第95話:憎き情報提供者
「痛てて…
フレイ、怪我してないか?」
「大丈夫よ。
私よりあなたの方が酷い様子じゃない」
フレイに肩を貸してもらいながら、入場した門を潜った
…ったく、あの女め…
『演じろ』って言ったのに、普通に攻撃当ててきやがって…
まあ、おかげでジョナサン共の連中は欺けたとは思うけど…
そして、武器部屋に入るなり、あのデカい門番が立ち塞がった
げっ!?まさか、計画が漏れた!?
「第1ラウンド、ご苦労だ。
そこのベンチに着席せよ。治療を開始する」
「「ええ!?」」
俺とフレイは顔を見合わせた
俺たちは使い捨ての奴隷みたいな扱いだと思ったのに、わざわざ治療してくれんの!?
「ず、随分お優しいんだな?
あんたまさか闘技者全員を治療してるのか?」
「当然だ。
ラウンドを生き残った闘技者は『回復』を受ける権利が発生する。
…たとえ、闘技者の職業が『聖教士』だとしてもだ」
「「!!」」
この人…
まさか、シルヴィアのことを言ってるのか?
アイツらの行方を知ってるのかもしれない
俺とフレイは手錠を再び装着されたあと、指定されたベンチに腰掛け、お互いに小声で話し合った
(ねえ、口ぶりからしてシルヴィアの事よね?)
(多分な。
こんな地下に『聖教士』なんてそうそういるわけねぇし…)
(でもああいう風に言ったってことは、あの子達も無事って考えてもいいのかしら?)
(ああ、きっとそうだ。
フレイ、俺が探り入れてみる)
(分かったわ)
会話が終了したタイミングで、デカい門番は俺たちの前に立った
そして、両手をそれぞれに向ける
「『回復』」
パァァ…
短く魔法の名前を呟くと、光が俺たちを包み込む
…っ!?
マジか!もう痛みが無くなった…
シルヴィア以上に回復する速度が速い…!
待て…まさか…
この門番は…!
「完了。
これより30分のインターバルを設ける。
4-706ペアは控え室へ帰還、待機せよ」
あっ!?
やっべ!話すタイミングが…!
フレイが何やってんのよ!という目を向けてくる
…ああもう!しょうがねぇ!
こうなったらやぶれかぶれだ!
「ブ…『裏医者』!
聞いたことない?」
「……!」
俺らの前から立ち去ろうとした大きな背中に叫んだ
ピタッと、門番は歩みを止めた
この反応…
「…知らないな。
もう一度宣告する。
お前たちはインターバルを受けよ。
これ以上会話は行わない」
☆☆☆
「あんた何で仲間の方を聞かなかったのよ?
今は医者よりそっち優先でしょ」
「焦っちゃってね…ゴメンゴメン」
武器部屋を出ると、俺が脅した男が今にも泣きそうなツラで待っていた
…まさか、秘密部屋見つけるの失敗したのか?
「お、おかえりなさい…
ええと、控え室まで、お連れしますんで…」
「その前にまず聞こうか。
秘密部屋、もちろん見つけたよな?
偶然だけどアクシデントもあったし、時間は充分与えられたはずだ」
少し声を低くして尋ねると、男はビクッとしながらも小さく頷いた
なんだ見つけたんじゃん
「どこだ?」
「え!?
いや、あの…『部屋を知ってる奴でもいい』って仰ってたんで、その人を連れて来たんですが…」
「あれ?
フレイ、俺そんなこと言ったっけ?」
「さぁ、どうかしら?
そいつが都合よく解釈したんじゃない?」
「ええええ!?」
俺たちがすっとぼけると、男はボロボロと涙を零し始めた
ちょっと意地悪だったか
「冗談だ。
そいつはどこで会える?」
「な、なんだ…焦ったぜ…
え、えと、控え室に呼んであります!」
「分かった。じゃ、早く行こう」
時は金なり
インターバルは30分しかないからな
僅かな時間で作戦を組み立てないと
☆☆☆
「手錠を外しますけど…
暴れないでくださいね?」
「…?うん」
再び控え室ならぬ牢屋へ戻ると、その秘密部屋を知ってるという人物は俺たちを待っていた
なぜか牢屋の中で
そしてその女は、今俺がもっともブチのめしたいと考えている奴だった…ッ!
ドカッ!!
「「!?」」
「ガハッ!!
お、お元気そうで何よりです、レイト様」
「テメェ…よくもいけしゃあしゃあと…!」
その人物はザベっさんと『勝負』を演じ、俺たちをここへ招き入れたと言っても過言ではない事をしてくれた犬人のディーラーだった
顔を見た途端、俺はディーラーを地面へ押し倒した
コイツに唆されたせいでルカは…ザベっさんは!
「ちょ、ちょっとレイト!
いきなりなに襲ってんのよ!
落ち着きなさい!」
「あ、あわわ…
やべぇ、殺される…」
ガシッ!
フレイは俺を女から引きはがそうと羽交い締めにしてきた
単純な筋力ではフレイに負けるので、いとも簡単に身体の自由を奪われる
…クソッ!!
「ふう…あなたの気持ちは分かります。
ですが、私は約束通り、あなた方がお望みになられた情報をお渡ししたと思いますが?」
「ああ、そうだな!
だが、テメェのせいで仲間は霧散、オマケに相棒も人質に取られたよ!
どう落とし前付けてくれんだ!」
「今回はその事も含めてお話に参ったのです。
どうか少し落ち着いて話を聞いていただけませんか?」
頭では分かっている
今ここで暴れても何も解決しないってことぐらい
だけど、こいつのせいで相棒と離れ離れになったと考えるだけで…怒りがグツグツ煮立つ!
「ふざけ…」
「レイト!」
パン!!
「うっ!?」
フレイが、正面に立って思い切りビンタをしてきた
ジンジンと頬が熱くなるのを感じる
「しっかりなさい。
あんたはルカの契約者でしょ?
ここにあの子が居たらきっとこう言うわ。
『女の話は最後まで聞くものだぞ?』」
「…あ…」
…言いそうだ
それもため息をつきながら
ルカと最後に会話した時、俺はあいつと喧嘩をしてしまったから、こんなに焦っているのかもしれない
宝石の相棒なら…
ルカの隣に立つ男なら…
確かにこんな状況であたふたしてちゃカッコ悪いよな
ボゴッ!
「「「!!」」」
俺は拳を作ってフレイから引っぱたかれた頬を殴った
…血の味がする
カッコつけ過ぎた
もうちょっと手加減すれば良かった
「…さっきは悪かった。
アンタの名前聞いてもいいか?」
俺は尻もちをついたままのディーラーへ手を差し伸べた
すると彼女はポカンとした顔から、クスッと笑い出した
「『アシュリー・ポッツ』と申します。
よろしくお願いします、レイト様」
「『様』は要らない。
よろしくアシュリー」
「そうですか?
では改めて…よろしくね、レイト君」
彼女の手を握り、上に引き上げた
アシュリーはパッパッと身体についた砂埃を払い、首元のリボンを整えると、ジーッと俺の顔を見てきた
な、なんだ?
「えっと、どうした?」
「その…あそこまで乱暴に男性から押し倒されたのは初めてでしたので…
私の『初めて』を奪った殿方のお顔をしっかり記憶に残そうと思いました」
「はあぁ!?
ちょっと、そんなつもりなら今度は私が押し倒してやるわよ!」
「おい待てフレイ!落ち着け!!」
なぜかフレイが怒った
こいつが怒る要素なんて別にないと思うけど…
むしろ、無抵抗の女に手を上げるさっきの俺は…傍から見たらただのクソ野郎だった
罪滅ぼしじゃないが、それくらい甘んじて受けよう
「いくらでも見てくれても構わないけど、インターバルの時間は限られているからな…
話の方も聞かせてくれながらだと助かる」
「うふふ…レイト君は男気があるんですね。
それなら今度、私をお食事にでも連れてってください。
今から話す情報料として♡」
「ああ、お安い御用だ。
それじゃあ…」
「ダメに決まってるでしょ!!
なんでアンタはすぐ女と約束を取り付けるのよ!」
完全にさっきと感情が逆転してしまったフレイを何とか宥めつつ、アシュリーから様々な情報を得た
ルカを助けるためなら…
俺はどんなことでもやってみせる
こんにちは、黒河ハルです。
貴重なお時間を消費して読んでくださり、とても嬉しいです!
フレデリカに喝を入れられるお話です。
シリアス回なのにシリアスに完全に振り切れない所がまだまだ未熟と実感しております泣
「続きを読ませろ!」と思った方は、ぜひブックマーク、並びに下の☆を『5つ星』お願いします!
何卒、なにとぞっ!底辺作家めにお慈悲を…!!




