表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
目黒の秋刀魚  作者: 双鶴


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/40

第1章 「黙殺」 第21話 偽りの映像、浮かび上がる影

 午後の目黒署は、妙に静かだった。

 直樹の沈黙が、捜査全体に薄い膜のような緊張を張りつめさせている。

 だが強行犯係の部屋だけは、やっぱり例外だった。


「魚沼さん、また動画見てるんですか?」

「“また”じゃありません。仕事です」

「いや、仕事なのは分かってるけど……ずっと無表情で動画見てると怖いんだよ」

「刀根さんが横でラーメン食べてる方が怖いです」

「おい、朝ラーメンはもう終わっただろ!」


 そんなやり取りをしていると、宮本班の金崎が勢いよくドアを開けた。


「秋刀魚! 動画チャンネルの件で新しい情報だ!」


「動画チャンネル……?」

 秋月が椅子から立ち上がる。


「宮田さんを悪者にした、あの“暴露チャンネル”です」魚沼が補足する。


「そう、それ!」金崎が指を鳴らす。「あれな、証言動画の“編集パターン”が全部同じなんだよ!」


「同じ?」刀根が首をかしげる。


「つまり──“演出”だ」

 宮本班長が会議室から姿を見せた。


 


 会議室に移動すると、スクリーンには複数の動画が並んでいた。

 魚沼がリモコンを操作しながら説明する。


「この証言動画、全部“同じ編集者”の癖があります。

 カットのタイミング、テロップのフォント、音量の揺れ……」


「そんな細かいとこまで分かるのかよ……」刀根が呆れる。


「分かります。

 そして──この編集パターン、黒瀬さんの過去の仕事と一致します」


「黒瀬……やっぱり関わってたのか」秋月が呟く。


「でも黒瀬さんは“自分は駒だ”と言ってましたよね?」

 刀根が言う。


「そう。黒瀬は編集をしただけ。

 “脚本”を書いたのは別の人物よ」

 宮本班長が言う。


「脚本……?」秋月が眉をひそめる。


「証言者のセリフが不自然に揃ってるのよ。

 “宮田は裏金を知っていた”

 “宮田は社員を裏切った”

 “宮田は危険な人物だ”

 どれも同じ言い回し。まるで台本があるみたいに」


「つまり……宮田さんを悪者にするための“偽証動画”ってことか」

 秋月が静かに言う。


「そういうことだ」

 片桐係長が腕を組んだまま言った。


「黒瀬は編集をしただけ。

 証言者は“台本”を読んだだけ。

 じゃあ台本を書いたのは誰だ?」


 


 その瞬間、杉下が資料を持って入ってきた。


「班長! 証言者の一人から連絡がありました!」


「連絡?」宮本班長が振り返る。


「“あの動画は……頼まれて読んだだけだ”と。

 “本当は宮田さんのこと、悪く思ってなかった”と」


「頼まれた……?」秋月が身を乗り出す。


「誰に?」刀根が問う。


「それが……“名前は言えない”と」


「またかよ!!」刀根が叫ぶ。


「黒瀬も直樹も証言者も……全員“名前は言えない”って言うんですよね」

 魚沼が淡々とまとめる。


「つまり──全員が同じ人物を恐れてる」

 秋月が静かに言う。


 


 宮本班長がホワイトボードに大きく書いた。


“動画チャンネルの台本を書いた人物=黒幕”


「宮田を悪者にするための偽証動画。

 裏金を隠すための世論操作。

 黒瀬を使い、証言者を使い、直樹を黙らせた人物。

 そいつが事件の中心よ」


「黒幕……」刀根が呟く。


「黒瀬の暗号ファイルの黒塗り部分……

 あれが読めれば、黒幕の名前が分かるはずです」魚沼が言う。


「魚沼さん、復号は?」秋月が尋ねる。


「あと……二歩です」


「近づいたな!」刀根が拳を握る。


「二歩って言っても、昨日は三歩でしたよね」

 秋月が苦笑する。


「刀根さんが横でラーメン食べなければ、もっと進んでます」

「関係ねぇだろ!!」


 


 宮本班長が締める。


「秋刀魚、次は“動画チャンネルの運営者”を洗うわよ。

 黒幕に繋がる糸が必ずある」


「了解です!」

「了解っす!」

「了解しました」


 偽りの映像が暴かれた今、

 事件はついに“黒幕の正体”へと向かい始めた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ