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スター・スフィア-異世界冒険はおしゃべり宝石と共に-  作者: 黒河ハル


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第96話:〝裏〟カジノ

アシュリーは咳払いを一つ打つと、上目遣いでこんなことを言ってきた



「それでは情報をお伝えするにあたって、私の身の上話を少し混ぜることになりますが、できる限り手短にまとめますので、また飛びかからないでくださいねー?」


「…ゔっ…、わ…分かってるよ。

アシュリーはイジワルっていうか、Sなんだな」


「いえ、どちらかといえば、私は攻めるより攻められる方がゾクゾクして…」


「ああもう!

そんなのいいから早くしなさい!

時間が無いって言ってるでしょうが!」



フレイはプンスコ怒りながらアシュリーを急かした

そうだ、次のラウンドまで時間が惜しいんだ

ふざけてる場合じゃない



「まず、『裏賭博場(ブラック・カジノ)』についてですが、そもそも本来の支配人はジョナサンではありません」


「え!?

でも、あいつ自己紹介した時は支配人って…」


「近年、支配人の座を降ろされてしまった哀れな亜人がいるのです。

名前は『グエル・ノーストン』。

〝裏〟カジノと呼ばれる前の支配人です」



裏と呼ばれる前…ということは、元々あのカジノは合法な賭博場だったのだろうか?



「支配人が代わる前のカジノはそれはもう、一攫千金を夢見た者たちで賑わっており、活気に満ちた素晴らしい遊び場だったのです。

あの頃の私もまた、ディーラーとしてお客様とのカードを介した交流を心から楽しんでいました」



そう語るアシュリーの目は輝きながらも、どこか切なく、遠くを見ているようだった

…まさか、ザベっさんとの勝負はワザと負けたのではなく、本気で挑んでいた…?



「しかしある日、当時新興貴族だったジョナサンがカジノを買収し、あろうことか経営権までグエル様から奪い取ったのです」



アシュリーは拳を握った

その拳に怒りを孕んでいることは、一目瞭然だ



「そこから彼は私たちのカジノをやりたい放題に改造してしまいました…

誰でも楽しく遊べる低レートのテーブルを撤廃し、あくまでカジノに利益がいくようにイカサマを行うことを全ディーラーに命じたのです」



なんだと!?

そんなのぼったくりと変わらないじゃないか!



「いつしかカジノは『裏賭博場(ブラック・カジノ)』と呼ばれ始め、客層も裏社会で生きる者たちだけになっていきました…」



彼女の声のトーンが徐々に落ちていく



「そして彼は更なる収益を求めて、王都の地下に『裏武闘会(ファイトクラブ)』を設立したのです。

攫った人間と魔物による殺し合いのショー…

開催してまもなく、クラブは瞬く間に莫大な金を生み出す、新たな娯楽へと昇華しました」


「それで、カモにされた私たちはまんまと連れ去られたってわけね」



フレイが呆れたように言うと、アシュリーは申し訳なさそうに縮こまった

フレイたちに関しては別にアシュリーのせいじゃない



「…ちなみにそのグエルさんとやらは、どこに?」


「あなたのお仲間と同じですよ。

ジョナサンの秘密部屋に監禁されているのです。

私は…彼を助け出し、陽の光に恥じない本来あるべきカジノの姿へ戻したいのです」


「アシュリー…

アンタ、もしかしてそれが目的でレイトをここへ?」



フレイが問いかけると、アシュリーは苦笑いで頷いた

…そういう事情か



「私はジョナサンへ従順に従うフリを続け、ついに『秘密部屋』の場所を突き止めました。

ただ、その場所は『裏武闘会(ファイトクラブ)』の人間でなければ辿り着けない…

ディーラーのキャリアだけを積み続けた私にはクラブへ転属することが不可能だったのです。

そこへ『闇医者(ブラック・ドク)』を必要とするあなたたちが現れた…」


「なるほどね…利害の一致ってわけだ。

でもそれなら、あんたはどうやってここまで来たんだ?」


「この『裏武闘会(ファイトクラブ)』は、王都にいくつかある裏カジノの会場と道が繋がっているんですよ。

レイト君たちがVIPルームが入るのを確認した後、私は『貴族街』とは別の使われていないカジノからこちらへ侵入しました。

上手く合流できて良かったです♡」



テヘッ、と可愛く舌を出すアシュリー


ム、ムチャしやがる…

もしバレたらタダじゃおかなかったろうに



「そして現着後、レイト君とセンチュリー様の居場所を探っているうちにそこの彼と出会いましてね」


「う、うっす…

俺からしたらあんたは救いの女神ですよ…

あやうく何も手がかりを得られずに殺されるとこでしたぜ…」



その『彼』はビクビクしながら俺を見てくる

よっぽど俺が怖いみたい



「レイト君って大人しそうな見た目なのに、結構ワイルドなことしてますね。

彼、あなたがいかに恐ろしいか熱弁してましたよ?」


「あっ!?ちょっと!!

ち、違うんすよ、アニキ!

ちょいと口が滑っただけで…」


「誰がアニキだコラ!

テメェみたいな薄汚ぇチンピラを舎弟にした覚えなんざねぇ!」


「ヒィィ!!」



少し凄むと彼はしゃがんで怯えてしまった

これじゃあ、俺がチンピラみたいだ…



「そうだわ、ついでに聞くけど、アンタ私たちの他の仲間の居場所は分かるの?

私と同じエルフの男とか人狼(ウェアウルフ)とかなんだけど」


「え…?は、はい!

えっと、最近入ってきた闘技者のことっすよね…」



男はポケットから汚い手帳を取り出した

あれはもしかして闘技者のリストか?



「4-703ペア、

ジオン・オットー及びシルヴィア・ゴードン。

控え室は東エリア。

4-704ペア、

テオ・マスカット及びナディア・ウォルト。

控え室は西エリア。

4-705ペア、

リック・ランボルト及びエリザベス・センチュリー。

控え室は南エリア。

そして、俺らのいる控え室が北エリアです」



キレイに四等分してくれちゃって…

こりゃあ合流するのは難しそうだな

あ、そういえば…



「あいつらはもう試合終わったのか?」


「は、はい。

全ペア無事に3回目の最終ラウンドまで勝ち残りました。

アニキ達のペアで第6試合は終了です」


「そっか!さすがだな。

…あともう1回『アニキ』つったらぶん殴る」



とりあえず無事みたいだし一安心だ

それにあのデカい門番も居るし、大した怪我もしてないだろう



「改めてあなたにお願いしたいと思います。

どうかグエル様を救い出していただけませんか?

その見返りに『闇医者(ブラック・ドク)』の協力を必ず取り付けて見せます」



アシュリーは俺の手を握り、真剣な眼差しで依頼をしてきた

正直まだ巻き込まれた感は否めないが、これ以上ゴネても仕方がない


俺は頷いて、手を離した



「その人って武器庫にいる門番のことだよな?

なんかすごい口下手だったけど…」


「おや、もう気付いていましたか。

彼女と会話を交わせたのですか?」


「ストレートに『闇医者?』って聞いたら、はぐらかされた」


「うふふっ、やはりそうでしたか。

彼女はその名を嫌っていますからねー」



おかしそうに笑うアシュリー

まさかあの人と友達なんだろうか?


ま、それはとりあえず置いといて、まずは目先の仲間の奪還からだ



「アシュリー、俺たちは魔物とも協力してここから脱出する計画を立ててんだ。

秘密部屋はどこにある?」


「まっ、魔物と!?

え…どうやって協力したんですか?」


「第1ラウンドでたまたま知り合いが対戦相手だったんだ。

んで、聞けばあいつらも俺たちと似た状況だったもんだから、そのまま取引してね。

今ごろ向こうも有志を募ってるはずだよ」


「す…すごい…!

あ、秘密部屋でしたねっ。

その場所はですね…」



アシュリーは持参した『裏武闘会(ファイトクラブ)』の見取り図を見せてくれた

えーと…ここが北エリアだから…

なるほど、結構入り組んでいる所なんだな


マップを目でなぞっていくと、一つだけ赤くマーキングされた場所が記されていた


そうか、秘密部屋はあそこだったのか…!


俺は見取り図を受け取り、構造を必死に頭に叩き込んだ


今回、武器も含めた数々の持ち物は全てジオンの『仕立て屋』に預かってもらったのだ

テオから裏カジノで抜き打ちで持ち物検査をされてしまう場合があると聞いていたからね


貴重品のスマホも預けたので、今のうちにこのマップを頭に焼き付けるしかない



「なるほどな…

裏武闘会(ファイトクラブ)』の人間しか辿り着けないって言った意味が分かったぜ。

あんなとこに部屋があったのか…」


「あ、これレイトの世界だと『灯台もと暗し』って言うんじゃない?」



おお!フレイ、良く分かったな

まさにそれだ

よし、仲間の無事と人質の場所も分かった

あとは魔物どもの件だな



「アシュリー、俺たちは秘密部屋に何とか辿り着いてみせる。

その間、他の仲間にもこの見取り図と情報を伝えてもらえるか?」


「ええ、もちろんですよ!

センチュリー様にも謝罪をしなくてはなりませんからね」


「そんでお前にもひとつ『お願い』をしたいんだけど…

もちろん聞いてくれるよな?」


「え…っ!?ま、またすか!?」



『彼』はビクッと身体を震わせた

猫の手も借りたいほどだからな、まだまだ協力してもらうぞ



「魔物たちに付けられているあの『首輪』。

あれを外す方法を調べて欲しいんだ。

もし、しくじったら…」


「こ、殺すんスよね!?

もちろん、や、やりますよ!!」


「おいおい、俺だって鬼じゃない。

何度もそんな酷いことするわけないだろ」


「へ…?」


ポン


俺は爽やかな笑顔を作りつつ、彼の肩に手を置いた



「失敗したら、最終ラウンドの時に友達の蛇女(ラミア)へお前を差し出すだけだぜ!」


「やっぱり殺す気じゃないですかぁぁ!!」






こんにちは、黒河ハルです。

貴重なお時間を消費して読んでくださり、とても嬉しいです!


今回は裏と呼ばれるまでに至ったカジノに関するお話です。

ありきたりだったかな?笑


「続きを読ませろ!」と思った方は、ぜひブックマーク、並びに下の☆を『5つ星』お願いします!

何卒、なにとぞっ!底辺作家めにお慈悲を…!!


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