第613話:ストーカー
☆パピスタ・シモンズsides☆
「お姉さん! 僕とお茶しませんか?」
「いや! そんな奴より俺と行こうぜ!
ちょうど、2区に良いカンジの店が…」
「いやいや、是非とも貴族であるこの私と。
みすぼらしい平民どもにはできん、極上のデートというものを、君に味あわせてやろう!」
「……ハア」
王都レガリア、5区。メインストリート。
主に住宅街エリアが中心の地区。
その出入り口で、アタシは男たちに囲われていた。
どこにでもある、性を秘めた男どものお誘いだ。
以前なら餌が食いついてきたと喜んだものだけど、最近ニンゲンを食べなくなってしまったがために、非常に面倒に感じている。
男を誘惑する術は知っていれど、あしらうのはまだ慣れていない。
ニンゲンたちの目が届かない市外なら殺せばそれで済むけど、あいにくここは街中。
安易に殺人事件など犯しては、せっかく暮らしに馴染んできたレガリアを離れないといけなくなるリスクがある。
せいぜい、男たちが諦めるまで無視するくらいしか思いつかないわね…。
「あなた達! よってたかって一人の女性をいじめるなど、卑怯者のする所業ですわよ!」
「「「!」」」
その時、キーンと響く、耳障りな声音が聞こえてきた。げっ、あの女は…!?
「あ、あなた様はルーシー王女殿下!?
なぜこのような下々が集まる街区に…」
「口を慎みなさい、モリッツ卿。
わたくしは以前にも、あなたのその身分を笠にする言動を注意したはずですわ。
あまり目に余るようなら、不敬罪で牢屋にぶち込みますわよ?」
「ひいっ!?」
「あなた達もですわよ!」
「「やべえ!?」」
女に鋭い眼光を向けられた男たちは、一目散に駆け出して行った。
チッ、余計な真似をしてくれて…。
「まったく、最近の民たちはたるんでいますわ。
もう少しゼクスらしい品格というものを…」
散っていった男たちに一瞥をくれる、理の国の王位継承者の一人…ルーシー・ゼクス・アウトーレ。
いや、ルーシー・アルピィヌが今の名前だったわね。
ま、アタシはこう呼ぶけど。
「口が悪いわね…どっちが身分を笠にしてるのかしら、お武家ムスメ。礼なら言わないわよ」
「まあ、ご挨拶ですこと。
お礼が欲しいために割り込んだとでも?
わたくしはただ、後輩が困ってるさっきの状況を捨ておくなどできなかっただけですわ」
首を振って、偉そうに腰へ手を当てるお武家ムスメ。
相変わらずお節介な女ね。
冒険者に就いてからずっと悪態をついてるのに、よく懲りずに絡んでこれるわね。
「ところで、あなたはなぜ5区に?
パピスタさんのお家は4区にある、冒険者ギルドで借り上げているアパートですわよね」
「別に、暇だからちょっと寄っただけというか。
…って、なんで当然のようにアタシの住所を把握してんのよ」
気恥ずかしくなり、ちょっぴり目線をそらす。
本当のことを言うと、マミヤレイトの屋敷に顔を出してみようと思ったのだ。
アイツ前に『いつでも家に遊びに来ていい』って言ってくれたし…。
「ふむ…? てっきりマミヤさんに会いたくなって来訪されたものかと思いましたわ」
「なっ!? このアタシがそんな女々しいことするわけないでしょ!」
ぐぬぬ、知ったようなクチを!
やっぱりこの女、ほんとムカつくわね!
「そういうアンタこそここに居るってことは、マミヤレイトが目当てで来たんじゃないの?」
「は、はい?」
「ハン! まったく世も末ね。一国の王女様とあろうものが、男の尻を追いかけてるなんて」
わざと煽るように言ってみるも、お武家ムスメはキョトンと首を傾げている。
「マミヤさんならここに居ませんわよ?」
「…は?」
「だってあの人は、今日はシェパードさんとお出かけする予定ですもの」
確信をもった顔で言い切っている…。
あれ、今日って休日よね?
なんでそんな他人の予定まで知って…
「…アンタまさか、ストーカーしてるの?」
「し、してませんわよ! 本人から聞いただけですわ!」
なんか怪しい…。
よく見たら、良いとこ育ちのお嬢様にしては、今日の服装はちょっと控えめというか。
はっきり言って地味ね。
それにたしかストーカーって、できるだけ目立たない服装を選ぶわよね。
「こ、コホン! パピスタさんは『デモニカル・カフェ』というお店はご存知ですか?
今回お二人はそちらに向かわれたのですわ」
「そう…」
店の名前に聞き覚えは無いが、マミヤレイトがここに居ないのならもう用はない。
仕方なく別の街区に向かおうとした瞬間、ガシリと腕を掴まれた。
「お、お待ちなさいなパピスタさん!
話はまだ終わってませんわ!
そのお店はオープン当初から人気で、なかなか予約が取れずにいたんですのよ!
ですが運良く、午前の部のイベント分だけなんとか確保できましたの!」
「は、はあ? だからなに」
「その…もしあなたがよろしければですけど、同伴しませんか?」
「え」
☆☆☆
場所は変わって、3区繁華街。
アタシはお武家ムスメと肩を並べ、件の目的であるカフェへと向かっていた。
「まさか休日にアンタと過ごす日が来るとはね。
ちょっと聞きたいんだけど」
「なんでしょうか?」
「もし今日アタシと会わなかったら、アンタ一人で行く気だったの?」
「それは…」
お武家ムスメは一瞬言葉に詰まり、なぜか眉間にシワを寄せた。
「シェ、シェパードさんが悪いんですわ!
わたくしも行ってみたかったのに!
あの人、ついて来たらわたくしの黒歴史を彼に暴露するってイジワル言うんですのよ!?」
「そ、そう…」
「だからもしパピスタさんに会わなければ、マミヤ邸に伺ってフレデリカさんをお誘いしようかと思っていましたの。あの人たちだけで楽しむなんて、そうは問屋が卸さないですわ!」
歩きながら地団駄を踏むという、器用な真似をする冒険王女。
口ではこう言ってるけど、要は、リベルタに除け者にされたのが悔しくて、わざと出歯亀してやろうってことかしら?
……湿気っぽくて、やな感じ。
蛇女でもここまで陰険な奴いないわよ。
なんだか本格的にストーカーの気質が見えてきちゃったわね。
「…ま、それはわざわざ移住したアタシも同じか」
「何か言いましたかパピスタさん?」
「別に。ほら、とっとと行くわよ」
こんにちは、黒河ハルです。
貴重なお時間を消費して読んでくださり、とても嬉しいです!
パピスタとルーシーのお話です。
ストーカーはダメです。
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何卒、なにとぞっ!底辺作家めにお慈悲を…!!




