花の前で考えること
この姿のままでは、多少話しにくい「恋」の話題。
どんな話の流れになるのか…。彼女を見れば真剣に悩むように花を見つめてる。私は私で、無難な言葉を探した。
「ドキドキするって、よく聞くけど…。難しい質問だね。」
「うん、難しいんだよ。ボクさ、可愛い子見て、わー!可愛い!ってなるけど、恋って言葉がしっくりこないってゆーかさ。『可愛い』が好きなのは絶対なんだけど」
クラウさんが首を傾げ、思い悩むように目を閉じる。すると、クラウさんがハッ!!と顔をあげて大発見のように言う。
「一緒にいたい!って思った人が現れたら恋なのかな!?『時間を忘れる』とか言うじゃん」
その言葉に、私は少し悩んだ。
「私は、クラウさんとならいくらでも一緒にいたいよ。楽しいし。大切な友達だと思ってる。」
「あー、ボクもリーシュ君といるの好きだな。」
クラウさんが「ひひっ」と笑い、自分の髪を触る。
「やっば、相思相愛じゃん。」
「そうだね。」
私は小さく微笑む。花の輝きが、私たちの言葉を祝福するみたいに揺れる。
彼女は、男装した私でも仲良くしてくれる初めてできた女友達。相手が私を男だと思ってたとしても大切な友達。
「でも…それって友愛ってやつ?恋については迷宮入りだなぁ。」
「恋してる人に聞くしかないね。」
「恋してる本人に分かるもんかなぁ?」
そんな話していたら、花びらがゆっくり閉じていく。紫と白の輝きが夕暮れのオレンジに溶け、星が夜空に消えるように閉じる。
遠くから笑い声が聞こえ、私達以外にも人が来そうな気配がした。この静かで楽しい時間が終わったのだと気がつく。
「閉じちゃったね…」
「そーだね!ふぅ、足痛い…少し痺れたし〜」
そうして立ち上がったクラウさんは、ぐぅっと伸びをした後に足を押さえた。その様子をほほ笑ましく眺めてから、私も立ち上がる。
「さっ、寮に帰ろっか!行こう、リーシュ君」
「うん」
一緒に帰るのが当たり前のような言葉。それが私を安心させてくれる。彼女の隣にいていいんだ、と改めて確認できたことで心がじんわり温まった。
翌日。
今日も、クラウさんの教室で教わりながら髪を結ってもらう。
彼女の指が髪を滑るたび、くすぐったいけど心地いい。この日も、教室では女子生徒たちがまたジンクスの話を始めていた。
「昨日、祖父様から聞いた話によると、祖父様の時代は『二人で花が閉じるのを見守る』と、恋の加護があるらしい…というジンクスだったそうですわ。摘むと魔術師が怒って恋が叶わないのだとか。婚約者の為の花だから…と。」
「花が閉じるまで一緒に眺められる関係って…既にだいぶ仲が良いのではありません??」
「無理すぎますよね。共に眺めましょう?なんて誘えば、それは告白ではありませんか」
それを聞いて、私はハッとする。昨日、クラウさんと花が閉じるのを見守った…。つい彼女を見れば、視線が合う。
「それって…」
「う、うん…。ジンクス通りのことした…かも。」
「もー、仕方ないなー、ボクら付き合っちゃうかー。」
「またそんな冗談言って…その言葉は、クラウさんが恋した時にとっておかないと。」
「ははっ、ごめんてー。でも冗談が通じるリーシュ君だから言えるんだよ。光栄に思って♪」
「それは光栄だけど、何も知らない人に聞こえてしまったらビックリさせるよ?もし、その相手を将来的に好きになったら勘違いされてしまうし」
「リーシュ君は真面目だなぁ〜。でも、好きな人に勘違いされるとかは嫌かも。気をつける」
クラウさんの声色で、だいたい冗談かどうか判断できる。それが分かる程好きだけど、彼女が女性だから…どう転んでも恋愛対象に見ることはないと思う。
だから、ジンクスには申し訳ないけど私達には効果が無さそう。それだけ、私の中にある価値観が根強い。
ジンクス破ってごめんね、優秀な魔術師。
今の私達は、こうしている話す時間さえあれば、それだけで楽しかった。
◇ ◇ ◇




