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第14話

―コールドウェル辺境伯領 リハンメル郊外 コールドウェル辺境伯家本邸―


 館の裏、周りに何もない少し開けた場所に出る。

 武器はお互いに何のカラクリもないシンプルな物だ。


「…話くらいなら聞いてやったのに、残念だ。

 許しを請うなら今のうちだぞ?」

「会話をする気すらなかったくせによく言うよ。

 さぁ、さっさと始めよう」

「いいだろう。たたき潰してやる」


 互いに睨み、向き合う形になる。

 執事が開始の合図と審判を担う。


「開始!」

「〈氷柱落下アイシクル・レイン〉」


 上空に無数の氷の槍が召喚され、俺目がけて雨のように降り注ぐ。

 だが、剣ではたき落としてしまえば何ということはない。


「初手は様子見か…?

 ならこっちから…〈瞬天〉」


 地面を強く踏み込み、一気に親父に接近する。

 少々危険だが、魔法使いなら接近戦は苦手とするはず…!


「…〈氷牢(アイス・プリズン)〉」

「ッ!」


 氷牢(アイス・プリズン)

 相手を厚い氷の壁で覆い、完全に閉じ込める魔法である。

 流石は名門の魔術師の家系の当主。

 移動中の隙を狙ってきたか。このままでは直撃コースだろう。

 だが、こっちにも手はある。


「〈電光石火〉!」


 目にも留まらぬ速さで突きを繰り出す。

 この剣が親父に届くことはない。

 だが、魔法を俺から離れた所で発動させることはできるはずだ。

 魔法の発動と効果の発現には一瞬の差がある。

 そこを利用すれば…!


「ッ!?」

「よしっ!」


 やはり予想通り、剣先を中心にして氷牢(アイス・プリズン)を発動させることが出来た。

 

「…意外とやり手だな。ならばこちらも本腰をいれるとするか…〈氷雹(ヘイルストーム)〉」


 無数の氷弾(アイスバレット)が一斉に放射され、弾幕を形成する。

 挙動からしておそらくホーミング付きだろう。


「この量では逃げ場がないな…」

「なんだ、降参するか?」

「いや、ちょうど良く魔力の塊があるじゃないか?」

「何?」


 先程氷牢(アイス・プリズン)で出来た巨大な氷塊、これは魔力の塊だ。

 これを粉々に砕いて辺りに撒けば、うまいこといくはずだ。


「〈百連斬〉」


 目にも留まらぬ速さで無数の連続斬りを叩き込み、一瞬で氷塊は微細な氷の粒となり、空中を舞う。


「なっ?!」


 一斉に氷弾アイスバレットの挙動がおかしくなる。

 各弾はこちらを追尾しなくなり、その場で回転運動を始める。

 そして、推進力を失ったのか次々と墜落していった。


「どうだ?自分の魔法が利用された気分は」

「…こんなもの想定内だ」


 苦虫を噛み潰したような顔で言っている。

 これは中々効いたな。


「…どうやら、本気を出さざるを得ないようだな」

「自分から間違いを認めるのか?「目の前の初級職業(ジョブ)は自分に届くほどの実力者です」ってな」


 その言葉を聞いて、親父は顔色を怒りに染め、強く拳を握る。


「…弱者にはそう見えるのか?」

「あぁ、プライドに乗っ取られたおっさんが見えるぜ」


 数瞬の間の後、どこか悟った様な顔で親父はこう言った。


「決闘に勝ってお前を殺せば、私の計画には何も支障はない。

〈創生:永氷竜アビス・フロストドラゴン〉」


 膨大な魔力が吹き荒れ、親父の隣に巨大な氷塊が出現する。

 氷塊はどんどん形を変え、関節が出来、生き物に近づいていく。

 そして、最終的には巨大なフロストドラゴンとなった。


「これで貴様は終わりだ!〈永久氷河(カースドフロスト)〉!」


 膨大な魔力が集中する。

 周囲には風が吹き荒れ、冷え込み、口には強烈な光がチラつく。

 

「無駄だ。―〈虚空一閃〉」


 剣で目にも留まらぬ速さで横一文字を描き、空間ごとフロストドラゴンを横に断ち切った。


「………嘘…だろ…?

 こんな………こんな、ことが…あるわけが…」


 親父は驚いて固まっている。

 今が隙だろう。


「〈瞬天〉」


 地面を強く踏み込み、一気に親父に接近する。

 そしてそのまま首元に剣を突きつける。


「もう碌な魔力も残っていないだろ?

 これで決着だ」

「……こんな、こんなわけがないだろう!

 何か、イカサマをしたんだろう!?

 そうに違いない!」


 この事実を認めたくないのか、親父はギャーギャーと騒いでいる。


「フィールドも、武器も、お前が用意した物だ。

 どこにイカサマのしようがある」

「ぐっ……だ、だが、お前のスキルは【剣聖】のそれだ!

 お前は【剣士】のはずだろ、これはおかしいじゃないか!」

「俺に才能があった。

 それだけの話だろ。

 いい加減認めろよ。 負けた って。

 みっともないぞ?

 それとも、ここで俺に殺されるか?

 俺はそれでもいいが」


 そう言って剣を首筋に押し付ける。

 皮膚が切れ、血が滲み出る。


「ひっ!すっ、すまなかった!

 今までの非礼を詫びる!

 詫び金も払う!

 だから命だけは…命だけは許してくれ!」


 情けない姿だ。

 これが俺の父親とは。

 信じたくもないね。


「えぇ……」


 クレアをドン引きしている。

 このままじゃ禄に話もできない。

 剣を閉まって落ち着くまで待ってやるか。


「…俺には人を殺す趣味はない。

 今言ったこと、きちんと守れよ?」

「あぁ、もちろんだ…。

 後でリハンメルのギルドに送っておく」

「クレアの件も構わないな?」

「もちろんだ。

 貴族の誇りに賭けて、守ると誓おう」

「わかった。

 行くぞ、クレア」

「わかりました。お兄様」


 俺達は本邸を後にした。

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