93.感情X
僕は王都へと帰ってくると、冒険者組合で今回の依頼の報告を済ませた。
依頼の数十倍の水蛇、村を襲った魔族、謎の小瓶など、嘘をついているといわれた方がまだ納得できるような内容ばかりだったが、それでも何も言われなかったのは、空間バッグに詰めてきた魔族と数千の蛇の亡骸があったからだろう。
『あのチビ、1人で魔族を倒したらしいぜ。』
『そうなのか!?……でも、ちょっと怖くないか?
今だって無表情で淡々と受付嬢に素材を渡してるし。
前見た時はもっと明るい感じだったと思うんだがなぁ……』
(………)
[レクト……]
結局この日は組合長が不在とのことで、翌日また来るように伝えられて組合を後にした。
**
陽が傾いてきた頃。
オルフェル邸に帰ると出迎えにきたお兄ちゃん達に過剰反応されつつも、みんなに無事を伝えることができた。
『……なんか今日のレクト様子が変じゃないか?』
『そうか?いつも通り笑ってたし普通だったと思うけどな。
まっ、だとしても飯を食べれば元気になるだろ!』
『そう、だな……』
そうして久しぶりのオルフェル家での夕食をとり終わり、寝室へと向かっている最中。
僕は真剣な顔つきのお兄ちゃんに声をかけられた。
「レクト……今回の依頼で、何かあったのか?」
「……何もなかったよ。」
「っ!嘘だっ!オルフェル家のみんなは気づかなかったとしても、お兄ちゃんにまで隠し通せるわけないだろ!」
「………」
お兄ちゃんが僕のために必死になってくれてるのはわかっている。
だけど、自分でもこの感情をどう呼んでいいかわからないのだ。
心の中に、何かポッカリと穴が空いてしまった感覚。
少なくとも僕は、この感情の正体がわからない限り、きっと前のようには笑えない。
「ごめん、お兄ちゃん……また今度話すよ。」
「っ!わかった……待ってるからな。」
そうしてお兄ちゃんと別れた後、僕はもう一度考える。
「この感情は、なんていうんだろ?」
**
3日後。
僕の証言によって村にAランクパーティが調査に出た。
メンバーは斥候として名高い者達ばかりが集まった、超調査特化パーティらしい。
淡い期待を持って迎えた数日後。
調査を終え、わかったことは–––––1つもなかった。
斥候 この世界では敵の偵察や感知、遊撃などを行う役職。
空間バッグ 実体のあるアイテムボックス。




