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婚活中の貧乏子爵家令嬢ですが、小料理屋を開業したら幼馴染みが溺愛してきます  作者: 穴澤 空@10/9ドアマットヒロイン2巻発売!


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27 ランディオの決断

 時を遡ること、半日。


「アニタさん、ありがとう……。俺は」


 ランディオさんは私の目をしっかりと見て、口を開く。


「王城に、行くよ」

「ランディオさん?」

「ランディオ!」


 私の声と、ジャンジャックの声が重なる。


「確かに俺は、彼女の言うことを信じただけだ。そこに何か罪があるのかと問われれば、俺は悪いことをしていないと言い切れる。でも、ここで逃げ去ったら、そのことが罪になっちまうんだ。それは、アニタさんを始めとした、この子爵領で良くしてくれた仲間たちに対する、裏切りだろ?」

「ラン……ディオ」


 ジャンジャックの瞳が、赤くなる。


「……俺は。今の俺は、陛下に目通りすることなんて、できない立場だ。でも」


 ぐい、とジャンジャックに腕が引かれた。

 瞬間的にクリアノとディアスの視線が、彼に飛ぶ。


「アニタ嬢、頼む。手紙を……預かってくれないか。君が父う──陛下に、もしも目通りが叶うのであれば、いやそうじゃなくても、どうか、手紙を」


 それが、今のジャンジャックができる、最大限なのだろう。

 私は、彼のその想いを無下にできるほど、非情な人間にはなれない。

 ジャンジャックの手を引き離し、彼に微笑みかける。


「まずは皆、我が家に。あぁ、聖女だけは衛兵に引き渡して、護送の準備を。それはディアスにお願いするわ。クリアノは私たちと、同行してくれる?」


 指示に従い、彼らが動く。私は今日の売上金をクリアノに渡し、ランディオさんとジャンジャックを促した。


「我が家で、手紙を書きましょう。陛下にお渡しするには、それなりの紙が必要よ。一応私が確認し、子爵家の封をかけます。その方が、ご覧いただける確率があがるわ」

「アニタ嬢……」

「二人とも──すまない」


 深く礼をするランディオさんの両肩に、手を添える。


「お礼を言うのは、私の方よ。ランディオさんがここに連れてきてくれたおかげで、知らない間に我が領で、彼女を匿っていたということにならずに済んだ」


 そこまで言って、私はジャンジャックを見る。


「それに、聖女がジャンジャックさんがいるこの領に滞在することで、もう一つ問題が生まれるところだったの」


 どうして自分が見られているのかわからないのか、ジャンジャックが小首を傾げた。

 いや、なに他人事みたいな顔をしているのよ。


「王命で平民となったジャンジャックさんがいる場所に、王命を無視して逃げてきた聖女がいる。それはその二人が結託して謀反を企んでいると、疑われる可能性があるってこと」


 そうなれば、我が子爵領だって、お咎めなしとはいかない。

 私の言葉に、ジャンジャックが初めて気が付いたという、顔をした。

 そういうところなんだけどね。まったくもって、ツメが甘いというか。

 本当に、王子教育ってものは、なにをしてきたのだか。


「あなたが、我が領の迷惑にならないように、と考えてくれたことがとても嬉しかった。私が子爵家の人間だと黙っていてごめんなさいね。でも、無事に戻ってきたら、また食べに来て欲しい」


 床に、ぽとりとランディオさんから、雫が落ちる。

 涙か鼻水かはわからないけれど、あとできれいに拭いておこう。


「さ、行きましょうお嬢さま。お客人方も、今夜はゆっくりとお休みになってくだされ」


 クリアノが私の背中を、そっと押してくれる。


「そうね。まぁ、たいしたおもてなしは、できないけど」


 笑えば、二人も笑ってくれた。

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