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転生魔女は悠々自適に世界を旅する  作者: 黛ちまた
水上都市は予想外がいっぱい

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38/39

将を失った兵は混乱…しない!

残酷な描写があります!

ご注意ください!

 さて、やって参りましたオークの巣!

 森でも退治したことがあるし、フュリンガーでの指名依頼でも殲滅したし、不安はない。ただ規模は気になるところ。

 オークにはメイジもいるし、規模によってはキングがいる。規模が大きいということは繁殖してるということで、キングが誕生する確率も上がる。

 今までキングに会ったことはない。お母さんから存在を聞いていたくらい。人間のような血筋だとか議会だとかそういうのでキングが決まるわけはない。レアなのがキングになるんだって。生まれた瞬間から違うとかなんとか。メイジも一応レアなんだけど、確率がキングとは段違いらしい。

 で、そのキングはオーガ並みに大きくて、破壊力もあると。知能も備えているから厄介なんだってお母さんが言ってた。

 ほら、虫の知らせじゃないけど、予感ってあるじゃないですか?

 目の前に広がるオークの巣を前にため息を吐いてしまった。これはキングがいそうだし、被害者も一人や二人じゃなさそうだなぁ……。

 キングの有無より被害者のことを考えて憂鬱になってしまうのは、仕方ないと思う。

 ぽんぽん、とエレンに背中を叩かれた。分かっていてもメンタルがやられる私を気遣ってくれたのだろう。


「ありがと。大丈夫、後で凹むと思うけど」

「私も」


 あればかりは何度経験しても慣れることはないし、慣れてはいけないと思ってる。


 調査魔法をかけた結果、被害者と思われる存在を複数確認した。

 この悪夢を早く終わらせなくては。


 深呼吸して、おなかに力を入れる。


「よし、行こう」

「行こう」


 天狼達と自分達に保護魔法をかけてから、天狼に乗る。

 いつもはエレンと背中合わせにして魔法攻撃をぶっ放すんだけど、オークはゴブリンより意地が悪くて、被害者を連れて逃げようとするんだよね。だから機動力のある天狼に乗って移動して、攻撃しながら被害者を探す必要がある。


「じゃあ、私こっち行くね」

「うん。気をつけてね」

「うん、また後で」


 お互いに頷いてから、天狼に合図を送る。

 本来の大きさに戻った天狼は、ゴブリンなら軽く踏み潰せる。オークは踏んで動きを封じてから首を落とす。オーガは踏めるけど、馬鹿力だからちょっと面倒みたい。

 そんな感じなので天狼に踏まれて動けなくなったオークを私が攻撃する。あとは離れた場所にいる奴に風刃や豪炎を放つ。複数体が向かってきた場合は水流魔法で流して動きを封じてから攻撃する。


 シュナとキトラだとシュナのほうが喧嘩っ早いので、こういう時はキトラに乗って、シュナには好きに暴れてもらう。エレンはビビりなミトラに乗って行動を命じるらしい。四体の天狼の中でミトラが一番身体が大きくて、本気で体当たりすると建物なんか簡単に倒壊させられるんだけどね。シエはエレンの様子を伺いながら攻撃するタイプ。

 キトラは私が乗っていない時は状況を判断しながら攻撃したり他の天狼のサポートに入ったりする、とても頭の良い子なのだ。


 オークは知能があるので、人間の集落を奪うこともあれば、自分達で建物を作ることもある。

 森の奧なんかに巣を作られる場合は、周辺の木を使ったりして家っぽいのを作って、人を攫ってきたり、家畜を盗んで食料にしたりする。

 人間の山賊というか、盗賊というか、それに近い。


 キトラの耳がピンと動く。何か聞こえたみたい。耳の向きから方向を探って、調査魔法をかける。

 あっちに被害者がいそう。

 キトラの首を撫でる。


「キトラ、行こう」


 キトラがシュナに向かって吠えると、シュナが先に突撃して行った。それをキトラが追う。

 天狼は魔法も使えるチートなのです。使える属性は風なので、私が使う風刃と似た魔法を放つ。

 シュナが放った風魔法で建物の正面が崩れる。中が見えたと思った瞬間、丸太のようなものが飛んできた。キトラが瞬時に避けてくれたので無傷。防御魔法もかけてるけど、食らわないにこしたことはない。

 キトラが吠えると、シュナがやってきて、身体をぴたりとつけてきた。乗り換えろということみたい。

 あー、これはもしかしてもしかしちゃうのかも?


 トッと軽快な足音をさせてその場からシュナと私が離れる。それと同時に崩れた建物の中から人間の女性を片手で掴んだ、オーガサイズのオークが現れた。オークキングだ。

 次の瞬間、キトラから風の刃がいくつも飛び、女性を掴むオークキングの腕を切り落とした。

 シュナはキトラから命じられていたのか、女性に向かって突っ込む。行動は正しい。正しいけど、私が受け止めるの!?

 私の戸惑いを無視して突撃するシュナ。私の上に落ちてきた女性を慌てて受け止める。

 振り返るとキトラがオークキングとバチバチにやり合っていた。キトラは前世でも本当に頭が良くて、こちらの次の行動を予測してくるような子だった。自分の望む行動をさせるにはどうすればいいのか理解していた。

 残った手に棍棒のようなものを持っているオークキングを翻弄している。建物の天井に棍棒が刺さって動きが止まった瞬間、足に攻撃をしかける。バランスを崩したオークキングが膝をついたところ、顔面に何度も風刃を斬りつけ、目潰ししていた。

 え? 解説してないでおまえも戦えって?

 私はですね、救助した女性を誰もいない建物の中に避難させたりしているところです。シュナは他の被害者を探しに行ってます。建物には当然防御魔法をかけてますよ。こういった時用に持ち歩いてる魔導石を使って。

 目が見えなくなって、ところ構わず残った腕で攻撃をするオークキング。腕を振るたびにブンッと空気を切る音がする。アレに当たったらひとたまりもないな……。防御魔法様々です、本当に。

 オークキングの背後に回ったキトラが首に噛みつき、身体を回転させる。その勢いでオークキングはその場に放り投げられるようにして倒れた。止めとばかりに正面から首に噛みつくと、断末魔を上げてオークキングは絶命した。

 うちのキトラくん、つよー!!


 オークキングを倒した後、調査魔法と索敵魔法をかけ、被害者を探して救助し、オークを倒し、を繰り返した。

 索敵魔法をかけると、エレンがいるであろうあたりが分かる。オークの数が減っていくから。

 キングを倒したから統制が取れなくなるかなー? なんて思ったけど、そんなことなく。元々キングがレアだからなのか、いつものオークらしい戦闘スタイルです。


 キトラが吠える。視線の先にエレン達が現れた。何かあるとは思わなかったけど、無事な姿を見るとやっぱり安心する。


「エレン!」

「ただいまー」

「おかえり」


 おかえりって言うのは変なんだろうけど、いいの。

 前世で先に旅立ったのは私だから、私がただいまなんだろうけど、いいの。ただいまも言うし、おかえりも言う。


「被害を受けた人達は保護してる」

「こっちもそう。一箇所にまとめて、治療したほうがいいよね」

「そうだね」


 シュナ、シエを連れて、エレンは自分が保護した女性をこちらに連れて来るらしい。

 オークの巣を襲撃するということは、被害者がいる可能性大。前に備えもなく突撃して失敗したから、今回はシルルさんに頼んで飲食物と着る服なんかをできるだけ持ってきた。

 簡易着替え室になるような部屋があることも確認済み。


「これから浄化魔法をかけます。希望する方には衣服を用意しているので、着替えてください」


 一人ずつ浄化する。

 浄化魔法はその名のとおり身体の汚れをキレイさっぱり落としてくれる。入浴後のようなさっぱり感もある。私とエレンはこの浄化魔法と同時に、もし魔物の子を孕っていた場合は、被害者に知られないうちに始末して、身体の汚れと一緒に消し去るようにしている。

 ゴブリンやオークの子供は成長が早く、人間のように、いわゆる十月十日を必要としない。六ヶ月くらいで生まれる。その分母体となる人間の女性の被害は凄まじく、何体かを産まされた後、死んでしまう。奴らは死んだ女性を食べてしまう鬼畜っぷり。許せないでしょ!?

 ゴブリンやオークから運良く救い出された数ヶ月後、奴等を産み落とすことがある。やっと解放されたのに、魔物によって孕まされて膨らんでいくお腹に耐えきれずに死を望んだり、発狂してしまう女性は少なくない。

 せっかく助けだされたのに、数ヶ月隔離され、産みたくもないものを出産する。当然生まれたゴブリンやオークはすぐさま処分される。

 隔離から解放されても、今度は人の目というものがある。そういったものに耐え切れなくて死を選ぶ人もいる。

 ね? 本当に許せないでしょ!?

 そんなわけだから、私達は被害者に浄化魔法をかけつつ、始末も済ませてからギルドに送り届ける。記憶を消したいという人にはギルドに送り届けた後、魔法をかける。

 そうするとギルドも慣れたもので、本人の意向に沿った対応をしてくれる。

 元いた街に戻りたいだとか、別の街に行きたいだとか、ギルドの依頼があってしばらく街にいなかったのだとか、そういった臨機応変な対応をしてくれる。

 ……それでも、自分を消し去ることを望む人もいる。それはその人の尊厳の問題だから私達もギルドの人も何も言わない。

 被害の記憶を消すことでは解決できない問題も出てきているとフュリンガーのギルドで小耳に挟んだ。


 エレンが被害者をどんどん連れて来る。

 こんなに……。確かにかなりの規模ではあった。キングが誕生しちゃうぐらいだし……。

 オークやゴブリン、オーガが誕生したら教えてくれる魔道具とかないかな。依頼関係なく喜んで殲滅に行くよ!


 被害者が全員集まったところでエレンも治療行為に入った。どのくらいいるかとか数えないぞ。

 怒りを露わにしたり、泣いたりもしないぞ。一番辛い思いをしたのはこの人達なんだから。


 全員を治療した後になって気付く。

 ……どうやってウィシュカに連れて行けば……?


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