第20話
―オルレアン王国 王都トゥーラ 宿屋―
朝、朝食を済ませてこれから何をするかを皆と話しあっていた。
「妹ができたみたいでちょっと嬉しいっす!」
ノエルがロザリアを膝の上に乗せて抱きしめながら嬉しそうにしている。
「この妾が下に見られるなんて……屈辱じゃぁっ…!」
ロザリアは非常に不服そうでジタバタともがいているが、どうやらノエルにはあまり効いていないのか、逃げられないようだ。
「離してあげなよ、ノエル」
「えー……旦那様がそう言うならしょうがないっすね…」
そう言ってノエルは名残惜しそうにロザリアをベットの上に降ろした。
「というか、ロザリアって結構力弱いんすね?」
少し意外そうにノエルは聞いている。
「知っておるわそんな事……コンプレックスなんじゃから言わんでくれ…」
恥ずかしそうにロザリアは俯いている。
「なんかごめんなさいっす…」
少々気まずいな…
「さて、剣魔祭も終わったことですけど…王都のどこに行きます?」
「ダンジョンなんて良いんじゃないかしら?」
イリアさんが提案してくる。
ダンジョンか…前世ではここのダンジョンは長らく潜ってないから、うっすらとしか覚えてないな。
「ダンジョンとはどういうものなのですか?」
クレアが聞いてくる。
「ダンジョンは、廃墟化して長らく人の立ち入っていない施設や場所にモンスターが住み着いた所ね。
基本的にはお宝やそれを守る強力な魔物がいるわ」
「どんなところがあるのですか?」
「有名な所では“生命樹の森”や“幻霧の鍾乳洞”なんかがあるけど…それ以外はあまり知らないかなぁ」
「ここから少し離れた所にある地下遺跡なんてどうじゃ?」
「聞いたことがないわね…どんなところなの?」
「まぁ、そんな大した所ではじゃないぞ?
800年くらい前にここを収めた奴の墓じゃ。
このパーティの編成ならここがいいんじゃないかのう?」
「わかった。じゃあそこに行ってみようか」
「」
そういう経緯で、俺達はダンジョンに行くことになった。
―――――――
―王都トゥーラ郊外 地下遺跡ダンジョン 第1階層―
均一に切り出された花崗岩が精密に組まれ、壁や柱、天井を形成している。
特に壁に装飾などはなく、どれだけ進んでも同じような景色が続く。
自分が今どこに居るのかわからなくなりそうだ。
というか、本当になんの音もしない。
音がなさすぎて無気味だ。
「静かだな…」
「まぁ、あまり知られていないダンジョンじゃからのう。
ここに潜る冒険者も少ないから当たり前じゃ」
「それより、このダンジョンの目標を決めておいたほうが良いんじゃないかしら?」
イリアさんが提案してくる。
「目標ですか?」
「えぇ、目標を決めておいたほうが撤退判断もしやすくなるから、やっておいて損はないわよ」
「なら…ここのボスの討伐にしましょうか」
それを聞いてロザリアが少し驚いた様な顔をして、口を開いた。
「そうなると50階層は踏破することになるのじゃが……準備は大丈夫なのか?」
「野営用の装備は確か数日分はあったと思うので平気ですよ」
「なら良いが…」
少し納得がいかない様子でロザリアは答えた。
―――――――
―王都トゥーラ郊外 地下遺跡ダンジョン 第5階層―
大したモンスターも出てこないので暇になっていると、ロザリアが急にとある事を聞いてきた。
「そういえば、このパーティって盾役いないんじゃな」
「確かにそうですね。後衛のクレアに任せるのは職業的に少しズレてる気がしますし…」
「私がやりましょうか?」
「それも良いかもしれませんが…イリアさんには遊撃手が適任だと思うんですよね」
「…妾がやろうか?」
「いや、それこそ向いてない気がしますが…」
「やるのは妾ではない。こいつじゃ。
〈召喚:ダークナイト〉」
そう言ってロザリアは全身に鋼鉄の装備と2mはあるであろう大盾を携えた騎士を召喚した。
ヘルメットをしているせいか中身はよく見えない。
「ま、一つしか無い召喚枠を常時使用するという欠点もあるんじゃがのう」
「それはそれで大きな難点ですね…」
そんな感じで頭を悩ませていると、ふと足元からカチッという音がした。
「ん…?今何か音がしたような…」
音がした直後、自分達の真下に突如巨大な魔法陣が出現した。
「転移魔法トラップ…ッ!皆逃げろ!」
反応するよりも先に、視界が暗転した。
―王都トゥーラ郊外 地下遺跡ダンジョン 第75階層―
「痛っ…皆いるか?」
その声に反応してか、周囲が少し明るくなる。
光源の方を見てみると、イリアさんが火魔法を使って、指先から小さな炎を出して周囲を照らしていた。
「どうやら固まって転移させるタイプのトラップだったようね。
ロザリア、この場所に見覚えはない?」
「残念ながら無いな。
じゃが、この感じからしておそらく50階より下じゃろう」
「…とんでもない事になったな」
どうやら俺達はダンジョンの奥深くで迷ったようだ。




