第627話:灼熱の夜
「おはよう……」
「あ、レイト。おは…って、どうしたのそのクマ!?」
翌日、早朝6時。
俺はいつものリビングへ顔も洗わずに直行した。
一刻も早くあの部屋から逃げ出したかったのだ。
「どうしたもこうしたもあるかよ…あんな灼熱地獄で無事でいられるか!」
「お、落ち着きなさいよレイト!
たしかにすごい汗だくだけど…いったい何があったの?」
ちょうど朝食を食べていたフレイが、タオルを持ってきてくれた。
てっきりまだ誰もいないと思ったのだが、フレイのやつもう起きていたのか。
「昨日部屋割りでさんざん揉めて、最終的にナディアさんの部屋に俺が寝ることになっただろ?
同じベッドで寝るのはもちろんナシ、部屋のソファーが寝床って条件付きで」
「うん」
「そしたらあの人…脱いだんだ」
「はあ!?」
☆☆☆
順を追って説明しよう。
昨日の夜、俺はくっつき虫と化したナディアさんを宥めつつ、どうにか就寝させようとベッドに無理やり寝かせた。
すると彼女は、全然甘えてこない俺に不満なのか、部屋の明かりを消してからずっと喋りかけてきたのだ。
話の内容はすべて『姉』に関係するものばかり。
しかも応答しないと俺の寝てるソファーまでいちいちやってくる始末だ。
そんなことを何回も繰り返してりゃあ、当然俺だってしんどくなる。
それなら逆に彼女が眠くなるまでとことん付き合ってやろうと頭を切り替え、試しに『弟』として接してみたのだが…とんでもない悪手だった。
「俺、お姉ちゃんの作るご飯いつも美味いから、毎日家に帰るのが楽しみなんですよー」
「ふぁあっ!? マ、マミヤ殿ってば…♡
うう…お姉ちゃん、これからもずっと美味しいご飯を作ってあげるからな!
他の誰でもない、このお姉ちゃんが!」
「や、やったー。それは嬉し…あれ?
なんか…部屋暑くなってきてません?」
最初は少し蒸しあちぃなー程度に感じていた部屋の温度が、急激に上昇した。
そして、その原因はすぐに判明した。
「ああ、なぜこんなに愛おしいのだろう…!
マミヤ殿の喜ぶ顔を頭に浮かべるだけで、お姉ちゃんは、お姉ちゃんはぁ…ッ!」
「ぐおおおおお!? なにしてんだアンタ!?」
またもしれっと、俺のソファーにやってきたナディアさんの身体から、尋常じゃないレベルの熱気が発せられていたのだ!
どうやらこの人、怒っても喜んでも無意識に火属性を出しちまうみたい。
こんなキャンプファイヤー姉さん、どないして寝かせっちゅーねん!
「ハア…ハア…、熱い。ええい、邪魔だ!」
「えっ? ちょおおおおお!?」
さらにそれだけに収まらず、熱気を出してる張本人のナディアさんが、なんと自らの寝巻きを脱ぎ捨てた!
当たり前だが、下着姿だ。
出るとこが出ていて、ほどよく筋肉が引き締まった抜群のスタイルが、惜しげも無く俺の前に晒される。
「だー!? 思い切り見ちゃったじゃないすか!
服着てくださいよ! はやくはやく!」
「んんーいやだ! 暑いならマミヤ殿も脱げ!」
「俺は脱がねえよ!? あっ、ちょ…そこは…」
「ほらほらー、お姉ちゃんの前なら恥ずかしがる必要なんてないぞ♡」
そうして俺は服の脱着を巡る攻防を、ナディアさんが疲れて眠るまで、一晩中繰り広げた。
☆☆☆
「な、なな…なによそれぇ!
こっちは心配して早く起きたってのに、あんた達はそんなエッチなことしっぽりしてたワケ!?」
「違いますーエロいのはナディアさんですー!
俺は必死に耐えましたー! …いろいろ」
「まあ、手を出さなかったんなら別に良いんだけど…」
そう言うフレイの目は、懐疑的だ。
なんだよめちゃくちゃ頑張ったのに!
そんなに信用ないのか俺!?
「ちなみに今ナディアは?」
「寝てるよ。寝言で『お姉ちゃん』がどうのって言ってたから、多分まだ治ってないと思う」
「そっか…ねえ、レイト。私に考えがあるの。
ちょっとこっち来てくれる?」
フレイは俺の手を引いて、リビングを出た。
連れられて来たのは…事件が起こった厨房だ。
「なんだ、またサンドウィッチでも作るのか?」
さっきもぐもぐ食ってた。
「違うわよおバカ。昨日ナディアが作ったミネ…なんとか? それを専門家に預けようと思うの」
「専門家?」
はてと首をかしげる。
フレイは大鍋に入っているスープを、棚から取り出したら小容器に入れ、零れないよう厳重に閉じた。
「ラムジーよ。あとでルカに頼んで、エステリ村まで送ってもらうわ」
「!」
なるほど、そういうことか。
薬剤士のあの子なら、危険物と化したミネストローネを見せれば、何らかの打開策を提示してくれるかもしれない。
「んじゃあ俺は朝イチで青天市場行って、例の露店にちょっくら突撃してくる。
正直薬について、あのおっちゃんからもう少し詳しく教えてもらう必要があっからな」
「オーケー。あ、ナディアも一緒に連れてきなさいよ?」
「え、なんで?」
シルヴィアに任せるつもりだったんだけど。
「モネの警告忘れたの? アイツ、あんだけアンタを『溺愛』してんだから、迂闊に離れるとロクな目にならないと思うわよ」
「…了解っす」
こんにちは、黒河ハルです。
貴重なお時間を消費して読んでくださり、とても嬉しいです!
熱い夜 (物理的)を過ごした零人くん。
ナディアを元に戻すために動き出します!
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何卒、なにとぞっ!底辺作家めにお慈悲を…!!




