第8話
―コールドウェル辺境伯領 リハンメル 冒険者ギルド―
「何かしら依頼を受けようと思うんですが…オススメとかってあります?」
いくら俺に実力があると言えど、それは戦闘面での話で、
前世ではソロ一筋だったもんで、チームプレイは最低限の知識しかない。
餅は餅屋にと言うし、ここはプロに任せよう……そう思って今、受付のお姉さんと話しているところである。
「そうですね…お二人の実力はかなりのものですし…この依頼なんてどうでしょう?」
そう言ってお姉さんは一つの依頼書を出してくる。
「ドラゴンの討伐ね…。
かなり高ランクの依頼だけど…他のパーティーとの合同での受注になるのかしら?」
「いえ、どうやら依頼者の方で人員を用意しているとの事ですので、前衛を担当して欲しいそうです」
なんだか嫌な予感がする。
「…依頼書を詳しく見せてもらっても良いですか?」
「構いませんよ」
受付のお姉さんから依頼書を受け取る。
やはりというか、嫌な予感は的中した。
「依頼人:ローワン・コールドウェル辺境伯。
任務内容:隣町であるドロテーアに続く街道上に正体不明の強力なモンスターが発生したため、それの調査と討伐。
任務場所:北の森
ですか…」
「あー…」
俺とイリアさんの両方に気まずい空気が漂う。
「……えーと、なにか問題でも…?」
「あー…、実は諸事情によりコールドウェル家から勘当されてまして…」
「そう、ですか……別の依頼にしましょうか?」
重い空気を感じ取ったのか、受付のお姉さんが少し気まずそうにしている。
「いえ、この依頼にしようと思います」
「…ギルバート、本当に大丈夫?」
イリアさんが心配そうに聞いてくる。
「大丈夫ですよ。あいつらを見返してやるのにも丁度いい機会ですしね?」
丁度いい機会だ。
散々見下してきた弟妹達を見返すとしますか!
「わかったわ。
じゃあ、この依頼受注するわ」
「わかりました。では、明日の朝に依頼人の方から迎えの馬車が派遣されると思うので、よろしくお願いします」
「わかりました」
―――――――
―コールドウェル辺境伯領 リハンメル 中央広場―
依頼を受注した次の日、イリアさんと二人で朝方に街の中心部の広場で迎えを待つ。
しばらくすると、北門の方から馬車がやってきて、やがて俺達の目の前に止まった。
「誰が出てくるんだか…」
正直言って不安でしかない。
妹だったらまだマシなんだが、弟達だったらほぼ確実に揉めるだろう。
妹は家の面子を重視してるだけで、まだ常識がある方だからな。
そんなこんなを考えていたら、馬車のドアが開いた。
白髪のロングヘアーに一切うねりのないストレート、透き通った青色の瞳。
まだ幼さが残るスレンダーで華奢な体。
街中を歩けば誰もが振り返るであろうほど整っており、儚げな印象も受ける。
迎えが妹で本当に助かった。
少なくとも難癖つけられて報酬が半減することはなさそうだ。
「あなた方が担当の冒険者様ですね?
私は…」
馬車から降りている途中でもうバレたらしい。
鎧とか着てるしなんとかならないかなと思ったが、まあ無理か。
「…なぜあなたがここに?」
妹が不審に思ったのか、少し睨んで聞いてくる。
まあ無理もない。
あの家の教育に染まったままじゃそうもなるわな。
「依頼を受注できたってことは、それに見合う実力があると認められたということだ。
そのくらい常識だろ?」
「…それはそうですね。
お二人とも馬車に乗ってください。諸々はその後に済ませましょう」
「わかったわ」
―――――――
妹に促され馬車に乗った後、彼女は自己紹介を始めた。
「申し遅れました。私はクレア・コールドウェル。コールドウェル辺境伯家の四女です」
にこやかに微笑みながら言ってくる。
美少女がやっているからかかなり画になる。
「ご丁寧にどうもありがとう。私はイリア・グリムヴァルドよ。よろしくお願いするわ」
「…説明する必要があるかは疑問ですが、ギルバートです。
伯爵家を勘当されたので冒険者で食い繋いでいます。
以後、お見知りおきを」
「…っ」
クレアが苦虫を噛み潰したような顔をしている。
いい気味だ。
「それにしても、なぜあのコールドウェル家が前衛、それも物理職なんかを募集したんだ?
いつもなら自前の魔導部隊で賄うだろ」
いくら魔術師が物理攻撃に弱かろうと、正直対策方法はいくらでもある。
あの親父にとっちゃ外部の人間、それも物理職に助けを求めることは洗脳教育の邪魔になる恥に他ならないはずだが、一体どういうことだろうか。
「今回討伐対象のドラゴンについてですが、先遣隊及び第一次討伐隊の情報によると、どうやらかなり変則的な戦い方をするようでして…」
「というと?」
「人型になって斧を使ってくるとかなんとか…」
「資料はあるかしら?」
「はい、こちらです」
渡された資料を詳しく読み込んでみると、どうやら人型に変化する魔法など、変わった魔法を使えるドラゴンらしい。
人型の時は高い魔法攻撃耐性も有しているとかなんとか。
「こりゃ魔術師には相性が最悪だ。第一次討伐隊が撤退するのも頷ける」
「…そういう経緯で、非常に屈辱的ですが物理職を募集しているわけです」
「こりゃ親父の面子は丸潰れだな。
物理職を軽視した結果、痛い目に合いました。
と認めたようなもんだ」
皮肉と嫌味の押収を続けながら、俺達は馬車に揺られていた。




