パンケーキ。
週末。
寮の前が待ち合わせ場所で、そこへ早めに着いていた。楽しみで、準備が早めに終わってしまったから。待つ時間はソワソワしてしまうけど、嫌じゃない。結構楽しい時間だと思えた。
「おはよー、リーシュ君。早いね!」
すると、私より少し遅れてクラウさんが現れる。それでも待ち合わせ時間よりだいぶ早くて、彼も楽しみにしてくれてたのかな?と思うと嬉しい気持ちになっていた。
その姿は一見、可愛いワンピースなのだけど、短いズボンをはいているのがちらりと見える。可愛いのに動きやすさに優れた服装だ。
手元の隠れる大きな上着を着ている。全身可愛い。ピンクの髪は、飾るリボンと共に風に舞い、何かの物語の主人公みたいだ。
「わぁっ、クラウさん!私服、とても可愛いね。似合ってる。」
「リーシュ君も私服いーじゃん!」
互いに完璧だ!!と称えあった。
故郷から王都に来るまで、犯罪に巻き込まれないよう、兄の服を借りて来ていた。だから男性物の服を数着持っているのだけど、まさかこんな使い道するとは思いもしなかった。「王都に行ったら可愛いお洒落な服を買うといいよ。」と、お母さんが言ってくれたのだけど、自分に合う服がわからなくて…まだ買えていない。だから女の子の服は、一着も持っていなかった。
互いに、本来の性別に合わせた衣服を着れば解決する今回のミッション。無駄に緊張感を出す事になったのは、私がまだ女性だと言えないせいだ。
でも、ここまで仲良くなれたのも彼が私を男だと思っているからだとも思う。
寮から街までは歩いて少し。
互いに笑い合って、王都の街へ繰り出す。石畳の通りには花飾りが揺れ、市場の呼び込みや子供たちの笑い声が響く。
パンケーキ屋さんを目指して歩くけど、途中で「見て! あの花の髪飾り、可愛いすぎない!?」とアクセサリー店のウィンドウにクラウさんが張り付いた。私も可愛いものには興味があるから「本当だ、可愛い。あれとかクラウさん似合いそう。」なんて話、クラウさんは「あれはリーシュ君っぽい!」など笑い合う。
かと思えば。
「あ、焼き菓子のいい匂い!」と屋台に吸い寄せられたり。そのたびに会話が弾み、街の賑わいを心から満喫した。
そうして寄り道放題で到着したパンケーキ専門店。外観は絵本に登場しても可笑しくないほど可愛らしい見た目をしている。
よし…と気合を入れて、その可愛らしい扉を開ければ、店員が「カップルのお客様ですか?」と微笑んだ。するとクラウさんが私の腕にそっと絡ませてくる。
私、
今、
男の子と腕組んデル。
アッタカイ。
「うん!そうだよね、リーシュ君?」
クラウさんの温もりと、甘い香りに頭がふわっとする。可愛らしいキラキラ笑顔がこちらを見る。ドキドキと緊張と照れで、どうしても感情が忙しくなる。
「うん…カップル。」
なんとか言葉を絞り出すと、クラウさんが笑いだした。店員の眼差しは温かい。
「ふふっ、素敵なカップルですね♪」
なんだかお店の人も微笑み通り越してニヤニヤしてきている。恥ずかしい…。
そのまま、ハート型のテーブルへ案内してくれた。クラウさんは腕を離さず隣に座り、まだ笑ってる。
「さっきの面白すぎたなー。なにー?照れてるの?」
「照れるし、緊張感がすごい…。こんな可愛い雰囲気のお店、素敵だけど、場違い過ぎて。」
「可愛いー。」
クラウさんは、こちらなど気にせずメニューを開くと、カップル限定の『ラブハート・パンケーキ』を注文した。
お店の人も、待ってました!とばかりに微笑んで、私を見る。だからしっかり頷いて挑む姿勢を見せた。
運ばれて来たパンケーキは、ふわふわのハート型にピンクのクリームとイチゴが愛らしく盛られている。
「二人でカトラリーを共有して、愛を深めてくださいね♪」
差し出されたカトラリーは一組。
「共有!?か、間接キスじゃないですか!私たちにはまだ早いです!」
「すみません、彼氏が初々しくて。」
慌てる私のほっぺをツンツンしてニヤニヤするクラウさん。
男の子にほっぺツンツンされてる。
もう無理。
クラウさんといると、予想を超えたスピードで男の子との接触イベントが押し寄せてくる。心臓が保たない。
私はここから生きて帰れるのだろうか。
◇ ◇ ◇
本日も、21時(2〜10分頃)もう1話投稿予定です。




