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【全年齢版】可愛い君♂に恋する私は「男装」していると言い出せない。〜男の娘と男装女子はすれ違いすぎる。〜  作者: かたたな


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ジンクスの花を見つけた


 

 今日も、クラウさんの教室を訪れる。


 彼女の指が私の髪を滑る中、他の生徒たちはジンクスの話で盛り上がっていた。その盛り上がりからか、会話の内容はこちらまで丸聞こえ。聞こえているだけの自分まで楽しい気分になっていた。 



「学園設立当初に在学していた、優秀な魔術師が婚約者のために作った花が裏庭に咲くんですって。その花を好きな人に渡すと恋が叶うとか!」



 私は椅子に座り、耳をそばだてる。魔術師の育てた花ってだけでも興味がある。それが婚約者へ送る花ならどんなに美しいだろう。後ろで私の髪を結うクラウさんも同じことを思ったようだ。



「へー、そんな花がホントにあるなら見てみたいな。リーシュ君は、もしも見つけたら誰かに渡す?」


「見てはみたいけど、渡す相手はいないな。」


「ボクもー。婚約者いないし…恋人とかより、今は友達とワイワイの方が楽しいし!…はい、完成! 今日もカッコいい!」


「いつもありがとう。やっぱりクラウさんがやると違うね。凄い。」



 私もだいぶ上達したみたいで、クラウさんが手直しする時間も減っている。それが嬉しくもあり、少しだけ物足りない。

 そうして、いつも通りだけど、ほんの少し違うやり取りをして教室に戻った。



 放課後。



 今日は障害物がある中で武術の訓練を行った。

 その後片付けで、いつもは通らない裏庭近くを歩く。そうともなると、聞いたばかりの噂…ジンクスの花が本当にあるのか気になってしまう。本当にあったらロマンチックだから。


 だから周囲を見渡して、その姿を探してみる。


 すると、茂みの奥で何かが光っているように見えた。



「あれって…」



 紫と白が溶け合う花びらが、星を散りばめたようにキラキラ輝く。中心は淡い金色で、陽光を浴びて虹色の光が揺らめく。花びらはビロードのようで、触れれば壊れそうに繊細。


 風に揺れるたび、微かな光が広がっていた。ジンクスの花だ!と見た瞬間に確信した。どう見ても、他の花とは別格の雰囲気を放っていたから。


 しかし、探そうと思えばこんなにもすぐ見つかるなんて拍子抜けな気がする。



「そんなに貴重ってわけでもないのかも…」



 それでも今朝、クラウさんが見てみたいと言っていたことを思い出した。クラウさんに見せたら、喜ぶかな?そう思ってつい、手を伸ばしかけ…その手を引っ込める。



「摘んだら繁殖の妨げになるかも。こんなに綺麗なら裏庭いっぱいに咲いて欲しいよね。」



 もともと、私自身に花を摘んで愛でるような趣味はない。故郷ではその辺に花があったから。そんな私が摘んでしまい、手入れの知識もなく枯れさせるのも罪悪感がある。


 思い直し、ここへクラウさんを呼ぶことに決めた。まだ教室にいるかな?と、クラウさんの姿を探して教室を覗いてみる。


 すると目当ての人物はすぐに見つかった。



「クラウさん、ちょっといい?」

「ん?なにー?告白の呼び出し?」



 教室で、他の生徒たちと話していたクラウさん。でも、言われた冗談になんて返せばいいか、少し困って苦笑いしてしまった。そんな顔したものだからか、他の生徒から「困ってるぞ、可哀想に。」なんて言われていた。



「少し、面白いこと…かな?」

「面白い??なになに?」



 他の生徒に聞かれたら摘まれてしまうかもしれない。言葉を濁してから、近寄ってきたクラウさんの耳の側でコソッと話す。



「 裏庭に、綺麗な花見つけたんだ。 ジンクスの花かも、一緒に見に行かない?」

「え!? 行く!」



 クラウさんは目をキラキラさせ、さっきまで話していた友人たちに手を振ると、バッグを引っ掴んで飛び出してきた。




 そして、花を一目見た瞬間。




「うわぁ、なにこれ! 綺麗! 星みたいじゃん!初めてこんな綺麗な花見たよ。」



 クラウさんがしゃがみ込み、子供のようにはしゃぐ。私が見つけた時よりいい反応だ。花も誇らしかろうと勝手に思った。それに、ここまで反応してくれるなら、呼んで良かった。



「摘んでくの? ジンクスの花。」


「ううん、このままがいいかな。もっと、増えて欲しいから。この庭いっぱいに咲いたら綺麗だと思う」


「この花が生まれたのって、学園ができた時の話だよね?それなのに今もこの一輪しか見当たらないなら…増えても摘まれてしまったってことかぁ…。摘まないほうがいいね、うん」



 私はただ、その存在を目の当たりにできただけでも嬉しかった。これが魔術師が愛する婚約者の為に作り、贈った花かと思うと宝物を探し当てた気分。それだけで気持ちがいっぱいだ。



「じゃあ、もう少し見ていこうよ! 夕暮れには花が閉じちゃうと思うし。目に焼き付けなきゃもったいない。」



 クラウさんが花の前に座り、膝にバッグを乗せる。私はその隣に座り、頷いた。


 優しい風が頬を撫で、クラウさんの髪がふわっと揺れる。彼女の横顔は静かで、穏やかな笑みを浮かべる。時間が止まったような安らぎに包まれた。



「魔術師の恋心が詰まってるんだろうな…。恋した時ってどんな気持ちなんだろう。」



 クラウさんが、ふいに呟く。花を見つめ、ちょっと遠い目をする。私は、突然の恋の話に少しドキリとした。


 肝試しで、どんな人が好みか…という話はしたものの、こうしてゆっくり話す機会はなかったから。



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