70.【ミダスの手】
合否通知から2週間後。
お世話になったルイ様達にお礼を言って、僕はお屋敷を後にした。
いつも話していたお屋敷の人と会えなくなるのは少し辛い。
だけど……
「『いつでも帰って来ていいからな』って……また3ヶ月もすれば会えるってのに、やっぱりうちの親は過保護すぎるんだよ。」
「でも過保護な分にはいいんじゃないか?
別に困ることでも無いだろう。」
「いやいや、お前はまだあの恐怖を感じたことがないからそんなことを言えるんだ。
去年の魔法祭の時だって……うぅぅ!」
学院の寮に入ってもお兄ちゃん達とは、学年は違えど同じ寮なら今まで通り頻繁に話すことができる。
だから、寂しくはない。
「それにしても、レクトと本当に同じ寮になれてよかったよ。
ルイ様達に感謝だな。」
「まあそうだな。
あのままじゃシルバーだったところを、正式に抗議までしてゴールドに上げさせたんだから、うちの親ながら大したもんだよな。」
そんな2人が前で話しているのは、王都でちょっとした話題になった、––貴族学院不当審査疑惑––のことだ。
聞いた話によると、オルフェル家が総出で僕の成績について異議を唱え、最終的に学院側がそれを認めたらしい。
お屋敷で働いている人達から聞いた話なので詳細はわからなかったが、実際その後、僕の評価が上がったことから、その話は本当のことだったのだろう。
(それにしても、個人のとはいえ評価を覆すって……オル様達、なにしたんだろ?)
[……黙秘します]
どうやらメモはなんとなく想像がついているようたが、学院に着くまで話しかけても頑なに教えてもらえなかった。
**
門をくぐると見えてくるのは、煌びやかな装飾で飾られた、草木が輝く庭。そして僕がこれから5年間は通うことになるであろう、華やかさと共に、歴史を感じささせる建物の数々。
「す、すご……」
「だろ?僕は5年生になった今でも名前を覚えてない建物が沢山あるぞ!」
一度馬車から見えたが、実際に敷地に入るとでは訳が違う。
あらためて、本当に貴族学院に来たんだなということを実感した。
「じゃあ見学も程々にして、とっとと寮に荷物をおきに行こうぜ!」
「うん!」
だが僕は、門の時点ではまだ貴族学院を舐めていたようだ。
ついていった先にあったのは、10階はあるであろう、とても大きい建物。
装飾は当たり前のように最上級のものが使われており、入り口と見られる扉の前では、僕と同じ新入生と思われる人達が大勢集まっている。
「レクト!ここが僕達がこれから暮らす、ゴールドランク用の寮––––【ミダスの手】だ!」
「これが、生徒用の……寮?」
僕は、どこからこんなお金が?と思わずにはいられないのであった。




