29 いざ王城
途中、馬車の中で寝てしまった……。
目が覚めたら、ディアスの肩口にもたれていたのよね。
……筋肉、めっちゃ良い感じだった。じゅる……。
いけない!
落ち着いて、私。
ここから先は王城なんだから、子爵令嬢らしさを維持しないと。
いやでも、本当にこう……。
ディアスってやっぱり護衛であり、騎士なんだなって思ってしまった。あの体はなかなか──好みで困るわ。
ん?
なんで困るんだっけ。
「お嬢、到着しましたよ」
「あっ、わかったわ」
とりあえず王城に到着したし、またあとで考えよっと。
大きな白亜のお城は、ドイツにあるカボチャの馬車系おとぎ話の、某お城っぽい。あれたしか、結構新しいお城なのよね。
門を通過し馬車寄せに到着すると、ディアスがエスコートして降ろしてくれた。
……大きな手だなぁ。
ゴツゴツしてて、剣を握る、護衛騎士の手。
かっこいいよね。
私たちの馬車のあとについてきていた護送車は、門のところで行き先を分かつ。
罪人の扱いなので、貴族が使う入り口とは異なるのは、当たり前か。
ランディオさん、酷い目に合わないといいのだけれど。
そこからはいくつものお部屋を通過し、客室の一つに招き入れられた。
今日の私は、お母さまのドレスを直したものだ。
最先端ではないけれど、王城で失礼にはならないような、ドレスを着てはいる。ハズ。
扉の先には我が親友ソマイアの婚約者、ネルツァ・エル・ロクツォーネ侯爵子息が待っていた。
二人をくっつけたのは私なので、彼ともそこそこに仲が良い。
「ご無沙汰です。お元気でしたか、アニタ嬢」
「おかげさまで、つつがなく。お久しぶりです、ネルツァ様」
礼儀作法の授業で、美しいと褒めていただいたカーテシーをする。ドレスが古びていても、礼がきれいなら文句を言われにくいと踏んで、頑張ったのよね。せっかく受けられる授業だし。礼儀を身につけることはプライスレス! しかもその維持費は無料! これは頑張るしかないでしょ。
「ネルツァ様。こちらは私の護衛騎士、ディアスです」
「やぁ、ディアス殿。私はネルツァ・エル・ロクツォーネ。ロクツォーネ侯爵家の嫡男だ」
「お初にお目にかかります。モルニカ子爵領にて騎士爵を賜っております、ディアスと申します」
やだ! ディアスの騎士の礼が格好良い!
思わず見とれてしまった。それをネルツァ様に見られ、くすりと笑われる。くそ~。これ絶対、ソマイアに話されるわ。
「ではここからは私が、アニタ嬢をお預かりしよう。あなたはここの客室で、待っていてくれるかな。ああ、座ってもらって構わない。あとで茶を届けさせよう。──エーイル」
「これに」
「ディアス殿に、お茶を。ディアス殿、エーイルからの茶は安心して飲んでもらって、構わない」
「──は」
えー。
王城の中でも、そんな警戒をしないといけないの? と、思うけれども。深追いはしちゃ駄目ね。というよりも、しない方が絶対にいい。
「じゃあディアス。行ってくるわね」
「どうぞ、お気を付けて」
心配そうな顔のディアスを置いて、私たちは謁見の間へと向かう。
「緊張してる?」
「もちろん」
お城の廊下は、歩くとカツカツと音が響いた。
それがまた、なんだか緊張を高まらせてくるのだ。
「さて、この角の先が謁見の間だ」
「はい――。あの」
「うん?」
「この先の扉って、自分であけるパターンでしょうか。それとも」
真面目な顔で尋ねれば、ネルツァ様に笑われてしまった。
「入り口の前に、衛兵がいるから任せておけば大丈夫だよ」
それは、そう!




