80.異例の事態
「最後に首席発表を行います。
今から呼ばれた人は壇上に上がってきてください。」
司会を務めている女性がそう言ったと同時に、皆が姿勢を正す。
その様子を確認した女性は満足そうに頷くと、首席が書いてあるらしき封筒を手に取り、封を切った。
「今回の首席に選ばれたのはっ––––––え?
こ、これ間違えてません?」
遂に発表されると、場の緊張が最大に達そうとした時、壇上で何かトラブルがあったのか、女性が壇上を降りて何か確認をとり始める。
その後しばらくして女性は困惑した様子で壇上に戻ると、そのまま発表を再開した。
「し、失礼しました。
今回の首席は––––申し訳ありませんが、不在とさせていただきます!」
「「「「––––っ!?」」」」
その言葉が会場に響き渡った瞬間、会場にどよめきが起こる。
中には警備員が止めなければ今すぐに壇上へ直談判しに行こうという者すらいたほどだ。
(そんなことあるんだね〜。)
[なんでそんなに他人事なんですか?]
メモにツッコまれるが、実際僕にとっては他人事だから仕方がない。
別に貴族とのコネなんかに興味はないからね。
「み、皆様落ち着いてください!
首席の件は個人情報に関わることですので明かせませんが、代わりにここでは次席を発表させていただきます!」
するとさっきまでどよめいていた会場はすぐに静かになり、ようやく落ち着きを取り戻す。
おそらく貴族達にとっては目に見えている一位の座が欲しいだけなのだろう。
「それでは発表します。今回の次席は––––」
**
寮への帰り道。
アルマと歩いているとちょうど次席の挨拶を終えて、群がってくる貴族達からなんとか逃げてきたレミーと出くわした。
「わっ、レミー!?あの数の貴族達をよく巻けたね。」
「隠密と移動は風魔法の得意分野よ。舐めてもらったら困るわね。」
そうして合流して一緒に歩いていると、周囲の会話に釣られて、次第に首席が誰なのかという話になった。
「ま、やっぱりレクトでしょうね。」
「レクト以外に今年レミーを超えていたものはいなかったようだからね。」
しかし話が始まった直後から、もうすでに2人の中では僕が首席なのは確定しているようだ。
「違うよー。
だって僕、下手したらシルバーだったんだよ?」
「嘘でしょ……じゃあ、成績は?」
「両方一位だけど。」
「ならあってるじゃない!」
レミーになんだこいつみたいな目で見られるが、実際シルバーになりかけたのは事実なのだ。
逆にこれで僕だったら、あの合否通知はなんだったのだ。
しかしここでアルマから、決定的な一撃が放たれた。
「補足するけど、明かせない事情というのもレクトにくらいしか当てはまらないと思うな。
貴族だったら誤魔化せば済む話だからね。」
「まぁ、それは確かに……」
ここまで証拠が揃っていると納得せざるおえないが、だとしてもやはり謎だ。
「でもだとしたらなんで発表しなかったんだろ?」
そう、これに尽きるのだ。
そもそも発表していればここまで変な事になることはなかったのだ。
「それは多分、権威とかそういうものを守るためじゃないかな。
貴族学院で平民が首席なんて、学院の汚点になりかねないからね。」
「派閥争いでもあったんでしょう。
平民と明かしたくない派vs平民でも良いから混乱を招くべきではない派、みたいなね。
それで最終的に両方が首席を発表しないという形で納得したん判断でしょ。」
まあ、そう考えれば筋は通る。
とはいえ平民に対する偏見がここまで酷いなら、そもそも平民を学院に入れないようにするべきではないだろうか。
「まぁ、納得いかないこともあったけど、とりあえずは終わったね!」
「昨日も言ってなかったかい?それ。」
そんなこんなで僕は入学式からこの調子で大丈夫かと不安を覚えながらも、明日にある始めての授業に密かに心を踊らせながら、アルマと寮へ戻ったのだった。
誤字脱字報告お願いします!




