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目黒の秋刀魚  作者: 双鶴


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第1章 「黙殺」 第29話 河川敷の声

 朝の光が差し込む目黒署。

 強行犯係の部屋に飛び込んできた金崎の声が、空気を一変させた。


「秋刀魚! 佐久間が……見つかった!」


 全員が一瞬で立ち上がる。


「場所は?」

 秋月が駆け寄る。


「荒川の河川敷です! 意識は……あります!」


 その言葉に、秋月の胸が強く跳ねた。


 


 河川敷にはパトカーと救急車が並び、鑑識が慌ただしく動いていた。

 草むらの奥、担架に横たわる佐久間は、顔に打撲の跡があり、唇が乾いていた。


「佐久間さん……!」

 秋月が駆け寄ると、佐久間のまぶたがわずかに動いた。


「……あ……き……つき……さん……?」


「大丈夫です。もう安全ですから」


 佐久間は喉を震わせ、かすれた声で言った。


「……に、げ……られ……なかった……

 あいつ……“田川”が……」


 秋月の背筋が凍る。


「田川圭介……黒幕は、田川なんですね?」


 佐久間は弱々しく頷いた。


「……声……聞いた……

 あいつ……全部……仕組んで……

 宮田さんも……黒瀬も……俺も……

 “使われた”だけ……」


 その瞬間、佐久間の手が秋月の袖を掴んだ。


「……秋月さん……

 “次は直樹だ”……って……

 田川が……言ってた……」


 秋月の心臓が跳ねた。


「直樹さんが狙われている……?」


「……に、げ……て……

 直樹……守って……」


 佐久間の意識が遠のき、救急隊員が担架を運び出した。


 


 署に戻ると、捜査本部は騒然としていた。

 宮本班長がホワイトボードに大きく書き込む。


 田川圭介

 ・宮田工業外部コンサル

 ・裏金ルートに関与

 ・宮田と密会

 ・黒瀬を脅迫

 ・佐久間を拉致

 ・直樹を狙う**


「これで確定ね。黒幕は田川圭介」

 宮本班長の声は鋭かった。


「田川はどこに?」

 片桐係長が問う。


「まだ居場所は掴めていません。

 ただ──佐久間さんの衣服から“特殊な土”が検出されました」

 魚沼が資料を広げる。


「特殊な土?」

 刀根が首をかしげる。


「都内でも限られた建設現場にしかない土です。

 その中に……一ヶ所だけ、田川圭介が関わっている現場があります」


 秋月の目が鋭くなる。


「田川の拠点……そこだ」


 


 その時、秋月のスマホが震えた。

 画面には──


 宮田直樹


「直樹さん、どこにいますか?」

 秋月はすぐに出た。


「秋月さん……誰かが……俺を……つけてる……」


「直樹さん、落ち着いてください。今どこですか?」


「駅の……近く……

 でも……人混みに紛れて……

 “黒いコートの男”が……ずっと……」


 秋月の血の気が引いた。


「直樹さん、すぐにそこを離れてください。

 田川があなたを狙っています!」


「……やっぱり……

 兄貴を追い詰めたのは……あいつなんだな……」


 直樹の声は震えていた。


「直樹さん、今すぐ迎えに行きます。絶対に動かないで──」


 その瞬間、電話越しに“風を切る音”が聞こえた。


「……っ……!」


「直樹さん!? 直樹さん!!」


 通話が途切れた。


 


 秋月は走り出した。


「刀根さん! 魚沼さん! 直樹さんが危ない!」


「了解!」

「すぐ行きます!」


 強行犯係の部屋が一気に動き出す。


 佐久間が命がけで残した言葉。

 田川圭介の影。

 そして──直樹の危機。


 物語はついに、黒幕との直接対決へと加速し始めていた。


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