74.水の名家
「で、なにこの人?」
ようやく状況を整理する時間を与えられたレクトだが、整理してなおこの少年が僕を襲いにこれた理由がわからない。
「うーん……ま、こういうときは本人に聞くのが1番だよね。」
そう言って魔法を構えると、苦しそうな顔で気絶している少年の顔にさっきの仕返しも兼ねて水を放出する。
「ッブブッ!?––––ゲホッゲホッ……」
少年は苦しそうな声を出すと、水を吐き出しながら起き上がった。
「––––っここは?」
「起きた?えーっと……名前なんだっけ。」
目の前の少年は僕を見た途端魔法で距離を取ろうとしたようだが、魔力が枯渇気味なのに気付き、ようやく状況を把握したようだ。
「……君にはまだ名乗ってなかったね。
私の名前はウォルト・アルマ––––こんな負けた後に言うことではないが、一応五大名家の内の一つ、ウォルト家の一員だ。」
「はぁ、それで……」
ウォルトといえば過去に水害を鎮めたことで有名な、由緒正しき水魔法の名家だ。
どうりでBランクに到達したことで、すでに大人の魔法師と同等の力を持っている僕でも苦戦するわけだ。
「まぁ、とりあえず勝ったのは僕だし、大人しくこれからする質問に答えてもらうよ。」
「あぁ、わかっている。今更この身分を使って君を脅そうなんて気はないし、答えられることならば全て話させてもらうよ。」
少年改めアルマは、その後の僕の質問に渋る様子もなく全て答えてくれた。
真偽も確認できたので、本当に僕を騙して勝とうなんて考えはもっていないようだ。
(ざっと聞くべきことはこんなものかな!じゃあメモ、まとめて〜。)
[……わかりました。]
少し呆れ気味のメモに情報をまとめてもらうと、試験官の意図がなんとなくわかってきた。
まず最初に聞いた「なぜ僕がペアだとわかったのか」と言う質問に対しては、入口で貰った白紙のカードに魔力を込めると、白紙の紙に地図のようなものが映し出されて、それを辿ると僕の元に辿り着いたらしい。
これに関しては僕のカードで試してみて本当に反応したので、本当の情報だろう。
(おそらくあっちこっちに厳重な結界と共に置いてある魔動自動記録機––––つまり防犯カメラ––––でゴリ押しで探すか、それとも仕掛けに気がつくかの発想力・判断力をみてるんだろうな。)
これはかなりいやらしい仕掛けだ。
僕なんて言われてからやっと、この紙の存在を思い出した。
アルマが気付けたのがおかしなだけで、殆どの学生は僕と同じように存在しないヒントを求めて下の階を彷徨っていることだろう。
(毎回思うけど……こういうの考えてるやつ、性格悪くない?)
そんな試験官に聞かれたら退学レベルのことを、心の中でつぶやくのだった。




