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目黒の秋刀魚  作者: 双鶴


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第1章 「黙殺」 第19話 直樹の沈黙

 取調室に入った直樹は、椅子に座ったまま俯いていた。

 昨日までの怒りは消え、代わりに“何かを恐れている”ような影があった。


「直樹さん、落ち着いて話してください」

 秋月が柔らかく声をかける。


「……俺……兄貴のこと……」


 直樹は言いかけて、口を閉じた。

 喉が詰まったように、言葉が出てこない。


「黒瀬さんと会っていたんですよね?」

 宮本班長が静かに問う。


「……会ってた。でも……それ以上は……言えない」


「言えない?」刀根が身を乗り出す。


「言ったら……俺……」


 直樹は震えた。

 その震えは、罪悪感ではなく“恐怖”の色を帯びていた。


「直樹さん、誰かに脅されているんですか?」

 秋月が優しく尋ねる。


「……違う……違うけど……

 俺が言ったら……兄貴が……もっと……」


 言葉が途切れた。


 片桐係長が腕を組んだまま、低く言う。


「直樹。

 お前、何か知ってるな。

 だが“言えない理由”がある。

 違うか?」


 直樹はゆっくり頷いた。


「……黒瀬じゃないんだ。

 兄貴を追い詰めたのは……黒瀬じゃない。

 でも……名前は……言えない……!」


「誰だ?」刀根が声を上げる。


「言えない!!」


 直樹は叫んだ。

 その声は、恐怖と葛藤が混ざったものだった。


 


 沈黙が落ちた取調室で、秋月が静かに言った。


「直樹さん。

 あなたは“犯人”ではない。

 でも“何かを知っている”。

 そしてその“何か”は……黒瀬よりも危険な人物のことですね?」


 直樹は震えながら、ほんの少しだけ頷いた。


「……俺は……巻き込まれただけなんだ……

 兄貴も……黒瀬も……

 みんな……あいつに……」


「あいつ?」宮本班長が鋭く問う。


 直樹は唇を噛み、目を閉じた。


「……言えない……

 言ったら……俺……終わる……」


 


 取調室を出た秋刀魚と宮本班は、すぐに捜査会議に入った。


「直樹は“黒瀬の背後にいる人物”を知っている」

 宮本班長がホワイトボードに書く。


「でも言えない……つまり“相当ヤバい奴”ってことか」刀根が言う。


「裏金を動かせるほどの権力を持つ人物……」

 秋月が呟く。


「黒瀬も大塚も藤森も怯えてた。

 直樹も怯えてる。

 全員が恐れる“黒幕”がいる」

 魚沼が淡々とまとめる。


「黒幕……」

 片桐係長が腕を組んだ。


「そいつを炙り出すぞ。

 秋刀魚、動け」


「了解です!」

「了解っす!」

「了解しました」


 直樹はまだ何も語っていない。

 だが、その沈黙こそが──

 “黒幕の存在”を最も強く物語っていた。


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