表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
目黒の秋刀魚  作者: 双鶴


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/40

第1章 「黙殺」 第23話 佐久間の足取り

 佐久間が“黒い車”に乗せられたという一報から一夜。

 目黒署の空気は、いつもより重かった。

 だが強行犯係の部屋だけは、いつものように騒がしい。


「刀根さん、そのラーメン……朝から重くないですか」

「朝ラーメンは文化だろ」

「文化でも匂いが強いです」

「お前、今日ツッコミ辛辣すぎないか?」

「昨日も言ってましたよ」

「……そうだったな」


 そんなやり取りをしていると、宮本班の金崎が駆け込んできた。


「秋刀魚! 佐久間の足取り、少し掴めたぞ!」


 


 会議室に移動すると、スクリーンには都内の地図が映し出されていた。

 宮本班長がレーザーポインターで示す。


「佐久間が乗った“黒い車”、ここで一度停車してる」


 地図の一点が赤く光る。

 目黒区内の住宅街の外れ。

 人通りが少なく、カメラも少ない場所だ。


「なんでこんな場所で止まるんだ?」刀根が首をかしげる。


「それを調べるために、現場に行くわよ」

 宮本班長が言う。


「了解です!」


 


 現場に到着すると、すでに鑑識の高倉が作業していた。


「高倉さん、何か出ました?」秋月が尋ねる。


「これだ」


 高倉が透明な袋を掲げる。

 中には、割れたスマホの一部。


「佐久間のスマホの破片だ。

 ここで落としたか、落とされたか……」


「黒幕が“位置情報を切るために壊した”可能性が高いですね」

 魚沼が淡々と言う。


「淡々と怖いこと言うなよ……」刀根が肩をすくめる。


 


 秋月は周囲を見渡した。

 住宅街の外れ、街灯も少ない。

 車を止めても気づかれにくい場所。


「ここでスマホを壊して……そのまま都心方向へ向かったんですね」


「そうだ。次に映ったのはここだ」

 高倉が別の地点を指す。


 そこは都心へ向かう幹線道路。

 黒い車はスピードを上げて走り去っていた。


「佐久間さん……まだ生きてる可能性は?」

 秋月が問う。


「ある。

 黒幕が“証言を引き出すために確保している”可能性もある」

 宮本班長が言う。


「でも……時間はあまりない」

 片桐係長が低く言った。


 


 署に戻ると、黒瀬の取り調べが再開されていた。

 秋刀魚も立ち会う。


「佐久間が連れ去られた。

 お前、何か知ってるだろ」

 刀根が詰め寄る。


「し、知らない……俺は関係ない……!」

 黒瀬は明らかに動揺していた。


「黒瀬さん、あなたは“佐久間は関係ない”と言っていました。

 でも、佐久間さんは黒幕に狙われた。

 これはどう説明するんですか?」

 秋月が静かに問う。


「……俺は……見たんだよ……」


「見た?」

 秋月が身を乗り出す。


「佐久間が……“あいつ”と話してるのを……

 でも……名前は言えない……言ったら……俺も……!」


 黒瀬の声は震えていた。


「黒瀬さん、“あいつ”って誰ですか?」

 秋月が優しく促す。


「言えない……!

 あいつは……俺たち全員を……!」


 黒瀬はそれ以上言えなかった。


 


 取り調べ室を出た秋刀魚と宮本班は、すぐに捜査会議に入った。


「黒瀬は“黒幕の存在”を見ている。

 でも名前は言えない。

 直樹も同じ。

 佐久間も同じ」

 宮本班長がホワイトボードに書き込む。


「全員が怯えてる……」

 秋月が呟く。


「黒幕は“宮田工業の外側”の人間かもしれないわ」

 宮本班長が言う。


「外側……?」刀根が眉をひそめる。


「裏金の流れを追えば分かる。

 宮田工業の内部だけでは動かせない金額よ」


「じゃあ……政治か、企業か……」

 秋月が考え込む。


「どちらにせよ、佐久間は“黒幕の正体を知っている”」

 魚沼が静かに言う。


「だから連れ去られた……」

 片桐係長が腕を組む。


 


 秋月は深く息を吸った。


「佐久間さんを見つければ……黒幕に辿り着ける」


「秋刀魚、動くわよ」

 宮本班長が言う。


「了解です!」

「了解っす!」

「了解しました!」


 佐久間の足取りは、黒幕の影へと続いていた。

 そしてその影は、確実に“近づいて”いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ