい。誰にも相談できなかった本心を抑えきれなくなっている。
「昔から、恋人が…欲しいなって憧れてて。好きな人と学園生活を楽しみたいのに…そうする事ができなくて。自分でそういう事態を招いてしまったのだけど。」
「あらあら。」
マルーナさんの優しい眼差しに、つい安心してしまう。そして目を閉じる。閉じているのに私の何かを見るような?そんな不思議な仕草をするマルーナさん。
何故か、その時間は話しかけてはいけない気がした。ほんの少しの間閉じていた瞼は、すぐに開いてまっすぐ私を見る。その瞳を見ると、とても優しくて…何でも言いたくなってしまう。
「リーシュ様が、もし今の選択をしなかった場合。あなたには簡単に恋人ができたでしょうね。」
「それってやっぱりダメだったってこと!?」
余りにも残酷な占い結果!?いや、分かってたけど!私の愚策具合なんてとっくに。でも…でもダメなのか。挽回はできないのか!?と慌てて聞くと、マルーナさんは左右に首を振る。
「いいえ。その場合、今の想い人とは仲良くなることはなかったでしょう。断言できます。」
「そうなの?」
「ええ。しかし、今の想い人以外の方と恋仲になりたかったなら悪手ですわね。今からでも挽回は可能ですが…暫く恥ずかしい思いをするでしょう。」
男装しなければ、クラウさんとここまで仲良くなれなかった…ということか。それは、確かに感じてる。しかし断言されるとは。マルーナさんは、私が誰を好きなのかも分かっているのだろうか。
そして想い人以外と恋仲になりたかった場合…挽回できるけど暫く恥ずかしい思いをするの!?怖っ!!どう恥ずかしいの?怖っ!!
「今の恋…助言をするなら、素直な気持ちを伝えること。リーシュ様は深く考えると拗れますわ。直感が大切です。今までもそうでしょう?」
「素直…本当に大丈夫かな。」
「さあ、それは貴方次第です。」
「ええ、その言い方ずるい。」
「占い師ですもの。」
クスクスと笑うマルーナさんは、ミステリアスで大人っぽい魅力がある。でも、マルーナさんの言う事が当たるとすれば、このまま上手く行けばクラウさんと!?
あるのかな?
成就する可能性が!?。
もっとしっかりマルーナさんから話を聞きたい!と口を開いた時。
「リーシュ君、何を楽しそうに話してるの?」
「わ!」
ビクッ!!と身体が跳ねた。声のほうへ視線を向ければニコニコといつもの調子の想い人…クラウさんがいる。
「ひ、ひみつ!」
「そう、秘密ですわ。」
私が慌てて口を閉じると、マルーナさんが人差し指を自分の口元に寄せて優雅に言う。そんな様子に何かを察したのか、近付いてきた生徒がニヤニヤと茶化してくる。
「聞いてやるなって〜。マルーナさんに聞いてもらうってなったら恋の話だろー。」
「え!?何、リーシュ君が恋!?」
クラウさんの目がキラキラ輝いて、興味津々に身を乗り出す。この純粋な眼差しが、私の恋心を深く刺してくる。
その「自分は無関係」と思っている純粋な好奇心の瞳が…。
「はぁ…」
マルーナさん…ここからどうしたらいいんですか?って聞きたい。それでも今ここで深追いをされても困る。
だから一旦、話を切り上げることにした。
「秘密はひみつ。それで、付与魔法は誰が担当だっけ。このブレスレットに上手く付与魔法できるかな?」
私が話を進めると、クラスメイトたちが付与魔法の担当について話し始めた。その事にホッと胸をなで下ろす。
しかし、親友の眼差しは今も興味津々で…。
クラウの事だよって素直に言ってしまえば…君は困るくせに。
本当に厄介な親友だ。
◇ ◇ ◇




