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第9話

―コールドウェル辺境伯領 北の森 ハーマル山 麓―


 数時間馬車に揺られた後、目的地に到着して馬車から降りる。


「第二次討伐隊との合流地点はもう少し先ですので、案内しますね」

「わかったわ」


 クレアを先頭にして歩く。


「そういえば、クレア様はどこまでご同行を?」

「合流と出発を確認した後に馬車に戻る予定です。

 合流場所に家の者が待機していますので、帰り道はご心配なさらず」


 そんなことを話していると、少し開けた場所に出た。

 すると同時に、複数の人影がいるのが見えてきた。


―コールドウェル辺境伯領 北の森 ハーマル山 中腹―


「ここが合流場所です」


 クレアが足を止める。

 すると同時に複数の人影がこちらに駆け寄ってきた。


「君達が例の前衛かい?

 私はスコーチ・スウィートヘイヴン。

 コールドウェル辺境伯軍親衛隊隊長だ。

 今回、リーダーを担当させてもらう。

 親衛隊共々、今日はよろしく」

「ご丁寧にどうも。私はイリア・グリムヴァルド。

 こちらはギルバートよ。

 聞いているとは思うけど、今回、2人とも前衛を担当するわ。

 今日はよろしく」

「戦狼と呼ばれるあのイリア・グリムヴァルド様と共に組めるとは…これは心強いですな!」

「私も、王国一と名高いあのコールドウェル辺境伯軍親衛隊と共にできるとは、光栄です」


 一瞬俺を見て動揺したものの、すぐに切り替えて握手を交わした。

 流石、親衛隊隊長になるだけはある。


「…今日はクレア様はご同行されないのですか?」

「えぇ。「流石に危険すぎる」とお父様が」

「承知しました」


 親衛隊隊長とクレアが小声でなにか話していた。

 同行?

 不審な点が多いな。


「 「今日はご同行されない」?

 普段はされているのですか?」


 イリアさんも不審に思ったのか、親衛隊隊長に強めに問いただしている。

 14歳の貴族令嬢が本格的なモンスター討伐に同行するなど、普通はありえないからな。


「あぁ…、その………戦闘訓練の一貫ですよ。

 貴族社会ですし、そういうもの普通にあるんですよ」


 親衛隊隊長はかなり焦った様子で答えている。

 まぁ、言っちゃっていいだろう。

 俺はもう他人だしな。


「クレアは父の意向により既に職業(ジョブ)獲得の儀を終えています。

 ですからある程度本格的な戦闘も可能なんですよ」

「っ?!」


 イリアさんはかなり驚いたのか、目を丸くして固まっている。

 親衛隊隊長はこちらを睨んでいる。

 恨むならお前らの上司(親父)を恨めよな。


「未成人での職業(ジョブ)獲得の儀はタブーでは…」

「えぇ。ですが、息のかかった神父さえいれば不可能ではありません。

 もちろん。まだ未成熟の肉体に職業ジョブを付与して、何が起こるかは未知数ですが」


 まぁ、幸いにもクレアの時は何も起こらなかったのだが。

 ちなみに職業(ジョブ)は【大聖女】だ。


 イリアさんはかなり引いた様子で親衛隊隊長らを見つめている。

 そりゃそうだ。

 いくら将来有望だからといって、自分の子供を危険に晒すだろうか?

 普通はやらないだろう。

 だが、それをやるのが親父だ。


「まぁ、本人は元気なんですし、この話は終わりにしましょう。

 お互いにとって何の利益もないですしね」

「あ、あぁ…他言無用にしてくれると助かるよ」

「もちろんです。殺されたくないはですしね。

 それで………さっきからギャーギャー騒いでるその二人は誰です?」

「あー……」


 親衛隊隊長は気まずそうに目線を向ける。

 俺もできることならば触れずに討伐しに行きたかったが、触れるしかないだろう。


「なんであのギルバート(落ちこぼれ)なんかに頼る羽目になってんだよ!これじゃ恥さらしじゃないか!」

「そうだ!ギルバート(落ちこぼれ)になんか頼らなくともドラゴン討伐くらいできる!」


 弟のブライアー・コールドウェルとレイヴン・コールドウェルがギャーギャー騒いでいる。

 こいつらは才能だけ無駄にあるせいで親父に甘やかされ、その結果増長仕切ってこうなったのだ。

 身内のはずの親衛隊員すらも引いている。


「ブライアーお兄様に、レイヴンお兄様。

 何度説明すればわかるんですか?」


 この醜態を晒しては流石に家の面目が立たないからか、クレアが(なだ)めるようだ。

 俺は関わりたくないしありがたい。


「追放したあのギルバート(落ちこぼれ)に頼るなんて負けを認めたようなものじゃないか!

 これじゃ伯爵家の面子に泥を塗ることになる!そうだろクレア!」

「ブライアーお兄様。ギルバート様は魔術の才能はなかったのは事実です。

 しかし物理職の才能はあった。

 伯爵家の人間なのですからそれくらい認めましょうよ…」

「あのギルバート(落ちこぼれ)に頼らなくとも、我が伯爵家の誇る魔導部隊ならばドラゴン討伐など容易にできる!そうだろクレア!」

「レイヴンお兄様。第一次討伐隊は奇襲で全滅しました。魔導部隊は奇襲に弱い。これを解決するためにはギルバート様やイリア様などの物理職にも頼るのは自然では?」

「「……」」


 どうやらぐうの寝も出ないらしい。

 妹に宥められることほど屈辱的なこともないだろうしな。

 ざまぁないぜ。


「ブライアー、レイヴン。

 散々落ちこぼれとか言ってるけど、俺Aランク冒険者だから。

 んで、イリアさんとパーティー組んでるからね」

「「な?!」」


 ブライアーとレイヴンの顔が驚愕に染まる。

 本当にいい気味だ。


「…お見苦しい所をお見せしました」


 クレアが謝ってくる。

 こいつも大変だな。


「さて、行きましょうか」

「あぁ。周囲の警戒は任せてくれ」


 親衛隊隊長は気を取り直してこちらに向き直る。

 諸々の準備や用事も終わったし、出発しよう…そういう流れになった時、ふと森の奥から斧を持った少女が飛び出してきた。




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