第611話:モフラー
「『犬カフェ』? あはは、違いますよパイセン。
この店は『デモニカル・カフェ』ッス。
かわいい〝魔獣〟の子と触れ合える、いまレガリアで話題沸騰中のカフェなんスよ〜」
そして時は現在へ。
リベルタは魔獣と呼称される、見た目は完全に子犬を抱っこしながら、訂正してきた。
いや、コイツらが魔獣でも動物でも、別になんでもいいんだよ。
問題はなんでお前は俺をこんな所に連れてきたのかだ。
「やーん、私の手なんか舐めても美味しくないわよ〜」
「あはは! やめろ! くすぐったいって〜」
周りには、俺たち以外のお客も居る。
よくよく見れば、たしかに犬に限らず、猫や兎など、愛らしい魔獣も走り回っていた。
ちなみにもれなく全部ヤンチャだ。
「ここはッスねー、魔獣たちに思う存分モフれる、働き疲れた大人たちの楽園なんスよ。
いやあ…想像以上に楽しいッスわ。このサ店」
顔を綻ばせ、ひものついたボールのおもちゃで魔獣と遊ぶリベルタ。
オトナのパラダイスねえ…。
俺の想像してたもんと、だいぶ違う気が。
「あの、お前さ…前に言わなかったか?
『デカい』の居るって。俺、てっきり…」
とりあえず俺もリベルタや他の客にならい、一匹の小型魔獣を膝に乗せる。
あ、身体丸めた。
簡単に懐きやがってこのワンころめ。
そんでもって問うと、彼は合点がいったように手を打った。
「ああ〜だからパイセンちょっと不機嫌気味だったんスね。へへ、安心してください。たしか、もうそろそろ…」
リベルタは店内に設置された時計へ目を配る。
時刻は午前十時をちょうど回っていた。
「ごほん! 親愛なる〝モフラー〟の皆さま!
本日も『デモニカル・カフェ』へお越しくださり、まことにありがとうございます〜!」
「「「!」」」
ハキハキとした声で、スタッフのお姉さんのアナウンスが店内に響く。
客一同は魔獣との戯れをストップし、全員スタッフさんの方へ身体を向けた。
〝もふらー〟って…?
「ではでは! 本日、午前の部メインイベント!
皆さんお待ちかね、『ジャイアントもふもふタイム』を始めたいと思いまーす!」
「「「おおー!」」」
パチパチパチと、拍手と歓声が上がった。
今度はジャイア…なんだって?
さっきから聞き慣れん単語のオンパレードだ。
翻訳機能イカレたか?
「今日みなさんが触れ合える子はなんと!
二つの頭がとってもキュート!
元気いっぱいの『二ツ犬』くんに来てもらいましたー!」
お姉さんはそう言って指をパチンと鳴らす。
すると、バックヤードからリードを二つの首に付けた、大型の犬が連れられてきた。
「おお! オルトロスか! 初めて見た」
「お、大きい〜!」
「あ、クリンってした! カワイイ〜♡」
こげ茶毛の大型犬、オルトロス。
ふさふさな尻尾をフリフリ、口元からは犬らしく舌を伸ばしている。
大きなボディのわりには、あざとらしく首を傾げてお客さんを沸き上がらせているし、ずいぶん人馴れしてるようだ。
…あれ魔獣っつか、魔物じゃないの?
冒険者から見たら普通に敵なんだが。
普通に街中に入れてるが、安全面的に大丈夫なんだろうか。
「うわぁ、見てくださいよパイセン!
あんな大っきくてモフモフのワンちゃん、はじめて見たッスよ!」
リベルタが珍しくはしゃいでいる。
警察が何も言わないなら良いのか…?
当の魔物は、頭が2つある分、舌も2つ出して大人しくおすわりしている。
うーん? あの二ツ犬、俺どこかで見たような…
「皆さんお気に召されたようで何よりです!
しかしこの子は他の子とは違う、あるスペシャルな特技を持っています! それは「ああー!? レイトくんだ!!!」」
「「「!?」」」
突如、何者かが俺の名を叫んだ。
今のはリベルタじゃない。他の客…?
「ちょ、ちょっとアーロン!
合図するまでまだ喋っちゃダメって…」
「アハハッ! レイトくーん!」
「あっ!?」
再び俺を呼ぶ声。
それは、たった今現れた魔物のオルトロスから発せられたモノだった。
そしてそいつは、首にリードを付けられてるのもお構いなしで、俺の前まで一目散に駆け寄ってきた。
「えっ、えっ!? パイセン、この子いまアンタの名前を…というか、さっき普通に人語を喋ってませんでした!?」
「久しぶりっ! 僕のこと分かるよね!?」
「…っ!? やっぱ喋ってるッス!?」
突然やってきたオルトロスの行動に、目を白黒させるリベルタ。
他の客たちも同様の反応だ。
うーん、オルトロス、オルトロス……あ。
「思い出した。お前、裏武闘会に居たワン公だな。久しぶりだな」
一時期、パピスタと行動してたヤツだ。
とても温厚な性格で、当時はいろいろ助けてもらったな。
「覚えててくれたんだ! また会えて嬉しいよ〜!」
「ああ。それよりなんでお前までレガリアに…ぶあぶっ!?」
「クゥーン♡」
オルトロスは身体を押し付けて、俺におもいきりのしかかってきやがった!
しかも顔までベロベロ舐められた。
うええ、ベタベタ…いきなりなにしてくれてんじゃい!
「あー! ちょ、パイセンずるいッスよ!」
「わー!? す、すみませんお兄さん!
こらアーロン! 早く離れなさい!」
こんにちは、黒河ハルです。
貴重なお時間を消費して読んでくださり、とても嬉しいです!
スター・スフィア最初の二つ首キャラ? の再登場です。
魔獣カフェ行ってみたい…
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何卒、なにとぞっ!底辺作家めにお慈悲を…!!




