表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚活中の貧乏子爵家令嬢ですが、小料理屋を開業したら幼馴染みが溺愛してきます  作者: 穴澤 空@ドアマットヒロイン1巻発売中!


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
10/49

10 俺はジャンジャック、元王子01(ジャンジャックside)

 俺の名前はジャンジャック。

 家名をもたない、ただの平民だ。

 だが、元はこのオルレオ王国の、第三王子だった。


 そのときの名前は、ジャンジャック・フィオ・オルレオ。

 何不自由なく暮らし、将来は婚約者だったルルレリア・リオ・カールレイ公爵令嬢とともに、新しく伯爵家を興すはずだった。


 公爵家ではなく伯爵家だというのには不満があったが、気楽に暮らすにはちょうど良いのかもしれないと、思っていた。

 それが、何故今平民になっているかって?


 正直、俺にもよくわかっていない。

 ルルレリアとは、幼い頃から婚約をしていた。

 彼女はとても美しく、そして優秀で、俺と二人でいると一枚の絵のようだと称えられたものだ。ただ、彼女は優秀なだけに冷たく、俺にも指摘ばかりしてきた。


 こちらは王家の人間だというのに、随分と失礼なものだ。

 俺たちが十六歳になったとき、王国立魔法学園に入学した。その入学式で出会った、可憐な少女。それこそが、聖女マーシュ。

 彼女の清楚で可憐なさまは、まさに守らなければならないと思わせてくれた。


 そう。一人でも立っていられるルルレリアよりも、私が守るべきはマーシュなのだと、直感したのだ。

 彼女の可憐さは、多くの男子生徒を惑わせてしまう。だから俺は、彼女と夜会で話した男子生徒には、すぐさま婚約者を用意した。


 マーシュはいずれ、俺の婚約者となるのだ。そう、ルルレリアに代わり。だから男どもが、いらぬ期待を持ってしまうと、彼らが哀れだ。どうせ平民となるような次男三男坊どもだ。彼らの領地での婚約を、こちらで取り持ってやったのだ。


 婚約者がいる男子生徒は、その婚約者と結婚するしかないだろう。だから見逃してやった。俺の側近たちも、やがては婚約者とともに、我が王家を盛り立てる必要があるのだ。


 そうして迎えた卒業式。

 俺はルルレリアが、嫉妬からマーシュにしたと言う罪を元に、卒業式のあとのパーティで婚約を破棄し、断罪までする予定だった。


 ――断罪はできなかったが、婚約は破棄できたので良しとしよう。

 これで、俺とマーシュは幸せになれる。

 俺が賜る予定の伯爵家で、二人で愛の巣を築こうではないか!

 そう思っていた。

 なのに、どうして。


 卒業パーティの途中で、近衛騎士団に連れられ、父上、つまり国王陛下の御前に出させられる。

 国王の前ということもあり、先頭に俺、そしてその少し後ろに側近たち、一番後ろにマーシュという並びとなる。彼女は不安そうだったが、こればかりは仕方がない。


 本当は、手を繋いでいてあげたいのに。


「ジャンジャック。随分と派手にやらかしたようだな」

「父上、すでにお聞き及びですか! はい。俺はルルレリアではなく、ここにいる聖女マーシュとともに、伯爵領を盛り上げて」

「どこのだ」

「……え?」

「その伯爵領とやらは、どこの伯爵領だと聞いている」

「それは……俺が興す予定の」


 父上の目が、細くなった。


「お前がルルレリア嬢とともに臣下に下る先は、彼女の実家。つまりカールレイ公爵家が持つ、伯爵領だったのだが。はて、彼女と別れたあと、どうするつもりか」

「え? は? いやそんな! カールレイ公爵家の? そんな」

「何度も説明したはずだぞ。そして、彼女を大切にしろ、とも」


 確かに父上には何度も、ルルレリアを大切にしろと言われた。だが、そんなの婚約者だからっていう意味だと思うじゃないか。

 つまり、婚約者じゃなくなるなら、大切にしなくても良いと思ったんだ。


「聖女マーシュ」

「は、はい!」


 マーシュの声が後ろから聞こえる。少しだけ震える声が、愛おしい。守ってあげないと。

 聖女といえど平民のため、父上からではなく、父上の側近ダウグス・チョールエからの声かけになった。


「先ほどそなたの持ち物を検めたところ、所持していた食べ物から、ココラシオが検出された。どういうことかな?」

「ココラシオ……?」

「ジャンジャック殿下。王子教育で、ココラシオはやったはずですが?」


 やばい。

 全然覚えていない。


「あ、あぁ。俺は覚えている。もちろんだ。だが、俺の後ろにいてくれている彼らには、わからないかもしれない。ダウグス殿から、教えてやってくれないか」


 ダウグスが頷く。

 よし! うまくごまかせたぞ!


「そういうことにしておきましょう。さて、殿下の後ろにいる、役立たずの側近たちよ。ココラシオとは何かを、教えてあげましょう」

「おい、役立たずとはなんだ!」

「お前は、宰相の四番目の息子ですね。殿下を諫めるどころか、一緒になって女に狂うとは。そんな側近、役立たずでしかないでしょう。他の者も同様だ」


 俺が悪いことをしたみたいに言うが、あいつらがマーシュに夢中になっていたことに関しては、確かに役立たずだな。俺とマーシュを守るのが、側近の仕事だ。


「ココラシオとは、魅了薬の一種です。もちろん万能ではありませんし、食べ物にいれる程度では、心酔などできません。節度のある心を、相手に持っていれば」


 そう言うと、ダウグスが何かを合図する。途端、端に控えていた騎士が近付き、俺たちに何かを無理矢理飲ませてきた。


「毒ではないので、安心して飲みなさい。これは陛下からのご命令です」


 王命だと言われれば、素直に飲むしかない。味はとくにしないが、少しだけどろりと粘度があった。

 そこから数分。

 部屋には、沈黙が流れる。


「はい、そろそろ良いでしょうか。さて殿下。聖女マーシュを、どう思いますか?」

「え? 可愛いなと思う。あの可憐さは見ていて、手を差し出したくなるな」

「ご結婚なさりたいのですよね」

「結婚できるならしたい! でも、どうしてもか、って言われると……あれ?」

「そういうことです」


 ダウグスの言うことが、わからない。


「飲んでいただいたのは、ココラシオの解毒薬です。ココラシオ自体、完全なる魅了薬ではないので、好意があれば、それを増幅させる。最初からきちんと線引きをしていれば、ココラシオを摂取しても、問題はなかったのです」


 俺のあの感情は、魅了薬のせいだというのか!


「だとしたら、俺たちは無罪放免ではないのか?!」

「線引きをしていれば、と言っただろう、馬鹿者が」


 それまで黙っていた父上が、口を開く。

 その低い声に、怒っているのがわかる。

 父上、そんなに怒らなくてもいいじゃないか。


「第一、殿下は外でもらった食べ物を食べてはならないと、教育されませんでしたか。そして、側近たちは誰からもらったかをわかるようにして、それらを王城に提出するよう、指示されていませんでしたか。少なくとも、私が陛下とともに学園に在ったときには、そうしておりましたが?」


 そう言えば、そんなことを言われていたな、なんて思い出す。


「でも、同じ学園に学ぶ生徒じゃないか。学園では、身分差もなく平等なんだろ?」

「……誰がそんなことを言いましたか?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ