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婚活中の貧乏子爵家令嬢ですが、小料理屋を開業したら幼馴染みが溺愛してきます  作者: 穴澤 空@ドアマットヒロイン1巻発売中!


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3 婚約破棄なんてするバカ本当にいるんだ?!

「ルルレリア・リオ・カールレイ! 俺は貴殿との婚約をここに破棄する。そしてこの聖女マーシュを新しい婚約者とする」


 オルレオ王国立魔法学園の卒業式。式典のあとのこのパーティは、学生だけが参加する。

 おいしいお食事を余すところなく食べつつ、テーブルにたっぷり残っているものをチェックしていた私は、我が国の第三王子の声に驚いて振り向いた。


「まぁ、ジャンジャック殿下。何を仰っているのです」


 名前を呼ばれて現れたのは、透き通るような白い肌、プラチナブロンドを一つに纏めた、華奢なのに艶めかしい色香を醸し出す麗しの令嬢だ。

 対する王子の隣には、ふんわりボブの髪型に、お約束のようなピンクブロンドの背の低い女子。その彼女を守るように、王子の側近ども――失礼。側近の少年たちが立っている。


「何を、だと? ルルレリアがこのマーシュのことをいじめていたのは知っているんだぞ。たとえ出自が平民であったとしても、聖女だ! 聖女をいじめるなど」


 おっと、話が進んでいた。


「お言葉ですが」


 長々と喋る第三王子の声をぶった切り、コロコロと鈴が転がるような声で、ルルレリア様は反論する。


「わたくし、そちらの方とは初めてお会いしますわ。殿下の良いお方なのですか?」

「ハンっ! よく言う! 俺の寵愛がマーシュに移ったと知って、彼女を」

「お言葉ですが」


 出たーっ! 今再びの「お言葉ですが」だ!

 私は手にしている魔鳥チッキンチッキンの唐揚げを口に押し込み、食い入るように見てしまう。

 この聖女に、私も散々苦しめられたのだ。

 だからこそ、この展開は見届けなければ。


「わたくし、殿下のことはイチミリも興味がございませんの。王家に無理矢理押しつけられた無能王子など、婚約をなかったことにできるのであれば、大歓迎ですわ」


 おお、言い切った! さすが公爵家のご令嬢だ。


「なっ、なにを! でもマーシュは怖がって」

「ルルレリアさまぁ、私は謝ってくださったらそれでぇ、良いんですよぉ」

「優しいなぁマーシュは。僕が守ってあげるからね」

「たとえ王子の寵愛があったとしても、俺がお守りする」

「マーシュはボクが側にいてあげるよぉ」

「おい! お前らちょっと黙れ!」


 わーお、恋の大混戦じゃない。

 に、しても。


 あの平民聖女が、私の婚活を邪魔しただけではなく、学園内をしっちゃかめっちゃかにし出したときには、びっくりしたけど……。まさか本当に婚約破棄するってところまで、乙女ゲームの展開になるとは。


 そう。これは『聖恋』の逆ハールートのエンディングだ。現実に逆ハーをやるなんて、すごい度胸だとは思うけど。


「コホン。陛下と我が父との契約ではございますが、これほど大勢の皆様方の前での婚約破棄を叫ばれましたもの。我が公爵家の力を以て、遂行いたしましょう。それでは手続きを行いますので、失礼いたします」


 一気にそう言い切ると、思わず拍手をしたくなるような、美しいカーテシーを披露したルルレリア様(舌を噛みそうだわ)は、同席していた弟君にエスコートされて、退室していった。

 残されたボンクラ……もとい浮気男……違った、第三王子は、腕に抱いている聖女のマーシュとイチャイチャし始める。


 さらにその周りで側近ども――もう『ども』でいいでしょ――も、彼女の髪を撫でたり、頬をツンツンしたりしていた。

 そういうのは余所でやれ。


 ルルレリア様退場後は、入れ替わるように近衛騎士団が入ってきた。

 どうやら、教師の誰かが呼びに行ったらしい。

 そりゃそうよね。卒業式も終えた今、彼らはもう大人の扱いだ。


 いくら第三王子とその側近の高位貴族とはいえ、やらかしたら外部機関に連絡して終了でしょ。せいぜい何を起こしたのか、教え込まれてくればいいと思う。まぁ私は二度と関わることもないから、この先どうなるかとか、知る術もないけど。

 知りたくもないし。


「アニタ」

「ソマイア! 今の見た?」

「勿論よ。あんなことするバカって、本当にいるんだねぇ」


 もちろんヒソヒソと話してはいるが、目線はあのバカどものあたりだ。


「巷で流行ってる、少女小説になぞらえてるのか知らないけれどねぇ。第三王子って……あ、いけない。アニタ、アレがこっちにくるわ」


 ソマイアは私の袖をつん、と引っ張り道をあけるよう促した。

 向かい側にいた生徒も、そっと道をあける。

 側近どもと第三王子、そして聖女を先導しているのは、先ほど入ってきた、近衛騎士団の方々だ。

 何故か近衛騎士団の後ろを歩きながらも、彼らはドヤ顔をしている。

 もしや、「出迎えご苦労」とか思ってるんじゃないでしょうね。


 ――思ってそうだから怖いわ。


「はぁ~、近衛騎士団って格好良いねぇ。あんな茶番のあとにでも、見ることができてありがたや……」


 思わず両手を合わせて拝んでしまう。

 第三王子は、小柄な聖女を腕にぶら下げるようにして――あれ、本当にぶらさがってない? 体力だけはあるんだな、第三王子――この会場を出て行った。


 あとに残された私たちは、もちろん今の婚約破棄茶番劇のことで、大盛り上がり。

 今日が最後という学友たちと、在学時代の彼女の奔放な行動について話している。

 どうやら皆、食事よりもお酒を楽しみたいらしい。

 料理がたくさん残っていた。

 もったいない!


「あっ、残ってるご飯、器に入れないと!」

「アニタったら、またそんな」

「うちは貧乏だからねっ。それに」


 第三王子が去って行った方を見る。


「あの聖女が、学園内のめぼしい男子生徒に軒並みツバつけたから、私の婚活がまったく進まなかったのよっ!」

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