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玉屋さん家の短篇集  作者: 玉屋 ボールショップ
2/4

お題『見るもの、見られるもの・波音』

 ある金曜日の夜のことだ。

 ぼくはいつもの様に、福岡のシーサイドももちに海の波音を聞きに行っていた。

 嫌なことや辛いことがあると、ぼくはこの海に来てすべてを忘れるようにしていた。

 海水は綺麗とは言いがたいが、ここはいかにも『都会の海』と言う感じがしてとても好きだ。

 売店でブルーシールアイスクリームのクッキーアンドクリームをカップで買い、それを溶けないうちに食べてしまう。

 それを食べているうちに次第に気分がリラックスしていくのを実感しながら、ぼくは浜辺に行った。

(なに落ち込んでんのよ?)

 波がそう問いかけている気がして、ぼくは声に出してそれに答えた。

「いや、学校で嫌なことがあってさ……。それで、むしゃくしゃしてここに来たわけ」

(はぁー……。あんたって本当に煩悩の塊よね。この間もそんな事言ってなかった? 毎回あんたのお悩み相談してるわたしの身にもなりなさいよ、バカ)

 ざざっと、波が足元にまで来た。

「おれだって好きで悩んでるわけじゃないよ」

(まぁまぁ、いいから話しなさいよ。学校の話)

「面倒ならいいんだ、邪魔したな」

 ぼくがへそを曲げて、踵を返し歩き出す。

(ま、待って! 待ちなさいよ! 聞いてあげないとは言ってないでしょ?)

 波がそれを追いかけるようにぼくの足元まで一気に迫ってくる。

 ぼくの足にぴしゃっと塩水がかかった。

「わっ、バカ濡れるっ」

 ぼくがひょいっと飛び退く。

(あんたはそうやってすぐ早とちりして! 話しなら聞くつってんのよ)

 もはや波のほうが命令調でそう言ってる気がした。

「……わーったよ、話す」

 そう言って学校で起こったことを話し始める。うしろで波音とのやりとりを見ている者には、ぼくは気が付かなかった。


           ※


「とうとう見つけましたよ。海と対話する能力を持つ数少ない内の一人!」

 携帯電話を耳に当てながら興奮気味で話す男がいた。

「ええ、ですから彼は『あれ』に十分適合できるということでしょう。まだ学生のようですが。はい、予定通り彼に『あれ』を見てもらうことにします。ではまた」


          ※

(そんな悩みがあんたにあったとはね……)

 全てを話し終えた後、波音はそう言ってるように聞こえた。

「意外だろ?」

(……と言うより)

 そう言って波音は口ごもる。

「言うより?」

 ぼくが先を促す。

(くっだらな!)

 その言葉を聞いた途端、ぼくの中で何かがぶち切れた音がした。

「おま、おまえ、お前はぁ!」

 言葉に出来ないほどの怒りに呑まれる。

 その時だった。

(ちょっとあんたどきなさい!)

 突然そう言われて、ぼくはうろたえる。

「どくって……?」

(もう! グズ!)

 その言葉を最後にバリバリと音を立て、海が割れていった。

「な、なんだなんだぁ!」

 突然の出来事に驚く。

 海は50メーターほど割れると、その中のスリットから何かが出てきた。

 まずはごてっとした機械的なポッドが出てきた。その次に女性的な体らしきラインが一気に出て来る。

 これはロボットか? ぼくは混乱の極みに達しようとしている頭で辛うじてそう考えられた。

 人型のそれは手のひらを天に向けた。

 その直後、天からなにか巨大な光の塊が降ってくる。少なくともぼくにはそう見えた。

 そして、ロボットはその手のひらで光を受け止める。

 と言うより、手のひらから見えない防護壁があり、それを使ってレーザーを受け止めているようだった。

 とてつもない轟音が響き、ぼくは叫び声を上げながら目をつむり耳を塞いだ。

 その音が響いてる間は一瞬とも、永遠に続くとも思えた。

 そして――。

「いつまでうるさがってんのよ、もう止んだわよ」

 声が聞こえぼくは耳から手を離し、目を開けその声の方を向く。

 月が照らす海の上でホバリング状態で浮いている、青色の巨躯の姿がそこにはあった。

 それがぼくとシー・マシンと呼ばれる機体との初めての出会いだった。

「お、お前はなんだ……?」

 ぼくはそのシー・マシン……、後に【ネメシス】と命名される巨大な人型にそう聞いた。


            ※


 そう、ぼくらは監視されてたんだ。

 果てしない宇宙の外から巨大な存在に。

 地球外生命体(見る者)、人類(見られる者)として……。


To Be Continued(?)

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