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果てなき航路を進む為に  作者: 高災禍=1
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第020話『試験』

よろしくお願いします

 

 「此処は確かに広いのぅ」

 「それはそうでしょう。何せ冒険者が練習する為に作られた場所で、かなり広くないと使えないじゃない」


 今レナは、冒険者ギルドの入会試験を始めようとしているところだ。

 お互いに武器を構え、戦闘準備に入る。

 レナはいつも通りに『神獣の環』を起動させる。対してユーリスは一本の巨大な杖を構える。

 そんな中、レナはある事に気付く。


 「完全装備じゃのぅ」

 「貴女相手に手加減なんて出来ないでしょ」

 「……………これは試験じゃよな」

 「……………頑張って下さい」


 この冒険者ギルドの入会試験は、レナの「あほ~」という叫び声で始まった。



 ♦  ♦  ♦  ♦



 「『身体強化』『鬼化』『雷神の現身』」

 「『自動治癒』『活性化』」


 どちらも自分自身に対して、魔術などを使用した。

 レナは自身に対して、強化の類を。ユーリスは自身に対して、回復と強化の類を。


 だが今までの戦いとは違うのは、両方とも突撃するのではなく、片方が突撃してもう片方が相手から距離を取っている。


 「逃げるんじゃないわ!」

 「貴女の一撃が当たったら、終わりでしょう」


 今回はレナが先に攻に入るのではなく、ユーリスが先に攻に入った。


 「『縛光の陣』」


 ユーリスの足元に魔法陣が出現して、そこからいくつかの光状の鎖がレナを襲った。それはいくつもの鎖は最終的に逃げる場所を無くすように計算された動きだった。


 だがある程度は読めていたのか、レナは最適解を導き出す。


 「『反撃の魔術(カウンターマジック)』」


 レナの周りに現れた小さな魔法陣は起動し、魔術で生み出したショートスピアが現れた。

 そしてその魔術の迎撃によって、光の鎖を相殺した。


 「相変わらず、腕が落ちていなくて良かったのじゃ」

 「それは此方のセリフです」


 その言葉を起点として、第二局面が始まる。

 レナは隙を付いて飛び交う魔術をかわしながら近接戦闘の領域に入る事に成功した。だがユーリスというかつての仲間は、そう簡単に勝たせてくれない。


 「甘いですよ!」

 「ちぃ」


 なんとユーリスはレナに対して、杖による迎撃を行った。

 元々ハイエルフという種族は近接戦闘があまり得意ではない上に、職業ボーナスによる能力上昇がない状態なら、近接戦闘が得意な鬼人族の猛攻は耐えられないはずだ。

 レナは驚きつつも決してこの間合いを離れずに、相手の行動を観察し続けた。

 その中でレナは、ある事に気付く。


 「その動き、『笹木』のものじゃろう」

 「流石ですね」


 『笹木』とは、元々レナ達と一緒にパーティーを組んでいた者だ。

 リアルでは何十年も剣道をしているらしく、刀一本でレナ達と肩を並べるほどの猛者だ。魔術は自身に対してのもののみしか使えなかったが、彼は変幻自在の一刀流が得意だった。しかしVRの頃は相手の攻撃の一撃一撃が重く、2発も当たれば死亡扱いになるだろう。しかし彼はレナ達と肩を並べる事が出来た。

 その訳は、間合いの把握だ。

 笹木は相手と自身の間合いを制御する事で、近接戦では無類の強さを発揮した。

 

 そしてユーリスの動きは、拙いながらも彼の動きと似ている。

 だが、


 「じゃが、甘い!」


 レナと笹木は近接戦でしのぎを削る仲だ。だからこそ相手の動きは未来視に迫る程の正確性を得る事が出来る。

 加えてユーリスは、まだ完璧ではない為、所々に隙が見える。


 レナはその隙のタイミングで相手の懐に入り、魔術を発動させる。


 「『覇掌』」


 レナの手の平に現れた魔法陣ごと掌底でユーリスを打ち抜き、ユーリスを壁まで吹き飛ばす。


 そんな光景に判定を任されたギルドの職員は、目の前で起こった事に唖然としつつも判定結果を高々に叫んだ。


 「レナさん、合格です」


 その言葉を聞いたレナは、まだ砂煙が立ち上る壁際へと足を進めた。その場所は先ほどレナがユーリスを吹き飛ばした場所だ。

 そのレナが傍に来た事に気付いたのか、ユーリスは砂煙を払いつつ話し掛けてきた。


 「いや流石ですね、レナちゃん」

 「童を試したかの」

 「……………流石はレナちゃんですね」


 周りから見れば、二人共が相手の命を取り合っているようにしか見えなかった。しかし二人にしてみれば、ただ試し合っているだけだった。

 二人共、相手の腕前が落ちていないのかの確認だ。


 こうしてレナは、合格となった。



 時は少し過ぎて、今度はレティシア達が広場にやってきた。

 自分のやる事がもう無いのか、ユーリスがレナに向かって話し掛けてきた。

 

 「それでレティシアちゃんは大丈夫ですか」

 「それは本心かの?」

 「いえ」

 

 その言葉にレナは不満を覚えつつも断言した。


 「それで落ちるようなら、弟子にしてないわい」



 ♦  ♦  ♦  ♦



 レティシアは、少し緊張している。だが緊張の内容は、合格か否かではない。自身の主が居ない間、鍛え続けた技の数々が主に認めて貰う為だ。


 だからこそ始まったと同時に、レティシアは一つの棺を出現させた。

 

 だが相手は先ほどの戦いを見たために、その棺に注意して攻める事が出来なかった。


 だからこそ、その隙が致命的な隙になる。


 不意に棺の戸が開いた。

 中から現れたのは、フルプレートを着込んだ鎧だった。だがその見た目に反して、動きは素早い。

 

 『英雄転生』

 これがレティシアが使用した魔術だ。

 過去に死んだ英雄を死人として現代に蘇らせ戦わせるものだ。ただ自分よりも高位の存在は呼び出せないが、レティシアならば大抵の英雄ならば呼び出す事が出来るだろう。


 相手も最初は驚いたが、即座に切り替えて鎧に切り掛かる。


 その結果にレナは、そこそこに満足している。

 VR時代にはNPCとしての縛りで、そこまで強くはなかった。だが今の術式の速度からして、それよりも高位の魔術も使えるだろう。



 そんな考えの間に、如何やら決着が付いたようだ。

 鎧の方が相手の首に剣を添えた。一方相手は武器を離して両手を掲げて降参のポーズを取っていた。

 

 こうしてレティシアも合格となった。



 ♦  ♦  ♦  ♦



 「はい、貴女達のギルドカードですよ」


 そう言ってユーリスがギルドカードを渡してきた。後ろに先ほどの受付嬢が居たが、触れてはいけないのだろう。

 そして渡してきたギルドカードには「Fランク」と書いてあった。もしかしたら飛び級があるんじゃないかと思ったレナであった。


 「それで受けるんでしょ、依頼」

 「受けるのじゃ」


 そうしてユーリスは、一枚の紙を二人に渡してきた。

 その紙には「ゴブリン5匹の討伐」と書いてあった。後でレナが聞いたのだが、最初に討伐系を受ける事によって彼等の得意不得意が分かるらしい。


 「それじゃ、行ってくるのぅ」

 「はい、いってらしゃい」


 こうして、レナ達は近くの草原に向かう事にした。



 ユーリスは彼女達が冒険者ギルドを出ていくのを確認した後、一仕事終わったといった感じで伸びをしてまた奥へと戻ろうとした。

 だがそんなユーリスに先ほどの受付嬢が声を掛けてきた。


 「あの、すみません先輩」

 「何でしょう」

 「先ほどの人達は、いったい誰なんですか?」


 その言葉に冒険者ギルドの皆がうなずいた。今までの戦いを見た後だから、余計に気になるのだろう。

 ユーリスは少し悩んだ後に、レナ達のことについて話始めた。


 「彼女達は、レナとレティシアよ」

 「え~と、小さい方がレナで大きい方がレティシアで合ってますか?」

 「合っているよ。話を戻すけど、まぁ二人の関係は主従関係といったところね」

 「主従関係!?」


 その言葉に数人の男達に動揺が走った。如何やら彼等はメイドに夢を持っている人達らしい。


 「まぁそれで私達は、昔一緒に旅をしていたのよ」

 「確か20年ほど前でしたっけ? 鯖読んでいませんか」

 「いや、本当に20年ぐらい前だよ」

 「……………彼女は本当は何歳なのでしょう?」

 「私も聞いた事無いけどね」


 ユーリスは「ごほん」と咳払いをして、次の話へと移ることにした。


 「……………それで旅をした仲間で彼女は副団長だったのよ」

 「先輩は何でしたか?」

 「簡単に言えば、一般兵といったところね」

 「……………やっぱり強いんですか、レナさんって」

 「今まで出会った人の中で、五本の指に入るよ」

 「そうなんですね」

 「あれ? 驚かなくなったね」

 「……………もう疲れました」


 そんな話は、もう少しだけ続いた。


 

 


ありがとうございます。

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