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転生魔女は悠々自適に世界を旅する  作者: 黛ちまた
双子魔女の旅立ち

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30/31

またね、フュリンガー!

 たっぷり寝て、たっぷり食べて、お風呂にもゆっくり浸かって、ってやってたらギルドに着いたのはお昼過ぎ。

 でもまだ寝れる。


 ギルドに着くなり受付のお姉さんにギルマスの部屋に案内された。


「遅くなりました」

「疲れてるとこ悪いな」


 促されるままにソファに座る。

 正面に座ってる高級そうな服を着た人、兵士のリーダーだった人に似てるんだけど、もしかしてもしかするのか。

 リーダーそっくりさんと目が合う。にっこり微笑まれた。

 あー、やっぱりそうなんだー。


 変だと思ったんだよね。伝書用の鳥を操る人って専属がいると思うんですよ。それが下級兵士なのは別におかしくない、むしろ普通。でもリーダーは明らかに上級兵士っぽかった。あと他の兵士達のリーダーへの接し方が、ただの上官への態度よりも緊張感があったというか。


「気付いたようだな。こちらはフュリンガー領主のご子息、イアン様だ」

「素性を明かさずにいて失礼した。イアン・ウィリアム・エテルという」


 フュリンガー領の領主だからって姓がフュリンガーにはならないのか、それはそうか。

 それはそうと、どう反応したものかな。どうも、というのもおかしいし。

 こちらの戸惑いをあちらも分かってくれたようで、少し困ったような笑顔を向けられた。


「貴女達の実力を疑ったわけではなくてね、私が魔女という存在に関心があって、父に無理を言って同伴させてもらったのだ。あぁ、振る舞いについてはとやかく言うつもりはない。これまでと同じようにしてくれると嬉しい」


 そんなこと言ってあとから不敬とか言わない?


「大丈夫だ」


 ギルマスがそう言うので、エレンと見合わせて頷いた。


「分かりました」

「魔女や賢者の存在は多くの者が知るところだが、賢者は私達と同じ人として生まれるし、寿命がある。対して魔女は寿命がないにも関わらず数が多くなく、その殆どが人里を離れた場所で生きる」


 それはそう。お母さんも森の中で暮らしてるし。


「アナベラ殿のことは父から聞いていたが、まさかそのご息女に巡り会えるとは思わなくてね、依頼の話を聞いて頼みこんだ」

「そうなんですね」


 としか言いようがないというか。


「マルングリティに住む魔女はかなり強欲らしい。魔女であろうと賢者であろうと人であろうと、個々によって異なるとは聞いていたが、特別依頼だ。為人ひととなりは大いに気になるところでね」


 まぁ、うん、そうでしょうな。

 それから、マルングリティの魔女はやっぱりアレなんだ。フレディさんが怯えるはずだ。


「そこは人によるというか、魔女によると思います」

「だが君達はかなりのお人好しの部類に入るのではないか?」

「人を騙して生きるくらいなら、お人好しのほうがいいです」


 騙されたほうが悪いなんて言葉があるけど、どう考えても騙すほうが悪いし、どちらかを選べといわれたら、騙される側でいいし、被害は最小限でお願いしたい。


 イアン様は笑うと、ギルマスに書類を渡した。


「今回、我がフュリンガー領は貴女達に大変世話になった。よって報酬を上乗せさせてもらった」


 ギルマスがテーブルの上に依頼の受領と完了時に使う水晶を置く。


「ブレスレットかリングをかざしてくれ」


 私とエレンはそれぞれリングとブレスレットを水晶にかざした。シャリーンという音がした。それからこの前も聞いた、ランクアップ時の音も。パララッパッパッパー。某有名RPGのレベルアップ音と同じ奴。


「あ」

「おめでとう、これでランクはDだ」

「え、いいんですか?」

「あれだけの功績だ、ランクが上がって当然だ」


 まさかランクアップするなんて思ってなかったからびっくり嬉しい!


「それから報酬もさっきので振り込まれているはずだ」


 あとで確認しようっと!

 カメラ……は無理だろうけど、先立つものはいくらあってもいいよね!


「貴女方はこれからも旅を続けるのだろう?」

「はい」

「是非また、フュリンガーに来てくれ」

「それは勿論。山の向こうには母がいますから」


 イアン様とギルマスと握手をしてギルドを出る。

 長らくフュリンガーに滞在(?)したなぁ。そろそろコヴァルシャに向かいたいんだよね。

 明日から休息しつつ旅の準備をして、フュリンガーを立つつもり。


「思いがけずランクアップしたね」

「ね。良かった」

「Eランクの依頼、全然受けなかった」

「受けたよ、一つだけ」


 ……あ、特別依頼になる前に受けようとした奴か。


「そうだった」

「そうそう」

「Dランクはどんなのだろうね」

「冒険者だからね、より難しくなりそう」

「同感」


 でもきっと、エレンと天狼達とシルルとファゴットがいれば、なんとかなる。

 私達、Sランクとか目指してないから、ほどほどでいいしね!




 移民問題が解消され、かつ季節は秋。

 領都の食料品店は秋の味覚大売り出しだった。

 ニルアインワからもぎ取った森から収穫したものが出回ってるみたい。森は資源の宝庫だよね!


 エレンは本屋へ。ファゴットはむくつけき男になってシエを連れて地図作りの完成に向けて燃えてる。

 私は特にやりたいこともなかったから、キトラとシュナを連れて山に行き、噂のキノコ採取に。これはちゃんとエレンに許可を取ってます。収穫したキノコはお母さんに送って、残りは我らが美味しくいただく予定。


 馬車より天狼のほうが当然揺れるけど、速さにひょええああぁぁぁ! となってる間に到着した。当然無事じゃないので、しばらく休憩した……げっそり。


 三十分程休憩し、なんとか生き返ったのでキノコを捜索。

 魔法と鑑定リング様々である。いやほんと、キノコはヤバいからね。


 アンズタケやキンチャヤマイグチ、ハナイグチ、ツクリタケもたっぷりあったので、たっぷりいただいた!

 キノコのクリームシチュー食べたーい!!

 そして目標のパイン・ボリートを発見! ポルチーニの一種で、この山にしかないという奴。前世、山か里かで紛争になったキノコに似てる。

 この山にしかないということなので、取り過ぎはあかんよね、と思って収穫はほどほどにしておいた。

 マジックバッグに入れて、じゃあ帰るか! となって思い出す。だから、また酔うじゃん……。




 馬車の二階の居間で休んでいたらエレンが帰ってきた。

 二階に上がってきた時のほくほく顔からして、気にいるものが見つかったもよう。良かったね。

 馬車での移動中や寝る前なんかにも読んでる、大の本好きだ。


「おかえり」

「ただいまー」

「いいのあったー?」

「あった!」


 マジックバッグからいそいそと本を取り出す。……えー? 随分買ったね? これ、もはや鑑定リング諦めてるな。いいけど。

 私はカメラを買うぜ。


「キノコいっぱい採ってきてくれてありがとう」

「うん。ただ酔ったよ」

「直線距離で登れないくらい急斜面だもんね。お疲れ様です」

「アレはやっぱりなんとかしたい」


 天狼に乗ってる時は仕方ないにしても、せめて馬車だけでもなんとかしたい!


「明日は食糧の買い出しとクルックさんの所に行こう」

「うん、そうしよう」


 紙のことは忘れてたけど、旅立つ前にクルックさんに挨拶することは忘れてないよ!




 連日日用品や食糧をたっぷり買い込んだ。また旅が始まるからね。大事です。この前の特別依頼の報酬、思った以上に凄かったんだよ。嬉しい。

 そうそう、ギルドでフレディさんの紹介状をもらった。これでマルングリティの凄腕(?)魔道具師に会えるぞ!


 買い出しの最後にクルックさんのお店に行ったら賢者くんがいた。


「おっ、英雄のご帰還じゃん」

「英雄?」


 誰のこと?


「六つの村を奪還して、領地を守る防壁を作ってくれた双子の魔女は今じゃ領民にとって英雄扱いだぞ?」

「なにそれ逃げたい」

「なるに決まってんじゃん」


 そう言ってケラケラと賢者くんは笑った。

 ところで肩に乗ってる生き物が気になる。


「賢者くん、その肩に乗ってるのって?」

「あぁ、コイツ? 可愛いだろ、水猫だ」


 水猫ってことは使い魔?

 賢者くんの肩の上でにょろーんと伸びたりしてる。猫は液体だもんね。時折透けるのが不思議。


「天狼が良いって言ってたけど、水猫に選ばれたことを受け入れたんだ」

「まぁな。自分の力で無双してやるって決めたからさ」

「おぉ、かっこよ」

「だろ?」


 ニカッと笑う賢者くん。まごうことなきDK感。


「そろそろ旅立つんだろ?」

「うん」

「また何処かで会えるといいな」

「そうだね」


 賢者くんも無双のためには旅立たないとね。


 店を出ようとした賢者くんが振り返った。


「オレの名前、ダニー・グリフィン・デコス」

「お貴族様!?」

「男爵家だけどな。じゃあ、またな!」


 そう言って爽やかに去って行った。

 陽キャだ。


「彼も良いほうに向かって良かったよ」


 クルックさんがニコニコしながら言った。


「やたら絡んでくるからどうしようって思ったけど、悪い人じゃなくて本当良かった」

「うんうん」

「そうだねぇ。賢者うんぬんの前に貴族に目を付けられるのは面倒ごとにしかならないから、良かったよ」


 それは確かに。


「さて、お待たせしたね。これが錬金術で作った紙だよ」


 カウンターに紙の束が置かれた。


「触ってみていい?」

「勿論」


 ツルツルしてる。普通の紙と違って毛羽だってない。前世の紙に近い感じ。


「何処から聞きつけたのか、魔女通販から声がかかってね。今後はそっちでも買えるよ」

「おぉー」

「日用品だから値段もそんなに高くしてないからね」

「うん、ありがとう、クルックさん!」


 紙の束とインクを買い、おやつをご馳走になった。


「帰ったら顔を見せにきておくれ」

「うん」


 クルックさんがホビットのハーフで良かったなって思う。人よりも寿命が長いから。


「またね、クルックさん」

「またね」

「良い旅を」


 買い出しを終えて馬車に戻った私達は、そのまま旅立つことにした。

 コヴァルシャに向かうなら、夜のうちに出ると朝に関所に着くとギルドで教えてもらったからだ。


 領都を出る時、門番の兵士さん達に笑顔で送り出された。


「良い旅を!」

「ありがとうございます」


 手を振って馬車に乗り込む。

 またね、フュリンガー!


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