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転生魔女は悠々自適に世界を旅する  作者: 黛ちまた
水上都市は予想外がいっぱい

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異世界TKG!!

 雑貨屋さんで紹介してもらったバステさんのお店に向かう。バステさんのお店は赤のエリアではなく、黄色のエリアにあるとのこと。

 黄色のエリアはお店のエリアだった。前世、風水で黄色は金運アップだったけど、この世界でもそうなの? 転生者から伝わったとか?


 キトラに乗ってのっしのっしと道を進む。貿易都市ともなれば色んな人や物を目にするからか、あんまりジロジロ見られない。


「シルルが喜ぶような素材があるといいね」

「そうだね」


 シルルさんは探究心もおありなので、未知の素材にも拒否反応を示さない、気がする。


 雑貨屋の店長さんに、バステさんのお店は変わったのぼりが出てるからすぐ分かると言われてたんだけど、確かにアレは目立つー。のぼりっていうか、理容室の前に置かれてた斜めに白と赤と青の線が描かれて回転するアレ、アレがくるくるしてる。食材店なんだよね? 理容室じゃないよね?


「……お邪魔しまーす」


 恐る恐る店内に入る。

 食材のお店なので天狼達はお店の外で待機。


「おや、これは珍しい、魔女じゃあないか」


 予想していたのと違って、若い男性の店員さんがカウンターの前に立っていた。

 顔色が悪くて耳が尖ってる。ダークエルフ?


「魔族は初めて見るかな? ひよっこ魔女さん達」


 ジッと見てしまった!

 私とエレンは慌てて頭を下げた。


「すみません、不躾に見てしまって」

「すみません」


 カラカラと店員さんは笑う。


「不快には思ってないから大丈夫だ。オレはバステ。ここには誰の紹介で来たんだい? 変なのぼりもあるし、入りづらかっただろう?」


 変なのぼりだって自覚はあるんだ。


「えっと、雑貨屋さんです」


 雑貨屋さんの名前見てなかったなぁ。


「あぁ、アイツか」


 よく分からんけど通じたっぽい。


「魔女に会うのは久しぶりだ。急いでないなら食材の紹介がてらお茶でも飲んでいきなよ」

「いいんですか?」


 実は店内に入ってすぐに目についた食材が変わってて、色々見たいなって思ってたんだよね。


「趣味でやってる店だし、変わり種が多いんでね、馴染みの客しか来ないのさ」


 商売っ気なし!


 椅子に腰掛けると、バステさんがお茶を淹れてくれた。薄緑色のお茶だ。香りといい、これは緑茶?


「いただきます」


 ひと口飲んで確信する。

 やっぱりこれ、緑茶だ。


「緑茶をこの世界で飲めるなんて」

「魔女や賢者に緑茶を出すと大抵そういう反応をされるよ」


 そもそもお茶は嗜好品。お値段お高め。


「もしかして抹茶も扱ってたりしますか?」


 もし抹茶が手に入るならほしい。かき氷だとか焼き菓子だとか抹茶塩だとか、多岐に渡って使える!


「あるけど高いよ」


 そうだよねー!


「抹茶で何を作ろうとしたんだい?」

「かき氷とか」

「天ぷらとか」

「天ぷらに抹茶?」

「抹茶と塩を混ぜたもので、抹茶塩っていうんですけど、私は好きなんです」

「抹茶塩! なるほどねぇ、オレもやってみたいが料理をしないからなぁ」


 っていうか天ぷらは知ってるんだ。

 魔族というだけあって寿命長そうだし、魔女や賢者にお茶を出したって言ってたから、見た目どおりの年齢じゃなさそう。


「そうそう、君達転生者がよく欲しがる米と醤油と生卵があるんだけど、買ってくかい?」

「買います!」

「欲しいです!」


 まさかの卵かけご飯!

 いずれそういった素材の生産地に行くにしても、いくらあっても困らない!

 米! 醤油!


「味噌やみりんや酒もありますか?」

「あるよー」


 カメラは欲しいが、やはり舌と記憶に馴染んだ調味料は欲しい!


「大豆もありますか?」

「!」


 エレンが尋ねる。

 天才か!?


「あるよ」

「バステさん、ありがとうございます!」

「助かります!」


 大豆があったら味噌が作れるし、豆腐も……!?


「君達転生者は本当にそのあたりの食材が好きだねぇ」

「ソウルフードなので」


 そうじゃない人もいるだろうけど、でも大多数の日本人は米や豆腐が日常的だったはず。

 シルルの好む食材を買いに来たはずが、我らが好むものを買いに来たみたいになってしまった。




 ホクホク顔で帰った私達をシルルとファゴットは不思議そうに見つめ、買い込んだ食材を眺めて怪訝な顔になった。まぁそうなるよね。


「ここに並んだ食材や調味料はね、私達の前世で慣れ親しんだものなんだー」

「酒、味噌、醤油は欠かせない」


 エレンが欠かせないなどと言うものだからシルルの目が光った。探究心というか、負けず嫌いに火がつくと思ってたよ。


 生卵の鮮度が落ちないうちにTKGを堪能したい!

 シルルにお米のとぎかたをレクチャーせねばとなって、慌てて黄色エリアの雑貨屋に駆け込んだ。

 米粒が落ちない程度の金属製のザルを購入。丁度いいのが売っていてよかった。魔女馬車キャンピングカーにあるザルは野菜などの食材を洗うのに適した目の粗いもの。あれではコメはとげぬ。炊く鍋は煮込みなんかに使ってる厚手のホーロー鍋でいいと思う。


 馬車に戻るなり、そわそわしているシルルにお米のとぎ方をレクチャー。あんまりないと思うけど私とエレンでやり方が違うとシルルが混乱しちゃうので、エレンの調理方法を基準にして昇華していっていただければ。


 お米はおいといて、醤油などの他の食材の話をすることにした。

 この真っ黒い液体が、大豆からできていると知ってシルルもファゴットも驚いていた。


〈呪いでもかけているのか!?〉


 呪われたものは食べないよ、ファゴット。


「大豆は加工次第で様々なものになるんだけど、味噌や醤油って大豆と塩だけで作れたっけ?」

「麹がないから無理かなぁ」


 麹が必要なんだ。知らなかった。バステさんの店に麹あるかなぁ。にがりとかも。抹茶があるくらいだからきっとある。あるって信じてる。

 醤油、米、大豆、卵、味噌、みりん、酒を買って帰って来てしまったけど、他にも私達の心をくすぐる食材があるかもしれない!

 いやー、コヴァルシャに来て良かった! 貿易都市万歳!

 若干お高め値段だろうけどさ、いいのよ、たまには。あるんだってことが知れたのが大きいし、旅の目的にできるし!(お金が貯まらないタイプの言い訳)


 お米を入れた鍋を火にかける。エレン先生監修の元、異世界での初炊飯が行われております! 時間が経つにつれて香るお米の香り。あぁ、異世界なのに米! しかもTKG! 記憶を取り戻して何度目だか分からないけど、歴代の魔女様や賢者様、本当にありがとう!!

 なお、お米がジャポニカ米であることはエレン様により確認済みですよ!

 ああぁ、香りだけでごはんが食べられそう。




 器によそられたお米が光ってます! さすがですエレン! さすがですシルル!

 箸がないのでスプーンなのはご愛嬌。

 別の器に卵を割り入れ、醤油を入れてスプーンでかき混ぜる。うん、まぜづらい! でも苦にならない。だって卵かけご飯が食べられるから!!

 混ぜ終えた生卵をごはんにかける。

 笑顔の私を恐ろしいものを見るような目でシルルとファゴットが見てきます。まぁね、前世でも生卵が食べられるのは日本だけだったから気持ちは分かりますよ。

 でも生卵は駄目なのに半熟は食べてて、半熟にすれば大丈夫なの……? と不思議に思ってた。

 菌の問題じゃないってこと??


「いただきます!」

「いただきます」


 卵とお米、それぞれの甘さが口の中に広がる。そこに醤油。あぁ……卵かけご飯美味しい……美味しいよ……!


「美味しい。何杯でもいけそうな気がするくらい美味しい」

「分かる。沁みるね」


 ただお米に醤油で味付けした生卵をかけているだけなのに、感動している私を見てシルルが真顔になってる。

 シルルさんの普段の食事も美味しいんだよ!? でもさぁ、やっぱり和食が好きなんだよね、私達。


 ペロリと食べてしまって、なくなった器をじっと見る。

 バステさんの店にはどのくらいの頻度でこの衛生状態抜群の卵が入荷するんだろうか。

 冬の間ウィシュカに滞在するから、もう一回食べたいなー。


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