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スター・スフィア-異世界冒険はおしゃべり宝石と共に-  作者: 黒河ハル


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第104話:囚われの蛇女《ラミア》

〔お待たせ致しました!

第6試合、4-706ペア最終ラウンド…。

いよいよ開始となります!〕


「「「おおおー!!!」」」


「エルフー!

俺はお前に大量に賭けたからな!!」


「死ねぇ! 人族ぅぅ!

早く貴様の臓物をぶちまけろ!!」



三度(みたび)、アリーナへ入場。

アナウンサーが試合開始のアナウンスをすると、観客どもは一斉に歓喜の声を挙げ、会場のボルテージが一瞬でマックスになった。



「チッ、相変わらずうるさいお猿さん達ね」


「ホントな。

まあそれもこのラウンドで終わりだ」



これから天国から地獄になるとも知らずに…。

今のうちにせいぜい騒いでろ。



〔そして!

今回の試合には『裏武闘会(ファイトクラブ)』の創設者であり、元締め…。

『ジョナサン・プルーロ』会長が直々に来てくださっています!

皆さま、盛大な拍手を!!〕


パチパチパチパチパチパチ!!


観客の拍手と共に、アリーナの中央…その真っ直ぐ上の天井からリフトが舞い降りてきた。

リフトには特殊な風魔法が掛けられているのか、空中に浮いている。


そしてその台には、散々煮え湯を飲ませてくれた悪党ジョナサンが拡声機の魔道具(アーティファクト)を携え突っ立っていた。



「……(ギリッ)!」


「…レイト」



フレイが俺の手を握る。

分かってるよ、まだその時じゃない。


気取ったような蝶ネクタイに帽子…。

小柄な身長を気にしてるのか、俺たちを警戒してるのかは知らんが、リフトの位置は観客よりもずっと上に位置している。

いや…ただ人を見下すのが好きなのかもな。


ジョナサンは咳払いを1つうち、拡声機を口元へ近づけた。



「ごきげんよう、クラブの皆さま方。

今宵も我が裏武闘会(ファイトクラブ)で楽しんでいただき誠にありがとうございます。

…さて、昨今お隣の『裏市場(ブラック・マーケット)』では王都の盗賊団による襲撃と、王国騎士団による検挙で壊滅するという痛ましい事件が起きました。

しかし、この裏武闘会(ファイトクラブ)では安心してお過ごしください!

皆さまの近くにおられる我が警備の守衛はもちろん、アリーナの設備に関しても最高水準の技術でおもてなし、そしてお守りいたします!

さらには……」



…ったく、選挙カー並にうるせぇ声だな!


長々と『挨拶』を垂れるジョナサン。

すぐ終わる気配はない。

よし…フレイの得た情報通りだ。



「今よ、レイト。

観客と警備の目はジョナサンに向けられているわ」


「了解だ。

怪しまれたらウンコしに便所行ったとか、テキトーにごまかしててくれ」



そう言いつつ、右手にエネルギーをかき集める

もう本当に残りわずかだ。

慎重に使わないと。



「…ハァ…、なんで私こんな男を…」


「え、なに?」


「何でもないわ。早く行きなさい」


「おう! すぐ戻るからな」


ブン!


俺は2ラウンド目にこっそりと作成した座標…魔物の門の向こうへ転移(テレポート)した。



☆囚われの蛇女(ラミア)sides☆



薄暗く冷たいタイル。

四方を鉄格子に囲まれた無機質な壁。

その中にすし詰めに横たわる魔物たち…。


それがアタシの今の『家』。


もちろん自ら望んでこんな所に来るわけがない。

連れ去られたのだ…『ニンゲン』に!


数ヶ月前、屈強なエルフが住んでいる村が西の地方にあるという噂を聞き、アタシはその地域へ訪れた。

強い男のニンゲンは栄養価が高く、とても美味しい…。


しかしガルドの森で出会ったのは、少し叩けば壊れてしまいそうなヒョロヒョロしたガキの男だった。

驚くことに黒髪という珍しい毛色に加えて、身体から魔力(マナ)がまったく感じられなかった。


どんな味がするのか興味を持ったアタシは、誘惑して捕食してやろうと思った。

しかしガキを誘惑していると、これまた珍しい喋る蒼い宝石と背が高い女エルフに邪魔をされてしまう。


オマケにガキからはアタシの自慢の美肌を斬り付けられる始末…。

散々な結果に終わった。


不幸はまだ続き、次の獲物を求めて『亜人の国(ヘルベルク)』へ着いた途端、武装したニンゲン共に捕まってしまう。


目覚めるといつの間にかこんな地下に幽閉されていた。


それからはアリーナで代わる代わるニンゲンと闘わされる毎日…。

魔物が殺されると、すぐに新しい魔物が補充される。


アタシ達はニンゲンのオモチャ。


もうこれから先はずっと、闘って闘って…闘い続けて過ごすしかないのだろう…。



「大丈夫? 蛇女(ラミア)のお姉さん。

顔色が悪いんじゃない?」


「うるさいわね、アタシは元からこの肌色よ。

アンタこそ毛並みがボサボサで調子悪そうね」


「まったくだよ!

ああ…こんな所早く出て、日向ぼっこしたいな」



寝そべったアタシの前に、コゲ茶毛の二ツ犬(オルトロス)が座り込んだ。

犬型の魔物にしては珍しく、人の言葉を流暢に操る変な奴だ。


私たち蛇女(ラミア)がニンゲンの言葉を使う時は、大抵は人間を捕食するための武器として扱うものだけど、この犬はどうやら私たちとは違う理由で覚えたみたい。



「ねえ! ここから出たら何がしたい?」


「…またその質問? 何回同じこと聞くのよ」


「良いじゃん!

目標は口に出した方が叶うって、ご主人サマが言ってた!」



頭が2つがあるため、舌も2つ出して尻尾を振る二ツ犬(オルトロス)

ほんといつも元気な犬っころねアンタは…。



「『お腹いっぱいニンゲンを食べたい』よ。

はい、これで満足?」


「ニンゲンを食べちゃダメだよ!

ニンゲンはとても優しい生き物なんだから!」


「ホラ、いつもこう言われるからアタシ言いたくないのよ。

そもそもこんな牢屋に閉じ込めたのはそのお優しいニンゲンよ?」


「それでもダメったらダメッ!」


「ハァ…」



この子とは毎回こんな話を繰り返している。

他に会話ができる魔物が居ないため仕方ない。



「僕はね!

ご主人サマに頭を撫でてもらいたい!

ボール投げで遊びたい!

一緒に川で泳ぎたい!

あとはね……」


「ハイハイ、それもう30回以上聞いたわよ…」



嬉しそうに前脚で自分の頭に手を乗せている。


ニンゲンの中には鳥の魔物のクルゥみたく魔物をペットにする奴もいるみたいだけど、二ツ犬(オルトロス)を飼ってた奴ってどんなニンゲンなのかしら?


そのまま雑談をしていると、1人の頑丈な鎧を付けたニンゲンが牢屋の鍵を開けた。



「ただ今より第6試合を開始する!

1ラウンド目は蛇女(ラミア)

それと犬頭(コボルト)! 貴様らの出番だ!」


「…………分かったわ」


「ワン! ワン!」



怒鳴るような声で命令を下すニンゲン。

このアタシがニンゲン如きに従うなんて…。

はっきり言って屈辱でしかない。


クソ…首輪さえ無ければこんなヤツ!

警備のニンゲンに逆らって頭を吹き飛ばした魔物を何体も見ている。


だからアタシは苦汁を飲み込み、言われるがまま闘い続けるしかない。



☆☆☆



第1ラウンド終了後。


エルフの子に叩きのめされ、満身創痍になった犬頭(コボルト)と共に、牢屋へ再び入れられた。

次のラウンドまで30分だ。



「おかえりー、蛇女(ラミア)のお姉さん。

あれ、どうしたの?

珍しく嬉しそうだね?」


「ねぇ、みんな聞いて!

ここから脱出出来るかもしれないわよ!」



今日の第1ラウンドの対戦相手はなんとガルドの地方で出会ったあのクソガキだった!

最初は殺してやるつもりだったけど、どうやらあちらもアタシと同じで囚われているらしい。

しかも仲間の人質付きで。


そして、アタシ達の首輪を外すことを条件に協力を持ちかけてきた。


ニンゲンなんて…しかもアタシの肌を傷つけた男と協力するなんて…いつもだったらそんな選択絶対しない。


だけどアタシは…〝自由〟が欲しかった。


長い間地下へ幽閉され続け、陽の光が恋しくなったのだ。

またのびのびと森や街で暮らして、お料理された獣肉や誘惑したニンゲンを食べたい…。


そのためならエサであるニンゲンとだって手を組んでやろうと思った。


そして、その(むね)を警備のニンゲンに聞こえないようみんなに伝えるが、反応は微妙だった。

というか、そもそもアタシの言葉を理解してるヤツなんて何体居るのか…。



「ニンゲンと協力!?

やるやる! 僕も手伝う!」


「シャアァァッ!!」


「バカっ! 静かにして!」



反応をしてくれたのはこの2体だけだ。


あとの魔物たちは、ほとんどが首だけを向けると、興味無さそうに再び横になった。


因みに犬頭(コボルト)の奴はエルフの子に問答無用で従わされて逆らえなくなったみたい。

シュンとうなだれて体育座りをしている。


フン、いい気味だわ。


耳を貸してくれたのはニンゲン大好き二ツ犬(オルトロス)

それと、何故かいつもアタシの近くに居座る蛇頭(ナーガ)だ。


しかし、蛇頭(ナーガ)はアタシの話を理解しているのかしていないのか、ずっと威嚇をして怒っている様子だった。


その後、何とか宥めようと必死に声をかけ続けるがまるで効果がない。


ああもう、どうしろってのよこんなの…。



「シャアッ!!」


「うーん、困ったねぇ…。

蛇頭(ナーガ)くん、ずっと怒ったままだよ…」


「まあ、どっちみちこいつはコミュニケーションが取れないんだし、作戦はアタシ達で進めるしかないわね」


「うん、分かっ…」



喋る途中で二ツ犬(オルトロス)がピタリと固まった。

どうしたのかしら?



「ちょっと? どうしたのよ」


「シッ…!」



口元を前脚で押さえられた!

いきなり何するのよ!


脚をはたき落として睨みつけると、二ツ犬(オルトロス)の4つある耳がピクピクと動いていた。


もしかして聞き耳立ててるのかしら?



「……2人とも。

良いニュースが入ってきたかも」


「え?」


「警備のニンゲンが会話してるのを聞いたんだ。

最終ラウンドにジョナサンが来るってさ」



ジョナサン?

ああ、私を攫ったニンゲン達の筆頭だったわね。

あいつは嘘つき独特の言葉しか吐かないからよく覚えている。

でもなんでそれが良いニュースなんだろう?



「あのニンゲンって、試合開始前にいつも偉そうに上で喋り続けてるよね?

その隙に蛇女(ラミア)さんが気に入ってるその黒のニンゲンを忍び込ませること出来ないかな?」


「別に気に入ってなんかない!

でも…確かに良い考えね…。

よし、次のラウンドで伝えとくわ!」


ガチャン


グッと拳を握ったタイミングでまた警備がやってきた。

あら? もう30分も経っていたのね。



「第2ラウンドだ!

む…? お前たち、体力がありそうだな?

よし、そこの2匹! 貴様らが第2の魔物だ!

さっさと出ろ!」



しまった…。


アタシの近くに居たとばっちりで二ツ犬(オルトロス)蛇頭(ナーガ)も参戦することになってしまった。


二ツ犬(オルトロス)は良いとして、こっちの蛇頭(ナーガ)が問題だわ…。

ずいぶん興奮気味だし、下手したらあいつ殺しちゃうかも…。



蛇女(ラミア)さん。

こうなったら情報は僕が伝えるから、蛇頭(ナーガ)くんはお願いしてもいい?」


「は? なんでよ!

アンタがこいつ何とかしてよ!」


「いや…僕の勘だけど、蛇頭(ナーガ)くんはあなたに関して怒ってそうな気がするんだよね…」


「え? それってどういう…」


「貴様ら! モタモタするな!

頭を吹っ飛ばされたいか!?」


「はーい、今行きますよ〜。

じゃ、お願いねっ!」


「ちょっと!? なんでアタシが…ハァ…」


「シャアアッッ!!」



こんな調子で本当にここから脱出できるのかしら…。

もし、計画がバレたらこの首輪が…。


アタシは不安を抱えながら、興奮する蛇頭(ナーガ)の横に付き添い、第2ラウンドへ向かった。



☆☆☆



そして現在。


あれほど怒り狂っていた蛇頭(ナーガ)が急に大人しくなった。


スゴい…。

牙が抜けると、どんな凶暴な魔物でも大人しくなるっていうのは本当だったのね。


蛇頭(ナーガ)の血みどろになった横顔を見てみる。



「シュル?」


「あ…なんでもないわ」



まあ、それは冗談として、本当にスゴいのはあの黒いガキだった。

あいつは蛇頭(ナーガ)の怒りを全力で受け止め、そして最後はお互いを認め合った…。


ニンゲンなのに…。


どうしてあの男は私たち魔物にあそこまで熱心になれるのかしら?


私も死んでしまうかもしれない不安から、つい首を締め上げてしまったというのに。


だけどあいつはまるで気にしないどころか、優しくアタシを…だ、抱いて…!



「おーい、蛇女(ラミア)さん?

顔色すごく赤いけど大丈夫?」


「は!? な、なによ…。

別にあんな男なんかどうでもいいわよ!」


「え? なんでレイトくんが出てくるの?」


「レイ…それはあいつの名前?」


「うん! マミヤ・レイトって言うんだって〜。

おかしな名前だよねっ!」



2つの首を可愛く傾げる二ツ犬(オルトロス)


〝マミヤレイト〟


それがあの〝イカれた〟男の名前…?


マミヤレイト…マミヤレイト…マミヤレイト…


男の顔とその名前を思い起こすと変な感覚だ。


殺したい、喰らいたい、引っ掻きたい…。


そんないつものニンゲンに対する食欲と殺意の中に、もう1つ…新しいほんの小さなナニカの欲が生まれていた。







………………………………………………………







アタシは、あの男を、×××たい…?????







パン!!!


「なによ…! これ…!?」


「ええ!? ちょっと、大丈夫?

どうして自分をビンタしたの?」


「へ…?」



気づけば頬がジンジンと熱い。

え…アタシいま自分で傷つけたの?

アタシの肌は何よりも大事なのに…?



「……それより次のラウンドまであと何分?」


「えっ? ああ、うん…。

ええと、大体あと5分くらいかな?」


「……そう」



落ち着きなさいアタシ…。

これ以上アイツのことを考えるのはよそう。

今は作戦のことを考えないと。



☆☆☆



5分後。


静かに待機していた二ツ犬(オルトロス)が急に立ち上がり、鼻と耳を利かせ始めた。



「みんな…! レイトくんが、助けに来たよ!」


「………っ!!」


「シャアッ!!」


「ワン!」



明らかにいつもと違う気配がこの場所へ来ていることはアタシでも感じ取れた。


二ツ犬(オルトロス)の言葉に、周りにいた魔物たちも一斉に身体を起こし始める。


来る…あの男が、来る!



「…っ!?キサマ! 何故ここへいる!?」


「くっ、いつの間に入り込んだ!?」


「くたばれ! オラァァ!!」


「ガッ…!!」


ドン!! ゴッ!!


鉄格子の向こうで争う音が聴こえる。

ほ、本当に来た…!



「ハァ、ハァ…。

えーと、牢屋の鍵は…お、みっけ!」


ガチャン


アタシ達を監禁している牢屋の扉が開いた。


そして中へ入ってきたのは憎々しい黒い人族、〝マミヤレイト〟だ!


「おお…すげ、魔物がてんこ盛りだ」



突如、牢屋へ侵入してきたニンゲンに他の魔物たちは興味を示した。


しかし、襲うことはしない。

そうすれば首輪が爆発して死ぬとみんな分かっているから。


マミヤレイトはキョロキョロと首を動かし、アタシを見つけると、笑顔で走り寄ってきた。


ドクン…!


その顔を見た途端、心の臓が跳ね上がった…!


ゴソゴソと懐から1つの鍵を取り出して、アタシに見せつけながらその言葉を吐く。



「お待たせっ!」








こんにちは、黒河ハルです。

貴重なお時間を消費して読んでくださり、とても嬉しいです!


ラミアの心情を少しだけ書くつもりが、1話分になってしまいましたm(_ _)m

話が中々進まず申し訳ない笑


「続きを読ませろ!」と思った方は、ぜひブックマーク、並びに下の☆を『5つ星』お願いします!

何卒、なにとぞっ!底辺作家めにお慈悲を…!!


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