1.選定の儀
杖を振れば火、水、風などの様々な現象が飛び出し、箒に跨がれば空が飛べる。
そう、ここは魔法が存在している世界。
こんな世界で古くから魔法大国としての歴史を紡いできた大国、ニクストリアでは今、一年の一大行事である、選定の儀が行われていた。
「ふざけるな!こんな、こんなはずはない!」
そしてそんな一大行事の真っ最中、どこかの教会で、1人の男の怒声が響き渡たる。
贅沢な服を身にまとった男は、今にも神父に殴りかかりそうなほど顔を真っ赤にして神父を睨みつけ、そんな男に神父は困った顔をし、周りは男を白い目で見つめる。
それに気づいたのか男は気まずそうに近くにいた子供の手を強引に引っ張り、教会から出ていった。
しばらく歩くと男は子供を突き飛ばして、自分は立派な馬車に乗り込み言った。
「もう帰ってこなくていい!兄と違って不出来なお前など、この家にはいらない!」
それだけ言うと男は立派な馬車に乗ってその場を去っていった。
置いていかれた子供はしばらく今起こったことが理解できずに立ち尽くしていたようだが、頭が回り始めようやく状況を理解する。
「………えぇ?」
その上でこの反応になるのは仕方がないことだろう。
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僕はレクト。
たった今親に捨てられたなかなか特殊な状況にあるだけの、普通の10歳の子供だ。
親に捨てられているのは普通と言わないのでは、なんていう冷静なツッコミは置いておくとして、僕の心の中はおかしなことに、何事もなかったのように落ち着いている。
いや、やっぱりちょっと混乱してるかも。
「……捨てられたのはまあ、予想が出来てきてたからいいんだけど……だってこんなにいきなりとは思わないじゃん……」
何となく予想が出来ていただけに、思っていたより驚いたり絶望したりみたいな感情は湧いてこないが、それでもまだ現実を受け入れられていないのは事実だ。
しかしまあ、僕がこんな落ち着いていたり、親に捨てられるのが予想出来てしまうといったことが起きたのには、少し訳複雑な訳がある。
まずこの世界では10歳になると、魔法の適性を授かることができる、選定の儀と呼ばれるものが行われる。
ここで出た適性というのは変更が出来ない上、魔法を使うのに必須な才能の一つなので、魔法主義のこの世界では、ここで人生が大きく変わるのだ。
そんな中、今年で10歳になった僕も例外なく、今日の選定の儀で魔法適性を授かった。
結果は–––––––鏡魔法
この世界の基礎適正の中にはない、いわゆる特殊適正と呼ばれたものだった。
この特殊適正というのがなかなかに厄介な適正で、使いようによってはかなり強いのだが、世間一般では複数の致命的欠点からハズレ適正なんて呼ばれている。
「それでもやっぱり強い適性だと歴史に名を残したりするレベルで強いんだけど……まぁ、名前が鏡魔法じゃあ、ねぇ……」
流石に生活用品の名前がついた魔法など、ハズレと思われて仕方がないとだろう。
それでも父は期待を捨てきれなかったのか、僕に魔法を見せてみろと言ってきたが、僕が小さな鏡を魔法で作り出したのを見て……今に至るといったかんじだ。
「だからと言って捨てるかって話だけども……お兄ちゃんが4属性の魔法に適性を授かった時から、元々家では邪魔者扱いだったから、まあ、仕方ないかな」
そう言ってはみるものの、やはり両親に捨てられたというのは、心のどこかで思うことがあるようだ。
「……よし、切り替えていこう!
ここでグズグズしててもしかたないしね!」
そう意気込んだはいいものの、色々起こり過ぎて足がもう限界だ。
しばらく歩くとベンチが見えてきたので、僕は少し休むことにした。




