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婚活中の貧乏子爵家令嬢ですが、小料理屋を開業したら幼馴染みが溺愛してきます  作者: 穴澤 空@10/9ドアマットヒロイン2巻発売!


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29 いざ王城

 途中、馬車の中で寝てしまった……。

 目が覚めたら、ディアスの肩口にもたれていたのよね。


 ……筋肉、めっちゃ良い感じだった。じゅる……。

 いけない!

 落ち着いて、私。


 ここから先は王城なんだから、子爵令嬢らしさを維持しないと。

 いやでも、本当にこう……。

 ディアスってやっぱり護衛であり、騎士なんだなって思ってしまった。あの体はなかなか──好みで困るわ。


 ん?

 なんで困るんだっけ。


「お嬢、到着しましたよ」

「あっ、わかったわ」


 とりあえず王城に到着したし、またあとで考えよっと。

 大きな白亜のお城は、ドイツにあるカボチャの馬車系おとぎ話の、某お城っぽい。あれたしか、結構新しいお城なのよね。


 門を通過し馬車寄せに到着すると、ディアスがエスコートして降ろしてくれた。

 ……大きな手だなぁ。

 ゴツゴツしてて、剣を握る、護衛騎士の手。

 かっこいいよね。


 私たちの馬車のあとについてきていた護送車は、門のところで行き先を分かつ。

 罪人の扱いなので、貴族が使う入り口とは異なるのは、当たり前か。

 ランディオさん、酷い目に合わないといいのだけれど。

 そこからはいくつものお部屋を通過し、客室の一つに招き入れられた。


 今日の私は、お母さまのドレスを直したものだ。

 最先端ではないけれど、王城で失礼にはならないような、ドレスを着てはいる。ハズ。

 扉の先には我が親友ソマイアの婚約者、ネルツァ・エル・ロクツォーネ侯爵子息が待っていた。

 二人をくっつけたのは私なので、彼ともそこそこに仲が良い。


「ご無沙汰です。お元気でしたか、アニタ嬢」

「おかげさまで、つつがなく。お久しぶりです、ネルツァ様」


 礼儀作法の授業で、美しいと褒めていただいたカーテシーをする。ドレスが古びていても、礼がきれいなら文句を言われにくいと踏んで、頑張ったのよね。せっかく受けられる授業だし。礼儀を身につけることはプライスレス! しかもその維持費は無料! これは頑張るしかないでしょ。


「ネルツァ様。こちらは私の護衛騎士、ディアスです」

「やぁ、ディアス殿。私はネルツァ・エル・ロクツォーネ。ロクツォーネ侯爵家の嫡男だ」

「お初にお目にかかります。モルニカ子爵領にて騎士爵を賜っております、ディアスと申します」


 やだ! ディアスの騎士の礼が格好良い!

 思わず見とれてしまった。それをネルツァ様に見られ、くすりと笑われる。くそ~。これ絶対、ソマイアに話されるわ。


「ではここからは私が、アニタ嬢をお預かりしよう。あなたはここの客室で、待っていてくれるかな。ああ、座ってもらって構わない。あとで茶を届けさせよう。──エーイル」

「これに」


「ディアス殿に、お茶を。ディアス殿、エーイルからの茶は安心して飲んでもらって、構わない」

「──は」


 えー。

 王城の中でも、そんな警戒をしないといけないの? と、思うけれども。深追いはしちゃ駄目ね。というよりも、しない方が絶対にいい。


「じゃあディアス。行ってくるわね」

「どうぞ、お気を付けて」


 心配そうな顔のディアスを置いて、私たちは謁見の間へと向かう。


「緊張してる?」

「もちろん」


 お城の廊下は、歩くとカツカツと音が響いた。

 それがまた、なんだか緊張を高まらせてくるのだ。


「さて、この角の先が謁見の間だ」

「はい――。あの」

「うん?」

「この先の扉って、自分であけるパターンでしょうか。それとも」


 真面目な顔で尋ねれば、ネルツァ様に笑われてしまった。


「入り口の前に、衛兵がいるから任せておけば大丈夫だよ」


 それは、そう!


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