第21話
―王都トゥーラ郊外 地下遺跡ダンジョン 第75階層―
転移トラップを踏んでダンジョンの深層に飛ばされた後、俺達は状況の整理がてら話し合っていた。
「それで、これからどうするつもりなの?ギルバート?」
「そうだね……とりあえずは周囲の探索をした方が良いと思うけど…」
前世じゃ転移トラップに引っかかっても階層は表示されてたから対応がしやすかったんだが……今はわからないしな…
そうやって少し悩んでいると、イリアさんが助け舟を出してくれた。
「そう言えばロザリアはここについて大分詳しいようだけど、なにか情報はある?」
「情報といっても前ふらっと寄ってみただけじゃから大して知らんが……まぁ、構造は大体どの階層もほぼ同じじゃったな」
「…だそうよ」
そうなのか。
ならばやりようはある。
「……なら周囲の探索よりも表層を目指すことを優先しよう。
深層じゃいつどこから奇襲されるかわかったもんじゃないし…」
「お兄様、危ない!」
大体の方針を決めて、いざ出発しよう…そういう流れにしようとした時、クレアが青ざめたような顔でこちらに走ってきた。
「危ないって何が…」
理由がわからずそのまま立ち尽くしていると、そのままクレアに突き飛ばされた。
そして、突き飛ばされた先、元々首があった所には、一本の剣が伸びていた。
「ッ!」
俺が状況を理解するよりも先にイリアさんが動いていた。
俺に奇襲を仕掛けた相手を見てみると…武装からしておそらく騎士だ。
だが、こんな所に普通の騎士がいるわけもない。
無音で近づいて来れたことから考えるにウィッチ系かゴースト系か…。
「ちょっとどういうこと?!
こっちの剣はすり抜けるのに相手の剣は当たるわよ!」
イリアさんがモンスターと剣戟を繰り広げながら困惑している。
確かその特徴は…
「高ランクのゴーストナイトです!
おそらく装備などはモンスター自身が実態化させたものかと」
おそらくクレアの推察であっているだろう。
だが、そうなるとこの中で対応できるのはクレアしか…
「クレア!俺の剣に付与できるか?」
「わかりました!〈付与:聖剣〉」
発動した瞬間、魔法陣から光が溢れ、それが剣に集まっていき、最終的には剣がぼんやりと発光するようになった。
「よし。これでゴーストにも効くはず…〈瞬天〉!」
俺は力強く踏み込み高速移動し、ゴーストナイトの横に回った。
どうやら速すぎてゴーストナイトは反応できていないようだ。
「〈天地両断〉ッ!」
地から天へと縦に一気に切り裂き、装備もろとも真っ二つに割れた。
「ふぅ…これでなんとかなったかな。
ありがとうクレア。助かったよ」
「私は当然の事をしたまでです。
礼には及びません」
相変わらず謙虚なやつだ。
クレアがいなかったら対応できるか俺達は死んでいたかもしれないのに。
「さて、これからどうします?」
「うーん。あんなモンスターも出てきたことだし先を急ぎたいんだけど…」
「あー…」
俺はノエルの足にしがみついて、縮こまって震えていロザリアに目を向ける。
「なんでロザリアはノエルに縋り付いてるんです?」
「…お化けが苦手なんじゃ!
なんでお主らは平気なんじゃ……?」
ロザリアが顔を真っ赤にして言ってくる。
「まぁ、俺は剣を新調すればなんとかなるので…」
「私は光魔法も使えるから対応可能だから、そんなに怖くはないわね」
「私はいざとなったら強力な浄化魔法を使いますので、そんなに怖くはありませんね」
クレア、イリアさん、俺が答える。
「強いなお主らは…妾はもうこんな思いは嫌じゃ!
〈召喚:ホーリーナイト〉!」
そう言ってロザリアは全身に鋼鉄の装備と2mはあるであろう大盾を携えた騎士を召喚した。
おそらく聖騎士なのか、全体的に白を基調とした装飾がなされた装備をつけている。
「いや、あんたも召喚術で対応できるんじゃ?」
「召喚術は奇襲にかなり弱いのじゃ。
じゃからゴースト系の魔物は苦手じゃ……」
「あー、そういう理由ですか」
聞いてみたら納得の行く理由が帰ってきた。
……まぁ、少し幼く見える理由も混じっているようだが。
「そういえば、ノエルは苦手な属性とかあるのか?」
「あたしはいざとなったら全部焼き尽くすので平気っす!」
良い笑顔で元気良く答えてくれた。
「このあとの方針はどうするんすか?」
「まぁ、さっきと同じで表層を目指す方向で良いとは思うけど……周囲の警戒はしないとね」
本当、気を抜いてはだめだ。
今回の件で再認識させられた。
「じゃあ、周囲の警戒は私がやるってことで良いかしら?」
イリアさんが提案してくる。
「そうですね。お願いします」
「じゃあ、気を引き締めてダンジョン攻略に行きますか」
俺達は、表層を目指す事に決めた。




