77.衝撃の事実
サプライズイベントの翌日。
今日は大事な入学式の日だが、昨夜僕とアルマは初めての寮だからか眠れず、夜遅くまで話していたこともあってかなり寝不足だ。
だが眠い目を擦りながら寮を出ると、案外周りも変わらないようで皆眠そうにノロノロと歩いていた。
(やっぱりみんな初めての場所は落ち着かないよね〜。)
[レクトに関しては途中から眠気に抗って起きてましたよね?]
(……どうだろうねー。)
まあ否定はしない。
確かに途中から楽しくなって無理して起きていたところはあるかもしれないが、やはり人間楽しいことには抗えないと思うのだ。
だからこれは人間の本能が悪いのであり、決して僕は悪くない。
うん、きっとそうだ。
そうして自分の正当化が済んだところで、手元の地図––––昨日サプライズイベントで貰った魔力地図の指す、入学式が行われる大講堂に辿り着いた。
「……金ピカ。」
「レクトのこの学院に対する感想はそれしかないのかい?」
隣にいるアルマにすかさずツッコミを入れられるが、本当に思うことがこれしかないのだから仕方がない。
やはり僕には貴族の芸術的価値観は理解できないようだ。
「とにかくレクト、早く中に入ってしまおう。
……周りの視線もうるさいし。」
「まぁ、アルマの顔面偏差値の高さじゃ注目されるのも仕方ないよね。」
「いや、見られてるのは私だけではないと思うのだが……」
さっきからなんとなく気づいていたが、ちょくちょくこちら––––正確にはアルマを見ている女子が何人かいる。
アルマは何か変なことを言っているが、女子が注目しているのは間違いなくアルマだけだ。
実技試験で試験場を地獄絵図と化させた僕のことなんて誰も見ていないはずだ……うん。
[視線を解析––––男女問わず周辺でレクトを注視している割合は……]
(はいはいー、余計なことをしなくていいからね?)
[……4割を超えると推察できます。]
(なんで最後まで言い切った!?)
やはり最近メモの自我が強くなってきている気がする。
別に嬉しいことなのだが、自我を持つにつれ、たびたび僕の知りたくないことをサラッと言うのはやめていただきたい。
「レクト?置いていってしまうぞ?」
「あ、こめん!今行くから待ってて〜。」
そんなことをボーッと考えていたからか、アルマとの距離がかなり離れてしまった。
急いで追いつこうと走り出そうとすると、突然目の前に人影が現れる。
「わっ、こめんなさい……って––––あっ。」
「あら、久しぶりじゃない。」
目の前に現れたのは、笑顔でこちらを見つめる、実技試験の以来のレミー。
ただしその表情は笑顔のはずなのに、常人にも感じられるほどの明確な殺意を感じた。
(怒ってるっ、絶っっっ対に怒ってるっ!?)
「あら、そんな逃げ腰にならなくたっていいじゃない。
ただ、少しお話しがしたいだけよ?」
「ちょっと遠慮したいなぁ、なんて……」
絶対零度と錯覚するほどの凍りついた空気。
そんな空気を打ち壊してくれた救世主は、先日出会った友人だった。
「あれ、レミーじゃないか。
どうしたんだいこんなところで。」
「あらアルマ、試験の時以来ね。」
どうやら2人は知り合いのようで、少し空気が和らいだのを感じた。
(よし、今のうちに話を逸らさないと!)
「アルマとレミーって知り合いなんだったんだね!」
そういうとアルマは不思議そうな顔で答える。
「ん?当たり前だろ。
だってレミーは私と同じ五代名家の一つ、風の名家のテルペト公爵家の者なんだから。」
「へぇー…………え?
レミーが、五代名家!?」
「あら、言ってなかったかしら?」
ただ話を逸らそうとしただけなのに、さらなる爆弾を掘り起こしてしまうレクトであった。




