第1章 「黙殺」 第34話 実行犯、確保
直樹の位置情報は、倉庫街から離れ、環七を北へ向かっていた。
秋刀魚トリオは宮本班の車に乗り込み、二台体制で追跡を続けていた。
「位置、更新されました。……止まりました」
魚沼がタブレットを見つめる。
「どこだ?」
秋月が身を乗り出す。
「……環七沿いの古いモーテルです。駐車場が裏にあります」
「田川の“隠れ家”かもしれないな」
刀根が拳を握る。
「急ぐぞ」
秋月が言い、車は加速した。
モーテルの裏手に回ると、黒いワンボックスが停まっていた。
ナンバーは、直樹が乗せられた可能性のある車と一致する。
「秋月、慎重に行くわよ」
宮本班長が静かに言う。
その声は冷静だが、緊張が滲んでいた。
「はい。……刀根、魚沼、行くぞ」
三上係長の車も到着した。
「お前ら、突っ走るなよ。……いや、突っ走るんだろうけどな」
三上が苦い顔をする。
「係長、後方お願いします」
秋月が短く言う。
「任せろ。宮本班と連携する」
秋刀魚トリオは、モーテル裏の階段を静かに上がった。
タブレットの位置は、二階の一番奥の部屋を示している。
「秋月さん、反応あります。……二人」
魚沼が囁く。
「直樹さんと、もう一人か」
刀根が息を呑む。
秋月はドアの前に立ち、耳を当てた。
中から、低い声が聞こえる。
「……動くなって言ってんだろ」
直樹の声ではない。
実行犯の声だ。
「行くぞ」
秋月が小さく合図した。
刀根がドアノブを握り、
魚沼が後方でカバーに入る。
「3、2、1──」
ドンッ!!
刀根が体当たりでドアを破った。
「警察だ!! 動くな!!」
部屋の中で、直樹が椅子に縛られていた。
その横に、フードをかぶった男が驚愕の表情で振り返る。
「クソッ!!」
男が逃げようとした瞬間、秋月が飛び込んだ。
「逃がすか!!」
秋月が男の腕を掴み、壁に押し付ける。
男は抵抗しようとするが、刀根が横から体重をかけて押さえ込んだ。
「動くなって言ってんだろ!!」
刀根が怒鳴る。
「確保!」
秋月が叫ぶ。
魚沼が素早く直樹の縄を解いた。
「直樹さん、大丈夫ですか!?」
「……ああ。来てくれたのか……」
直樹の声は震えていたが、意識ははっきりしていた。
そこへ、宮本班と三上係長が部屋に入ってきた。
「秋月、よくやったわ」
宮本班長が短く言う。
「実行犯の一人を確保しました」
秋月が報告する。
「こいつ、田川の右腕です。……間違いありません」
杉下が男の顔を確認した。
三上係長が手錠を受け取り、男にかける。
「お前の負けだ。……田川の居場所、全部吐いてもらうぞ」
男は歯を食いしばり、何も言わなかった。
直樹は秋刀魚トリオに支えられながら立ち上がった。
「秋月……ありがとう。
お前らが来なかったら……俺、どうなってたか……」
「無事でよかったです」
魚沼が静かに言う。
「直樹さん、もう大丈夫です。……俺らが守ります」
刀根が胸を叩いた。
実行犯の逮捕。
直樹の救出。
だが──
田川圭介本人は、まだ捕まっていない。
秋月は、手錠をかけられた男を見つめながら呟いた。
「田川……次はお前だ」
秋刀魚トリオの反撃は、さらに加速していく。




