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婚活中の貧乏子爵家令嬢ですが、小料理屋を開業したら幼馴染みが溺愛してきます  作者: 穴澤 空@10/9ドアマットヒロイン2巻発売!


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14 ジャンジャックと常連さん

「アニタ嬢! 遅くなってしまったが、ようやく君に会いに来れたよ」


 扉を開ける音と同時に、聞こえてくる声。


「ジャンジャックさん?!」

「そう、君のジャンジャックだ」

「私のものにした覚えはないですし、そもそも他のお客様にご迷惑なので、声を小さくしてください」


 私の言葉にシュンとした顔をすると、すぐにカウンターに座る。


「金を貯めてきた。これで、ここで食事をしても良いだろう?」

「ええ、もちろんです。お客様なら、歓迎ですよ」

「俺は決めたんだ。毎日ここに通い、アニタ嬢を口説くと」


「お嬢はお前のものではない」

「アニタちゃんは、お前のものじゃねえぞ」

「アニタさんは、君のものではない」


 あああ、ジャンジャックの言葉を否定をしてくれるのはありがたいけど、いや本当にありがたいんだけど、一触即発の雰囲気は出さないで欲しい。

 このあと、お客さんが入って来づらくなるから……。


「さ、三人ともありがと。とにかく、ジャンジャックさん、飲み物どうしますか?」

「えぇと……。あのインテリっぽい彼が飲んでいるやつと同じのを」


 インテリ、という言葉に吹き出しそうになる。

 確かに、アザキニア商店の番頭をしているオドライさんは、メガネをかけてインテリ風だ。

 もしもここの領地が乙女ゲームの舞台なら、彼はインテリメガネ枠になるのかな。

 ――貴族じゃないから商人枠だろうか。


「これはゴルゴ酒と言う。君は飲んだことがないか?」


 オドライさんはメガネのブリッジに手を掛けて、コップを傾けた。

 これ絶対、ジャンジャックが言ったインテリって単語を意識してるわよね。


「あぁ。酒はワインしか、飲んだことがなくて」

「ほほう。だったら是非これを飲めるようにしておくといい。ここの領地の定番の酒だ」

「なるほど! アニタ嬢、よろしく頼む」


 木のコップにたっぷりとゴルゴ酒を淹れ、彼に渡す。三人はそれぞれの酒を持って乾杯をした。この調子では、料理のことも良くわからないだろ。お任せメニューをオドライさんと同じように出していくことにする。


「これは美味しい酒だ! んんっ? この食べ物はなんだろうか。とても香り高い」

「仰々しい言い方ね。燻製ポテトサラダよ。ポテトを燻製してから、マッシュしているの」

「なんと! とても美味しい。こんな料理を作れるとは、アニタ嬢は素晴らしいお嬢さんだな」


 料理を褒められるのは正直、とても嬉しい。

 前世の貧乏ライフのおかげで、仕入れ値の高くない食材を、そこそこ美味しく料理できている自信はあるのだ。


「お前、軽いなぁ。名前なんて言うんだ?」

「俺はジャンジャック。ジャンって呼んでくれ。ランディオ殿とディアス殿には、先日世話になった」


 私の横で洗い物をしているディアスに、ジャンジャックは目を配る。

 ディアスは無言で軽く頷くだけだ。


「おいおい、殿はやめてくれよ。ランディオで構わねぇ」

「俺はオドライ。アニタちゃんに、しつこく絡むんじゃねぇぞ」

「しつこく? わかった。しつこくしたことは、俺の人生で一度もないが、気を付けるとしよう」


 嘘でしょ?!

 この人のしつこいって、どれだけハードルが高いのよ。

 二人もそう思ったのか、苦笑いをしている。


 ただ、男同士で気があったのか、楽しそうに話をしてくれているので良かった。ジャンジャックも、これからは平民として生きていくのだから、新しい仲間を作っていけると良いと思う。


 三人が盛り上がっている間に、私は他のお客様の注文を取りにテーブル席へ行ったり、後片付けをしたりと、バタバタしながら過ごしていく。

 ディアスが三人と少し会話している。

 笑い合ったりしているから、ジャンジャックとも仲良くなったのかもしれない。


 週末になると家族で来てくれるレンディ家族や、たまに女子会! と言ってやってくるマミリアさん、ルーレンさん、カルアリエさんたち。

 小さなお店なので、数組が入ると一杯になってしまうけれど、それでもお客さんが来てくれているのが本当に幸せ。


「そう言えば、アニタ聞いた? 今度聖女が、グルレンの森に来るらしいよ」


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