第628話:エステリ村の薬売り
「ふふっ、マミヤ殿と朝からお出かけ♪
お姉ちゃんはすごく嬉しいぞ〜!」
「あはは。それは良かったっす、お姉ちゃん。
人多いんで、くれぐれもはぐれないように」
昨日に引き続き、再び青天市場へ。
この区域は朝でも人混みに溢れている。
というか、市場だとどこも大体混んでる。
俺はナディアさんを連れて、件の露店を目指して歩いていた。
「そ、それなら…私と手を繋いで歩かないか。
弟なら、姉をリードしてあげるべきだろう?」
おずおずと、ナディアさんが顔を赤くしてそんなことを言ってきた。
…普通にこうしてる分には可愛いんだがな。
「どうすかね。少なくとも俺の姉貴は…いや、分かりました。それじゃあ、繋ぎましょうか」
「うんっ!」
差し出された手を取り、肩と肩が触れるポジションで仲睦まじく歩いていく。
正直姉弟というか、恋人みたいで恥ずかしいけど、下手に逆らってまた火柱落とされても困るし仕方ない。
…でも、ナディアさんはすごく楽しそう。
「マミヤ殿、何か欲しいものはないか!?
お姉ちゃんがなんでも買ってあげちゃうぞ♡」
「ダメっすよ、お姉ちゃん。弟を甘やかしちゃ。
姉ってのは弟をパシリに使ってナンボですよ」
「えっ、そうなのか!? 家族なのに…?」
「ええ。あれは家族というより怪獣ですけど」
「さっきから誰の話をしている!?」
☆☆☆
「ハア!? 店を引きはらった!?」
「ああ。なんでも、あのオヤジは各地を転々と回っている流浪の薬売りらしくてな。
昨日がちょうど滞在の最終日だったようだぜ」
「な、なんてこった…」
目的地へ着くと、そこには昨日と全く違う別の露店が設置されてあった。
そこの店主の話によると、あのうさんくさい薬剤士は既にレガリアを発ったとのこと。
クソ、やっちまった…何やってんだ俺は。
昨日のフレイの提案を蹴らなければ良かったぜ!
「おじさん、ソイツの行き先は分かるか!?」
たらればで反省したってしょうがない。
昨日の失態は今日挽回しないとだ。
「たしか…次は西の方に行くとか言ってたかな。
おい兄ちゃん、まさか追いかけるつもりか?」
西…いまフレイとルカ達がいる方角か!
よし、上手くいけばまだ間に合うかも!
俺は店主さんの問いに頷き、ナディアさんの肩を掴んだ。
「ナディアさん、一旦屋敷に戻ってカーティスと合流しましょう! 奴に乗って薬売り野郎を追跡します!」
「えっ、乗るって…まさか空を飛ぶのか!?」
「そうっすよ?」
何を当たり前のことを。
俺が答えると、それまでご機嫌だったナディアの表情が一変して青くなった。
「い、嫌だ! 高い所はお姉ちゃんイヤだぞ!」
「俺だってまたアイツに跨るなんざ超嫌ですよ!
でも運行馬車じゃノロいし仕方ないでしょ。
ほら、帰りますよナディアさん」
「あー! 今ナディアって言った! ナディアって言った! 私はお姉ちゃんなのに!」
☆フレデリカ・シュバルツァーsides☆
「まったくウォルトときたら。昨日から一人ばかり零人を独占して…ブツブツ」
「もう、いつまで拗ねてんのよアンタは。
いい加減レイト離れしたらどうなの?」
「ふん。宝石は契約者離れなどせん」
エステリ・ヴィレッジ。
主にミルクやチーズなどの畜産関係を特産とするのどかなこの村に、私とルカは転移でやってきている。
村に着くなり、私たちは寄り道せずにあるお店へまっすぐ向かった。
そのお店とは、もちろん私の親友の…
「フーちゃん、ルカさんお待たせ。正直薬とスープ、私なりに調べてみたよ」
ガチャリと、カウンターの奥にある扉が開かれる。
「ありがとうラムジー!」
「感謝する」
ラムジー・カルメス。
私よりふたつ年下の、大切な幼なじみ。
ご両親から代々引き継いだ立派なお店を構える、エステリ村唯一の薬売りの少女だ。
昔からラムジーと私は、一緒に絵本を読んだり、魔法で遊んだりしていた。
お互い大人になるにつれて交流も減ってきたけど、理由はどうあれ、今日この子と会えたのは僥倖ね。
「はっ、お前はいつまで客を待たせてんだよ。
そんなだから仕入れん時も業者からクドクド文句言われ…へぶらっ!?」
「ルイス君!? もうっ、フーちゃん!
暴力はダメって何回言えば分かるの!?」
もうひとり、このお店には従業員がいる。
ルイス・モルゲン。
ニワトリみたいなダサいトサカ頭が特徴の、ガラの悪い男だ。
一応、この男も幼馴染となるけど…正直私はあんまりルイスのことが好きじゃない。
だってコイツ、いつもラムジーのこといじめて、その上偉そうにしててムカつくんだもん。
「いちち…相変わらず加減を知らねえ女だな。
そんな調子じゃレイトのヤツ、さすがにそろそろ愛想尽きてきたんじゃねえのか?」
「…もう一回ぶん殴られたいみたいね?」
「いや冗談だ冗談! やめろ! 今のお前の本気はマジでシャレにならねえって!」
「遊ぶなシュバルツァー。それで…カルメス。
君の解析結果を教えてくれないか?」
仕切り直すように、ルカが話を本線へ戻す。
フン。命拾いしたわねルイス。
「はい! もちろんです、ルカさん。
結果から言いますとですね…あのスープは『欲望薬』と同じ化合物になっています」
こんにちは、黒河ハルです。
貴重なお時間を消費して読んでくださり、とても嬉しいです!
めちゃくちゃ久しぶりとなる、エステリ陣営が再登場!
ラムジー&ルイスは零人の元祖パーティーメンバーです。
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何卒、なにとぞっ!底辺作家めにお慈悲を…!!




