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【全年齢版】可愛い君♂に恋する私は「男装」していると言い出せない。〜男の娘と男装女子はすれ違いすぎる。〜  作者: かたたな


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バレたいけどバレたくない。



 音が次第に遠ざかり静かになると、クラウさんの肩を優しく叩いて合図をする。彼女の様子を気にしながら離れて廊下の様子をそろ~っと伺った。


「もう大丈夫。やっぱり脅かし役だったみたい。」

「はぁ~、ほんと、怖かったし!! 」


 安堵するクラウさんは、ぺたんと床にお尻を着いた。彼女の怖がりようを見るに、早く皆のところへ戻った方がいいと思うのだけど、一向に立ち上がろうとしない。


「クラウさん?」

「やっばい、腰抜かしたっぽい…。力が入らない。…ごめん」


 腰抜かすほど怖かったのか…可哀想に。

 脅かし役の姿は一目見ただけでは人間と分からなかった。魔法か何かなのだろうか、脅かし役の本気を感じる演出。これは早くここからクラウさんを出してあげなければ。


「おんぶするから、少し触るよ。」

「え、いいよ!ボク重いし!?」

「重ければ下ろすから。それに、ここから早く出たいでしょ?」


 とても申し訳なさそうに言う彼女だけど安心して欲しい。私は「筋力補助」の魔法を覚えたのだ!!覚えてホヤホヤの魔法。正直に言えばもっと使ってみたい。


「ほ、本当に?本当に重いからね?」

「いいよ。」


 魔法をこっそり使い、座り込む彼女を私の背中に乗せようと引っ張りあげる。


 背中に当たる彼女の体は、女性らしい見た目とは裏腹に柔らかさの少ない感触がした。女性なら、本来柔らかい部分が背中に当たるだろうけれど平らだ。もしかすると、それがコンプレックスで大きめの上着で体を隠しているのか?と勝手に失礼な事を考えていた。


「わっ、軽っ」

「え!!うっそ、力持ちじゃん。」


 余計な事を考えたからか、すいっと持ち上げられた事に驚いた。羽のように軽い。これが「筋力補助」の魔法…!!感動しかない。


 しかし、普段から使いすぎると筋力の低下に繋がるかもしれない。先生の言う通り、基礎訓練は魔法を使わずにしっかりやろうと改めて思った。


「リーシュ君、本当に大丈夫?」

「うん、大丈夫そう。集合地点の手前までこれで行こう。」

「ありがとう~、神ぃ~。」


 クラウさんが怖くないように、揺らさないように歩みを進める。時折走ると「おおー」と楽しそうな声が聞こえてくる。


「リーシュ君さ、誰かを連れ込むの慣れてる感じあったね?」

「…言い方。」


 耳元でクラウさんの声が聞こえ、なんだか妙にゾワッとする。


「故郷では魔物が多いから、魔物を見かけると周囲にいる年下の子をああして隠すように教わるんだ。下の子たちも、これで身を隠す事を学んで、自分より下の子を守っていく。」

「へぇ、なんか年下扱いされるの…くすぐったいなぁ。頭撫でられたのだっていつぶりだろう?」

「嫌だったらごめんね、たまに咄嗟の事で暴れる子もいるから。ああして落ち着かせる事が普通になってて。」

「そっかそっか。」


 クラウさんの腕に力が入り、私とクラウさんの距離が更に密になる。


「なんか、急にお兄ちゃんがいたらこうだったのかな?とか考えたよ。さっきまで、もしかしてリーシュ君は女の子かなぁ?とか思ってたのに。」


 冷や汗が過去一番でた。


 いや、もしやチャンスなのでは?ここで、私は女だと話せば「あ、やっぱり?」なんてすんなり受け入れられるんじゃないか?女の子として生活を変えて、男の子と楽しい学園生活への道が開けるのでは?


「あのさ、クラウさん。」

「あ、大丈夫、大丈夫!分かってるよ?こんな力持ちなんだもん。ちゃんと男の子だって思ってるからさ。失礼な事言ってごめんね?」

「ううん、それは大丈夫なんだけど…」

「けど?」


 …


「…寒くない?」

「うん大丈夫!リーシュ君におんぶされてるからあったかいよー♪」


 更に力が込められぎゅーっとくっついてくるクラウさん。



 …言えなかった。



 男装やめるの難しい…。作戦通り、二年生になってクラス替えから女の子の服装でスタートするのが無難なのかもしれない。


 クラウさんには、その時…女の子の姿で話せば分かってくれる…きっと。


 考えていると、遠くで灯りが見える。


「この辺で降りる?」

「うん、そうする。あんがとー。」


 ストンと安定して降りるクラウさんを見て安心する。


「あーあ、ボクが普通の女の子なら惚れてたわ。でも…ほら、ボクこんなだからさぁ。」



 そう言って自分の膨らみのない胸を張ってトントンと叩く。そんなに貧乳を気にしていたのか。女の子の価値はおっぱいで決まらないよ!と言いたいけれど繊細な問題だから声に出しては言えない。



「そんな事気にして友達にならないよ。」

「リーシュ君、神すぎ。」

「大袈裟だよ。肝試し、参加できて得した気分だった。クラウさんのおかげで楽しかったよ。」



 クラウさんは違うクラスだから、私はここで帰ることにした。



「じゃあ、また明日。」



 そうして手を振って帰ろうとした時、クラウさんが私の袖を引っ張って引き留められた。そして内緒話でもするかのように手を添えて話す。


「ねーねー、リーシュ君。恋人欲しいならさ、今度女の子の友達紹介しよっか?」




 友人の紹介!




 それだけ聞けば本当にありがたい出会いの場。…しかし、ありがたいけど女の子は恋愛的には対象外…。少し困りながら考えを巡らせ、慎重に返事をした。


「女の子より…男の子と遊びたいかな?今日みたいに、友達ともっと色んなことして遊びたいなって思ったんだ。」


 今の私には、まずはお友達から作戦しか残っていない。だから最もらしい言葉を添えて言ってみた。するとクラウさんは目をキラキラさせて笑う。


「じゃーさ!今度ボクとどこか遊びに行こう。今日のお礼もしたいし。」

「いいの?嬉しいな。楽しみにしてる。」



 友達いないと思われて気を使わせてしまったかな?と思ったけれど、その申し出は素直に嬉しい。クラウさんとの時間は、私にとって新鮮でキラキラと輝くような時間だから。


 そうして夜でも街灯で明るく照らされる道を走っていったクラウさん。少し近づきすぎてヒヤヒヤしたけれど、自分の思い描いていた青春を経験できたことに「今日は、良い日だな。」と言葉が溢れていた。

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