92.油断
しばらく更新遅れます。ごめんなさい……
飛んでいた魔族は確実に殺した。
だがさっきの話を聞く限りまだ仲間がいるはずだ。
「……行こう。」
[レクト、落ち着いてください。今行っても場所の特定は困難です。]
「わかってるよ。でも、行かなきゃ。」
生まれて初めてだ。
こんなにも心から何かに殺意が湧いたのは。
「映鏡。」
[発動対象 風跳への介入。]
メモの静止を無視して風跳唱え、魔族が向かおうとしていた方向へと跳躍しようとしたのだが、映し出した発動間近の魔法が突然消滅する。
「メモ、なんで邪魔するの?」
[レクト、さっきの赤い爆発はあの魔族が魔力を使おうとしていた名残です。
相手側はその魔力の名残を魔力感知で確認して、おそらく既に別の場所へと移動しています。
なのでレクト、このまま行っても何も収穫は得られません。]
「っ!それでも……!」
[一度引きましょう。
冒険者組合に報告すればAランクパーティによる探索が行われるはずです。]
「……わかったよ。」
舐めていた。
最初に出会った魔族の【踊るピエロ】のクラウンは、拉致こそされたものの僕以外に怪我をした人はいなかった。
そしてさっきの魔族も不意を突かれて殺されそうになったが、問題なく返り討ちにすることができた。
だから、油断していた。
鏡魔法は1kmくらいまでなら持続する。
村長が魔族に襲われる事態は、僕が油断せずに鏡魔法を張っていれば防げたことなのだ。
そしてその油断で、村長さんは殺されてしまった。
(二度とこんなことは起こさせない。)
僕はそう強く誓った。
**
次の日。
村長の娘さんに昨日の夜のことを問い詰めると、正直に全てを話してくれた。
「昨日Bランク冒険者様が異変の調査に行っている間に、1人の魔族が私達の家を訪ねてきたんです。
その時に村長は人質と言って連れ去られて、そのまま……」
涙を流しながら語るその姿は、今も村長の安否を心配していることがよくわかる。
そんな彼女を見て「村長はもう死んだ」なんて言える勇気は僕にはなく、最後に一つだけ質問をしてその場を去った。
帰り道。
「多分毒だよね…….」
[色、効果、共にレクトの記憶には存在しない毒ですが、状況的にその可能性が非常に高いです。]
僕はさっき預かった透明の液体が入った瓶を見つめる。
最後彼女に質問した内容はこうだ。
『昨日の夜、村と村長の安全を対価に魔族と約束したことはなんですか?』
『それは、その……Bランク冒険者様の朝食に、渡された小瓶に入った液体を混ぜることです。
あ!事情をお話しして、勿論入れる振りだけするつもりでしたからね!?』
『わかってます。それで、その小瓶をいただくことはできますか?』
『もちろんです!』
そうしてもらってきたのだが、残念ながら僕では正体を暴くことはできなかった。
(後で組合に提出しようかな。)
[それが最善かと。]
小瓶を時空カバンに入れると、僕は帰りの馬車が出る馬車乗り場に急ぐ。
そしてギリギリで朝の馬車に乗り込むと、来た時と同じく2日かけて王都に戻った。
馬車は朝、昼、夜と電車のようなシステムで運行されています。
だが魔物の影響で遅れることもしばしば……




