66.兄の完璧?な計画
時はレクトが実技試験を受ける前まで遡る。
「そうえばアート、さっきお前がレクトに渡してた杖みたいなものはなんだ?」
レクトを送り届けた僕は、帰ってきて早々カイトからの怪訝な眼差しを向けられた。
「ん?あぁ、あれか。
あれはな、僕が徹夜で自作した、無駄に魔力を吸って光る杖だ!
動作確認の時にあまりにも光が強すぎて気絶したんだよな。」
「はぁ?何でそんなもんレクトに持たせたんだよ。」
カイトの顔がさらに険しくなるが、アートは気にしない様子で続ける。
「よく考えてみろ。
もしレクトが大技なしで勝てない受験生がいたらどうする?
レクトにおとなしく負けろっていうのか?」
「そうとは言ってないが……あの速さで上級魔法でも使ったら入学早々天才が現れたって大騒ぎだぞ?
鏡魔法のことを隠すなら目立たないに越したことはないし、仕方ないだろ。」
「そう、そこだ!
つまりはレクトが天才だと思われなければいいんだ!」
アートは誇らしげに言う。
「つまり?」
「全部杖のせいにすればいいんだよ。
あの杖が凄いからあんなに早く魔法が使えるし、あの杖のおかげであんなに強い魔法が使える、と思わせればいいんだ。
魔力を無茶苦茶に吸い取って光らせるから魔力感知でもレクトが使ってるとバレにくいし、よっぽどの実力者じゃなきゃバレることはないだろう!
まあ使うことがないのが1番いいんだが。」
「なるほど、確かに理にかなっているか。」
カイトはアートの説明を聞き終わると、感心した様子で頷く。
「お前って、そんなことまで考えられたんだな。
本当に弟のことになると人が変わるっていうか……」
「つまりレクトは最高ってことだ!」
「ハイハイそうだな〜。」
**
そして現在。
「はぁ、はぁ……」
[保有魔力の6割が今の魔法で消し飛びました。]
一つ、この杖にはアートが気がつかなかった欠陥があった。
まず最初に、この杖を作ったのはさっきも言っていた通りアートなのだが、アートは作った後の動作確認を徹夜していた関係で真夜中に行った。
結果はさっき言っていた通り問題なく作動したのだが、問題は魔力消費のことをあまり考えていなかった点だ。
アートはあの日、魔力不足によって眠りについた。
アートはそのことをただ眠気が限界を迎えただけだとか、光で気を失っただけなんて考えているが、実際は身体が魔力を求めて強制的に眠ったのだ。
そしてアートの魔力量は、少なくともレクトの2倍はある。
そして度重なる作業で魔力を消耗していたとはいえ、一瞬でアートの残りの魔力を殆ど持っていったその杖が、今日この試験会場の上空でまた使用されたというのが指すことは–––––
[残り魔力2割、作戦が成功するか微妙なラインです。]
僕の周りにはさっきの光を見て集まってきた受験生達がゾロゾロと集まってくる。
「ちょっと……やばい?」
その呟きと同時に、僕に多方向から魔法が炸裂した。




