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第13話

―コールドウェル辺境伯領 リハンメル郊外―


「本当に大丈夫…?」

「そうっすよ…。旦那様の身に何かあったらと思うとあたし…」


 イリアさんとノエルが心配そうに聞いてくる。

 まぁ、「勘当された当主に呼び戻された」なんて聞けば誰だって嫌な想像をするだろう。


「平気ですよ。心配しないでください。

 というか、あんなでも貴族なんで、本邸に部外者は入れないですって」

「これは私達家族間の問題なので、一旦私達に任せてください」


 流石クレアだ。

 角が立たない方法を熟知している。


「では、行ってきます」

「えぇ、気をつけてね。

 ノエルの事は任せて頂戴。しっかり手綱を握っておくから」


 イリアさんがノエルの肩を掴みながら言っている。


「ひえぇ…!怖いっすよ…!」

「あはは、そりゃ安心ですね」


 少し緊張がほぐれたまま俺達は本邸へと向かった。


―――――――


―コールドウェル辺境伯領 リハンメル郊外 コールドウェル辺境伯家本邸―


「まさか、こんなにすぐ戻ってくることになるとは…」

「お待ちしておりました。クレアお嬢様」


 正面門の前に近づくと待機していたのか、執事が門を開いた。


「おはよう。爺や」

「おはようございます。

 ギルバート様も、お久しゅうございます」

「久しいってほど時間経ってないけどな」

「はは、手厳しいですな…」


 執事が苦笑いしながら返答してくる。

 まぁ、複雑な立場だろうな。


「執務室までご案内しましょう」

「あら、その必要はないのでは?」


 クレアが少しおどけたような顔で言って見せる。


「業務の一環ですので、お許しくだされ」

「わかってるわ。ちょっとふざけてみただけよ、爺や」


 和やかな雰囲気で会話をしながら、だだっ広い庭を歩く。


「それにしてもクレアお嬢様、なぜあのような行為を?」


 執事が小声で質問をしている。


「もちろん、お父様の意向に反する行動であるということはわかっています。

 しかし、はっきり言って今の方針は間違っています。

 ですので、手遅れになる前に私はお祖父様の頃の様に戻したいのです」


 クレアがはっきりと決意を持った目で言っている。

 執事も驚いた様子で聞き入っている。


「…そこまでのお覚悟でしたか。ならば爺やもお力添えいたしましょう」

「…えぇ、お願いしますね」


 そんなことを話していると、いつの間にか館の目の前についた。


「さぁ、お入りください。執務室までご案内します」


 執事に連れられ、執務室へと向かう。

 途中の廊下にやけに絵画やら彫刻やらが飾ってあった。

 親父、また収集癖が悪化したんだろうか。


「こちらが執務室でございます」

「案内ありがとう、爺や。」

「いえいえ、滅相もございません。

 …ご健闘を祈ります。お嬢様」


 執事は小声でエールを贈った。

 これは俺は静観してるべきだろうな。

 いざとなったら助けてやるくらいでいいだろう。


 執務室のドアが開く。

 事務机の向こうに鎮座する親父が見える。


「失礼いたします。お父様」

「あぁ。クレアと……お前(ギルバート)か」


 執務室に入り、親父と俺達が対峙する。

 少しの沈黙が続いた後、親父はこう発した。


「ギルバートよ……随分と舐めたことをしてくれたな?」

「舐めた事…?はて…、なんのことですかね…?」

「貴様…!」


 どうやら効いたようでキレている。


「私の意志で行った事です。お兄様は責められるべきではありません」

「…クレア、今後一切ギルバート(落ちこぼれ)とは関わるな」


 親父は吐き捨てるように言う。

 

「…どうしてですか?」

「こんな出来の悪いデマを渡しておいて、よく「私の我儘を飲んでくれ」なんて言えるな…」


 そう言って親父は一冊の報告者を投げつける。

 第二次討伐隊の報告書だ。


ギルバート(こいつ)職業(ジョブ)は【剣士】だ。

 初級職業(ジョブ)の者がドラゴンを殺せるはずがない。

 だがここにはギルバート《落ちこぼれ》がドラゴンを倒したと書いてある。

 あり得るわけがない。【剣士】だぞ?」

「それは親衛隊隊長が作成した物ですよ?

 あなたは部下を信じないと?」

「死骸どころか討伐証明になる部位すらないんじゃ、信じようがないな。

 大方、お前が爺やに頼み込んだんだろ?」

「そんなことは…!」


 この状況、明らかにクレアが不利だ。

 親父の論理は被害妄想に塗れているが、筋は通っている。

 

「はぁ………お前がこんなにも話のわからない奴だとは思わなかった。

 このデマに関わった奴を……執事と親衛隊隊長を解雇する必要がありそうだな?」


 こいつ(親父)、クレアの良心を利用して…!


「っ!それだけは…!…それだけは…やめてください…」

「なら、なんて言うべきかわかるよな?クレア」

「っ…」


 クレアが青ざめた顔で謝っている。

 だが、俺に対しても引け目があるのか歯切れが悪い様子だ。

 もう我慢ならねぇ。

 親父(こいつ)とは話し合いにならん。


「おい!」

「ん?どうした。妹と一緒に許しでも乞いに来たか?」

「黙って見てりゃボロクソいいやがって。

 俺と決闘しろ。それですべて決着をつけようじゃないか」

「初級ごときが随分と偉そうに…まぁいい、どうせ勝つからな。

 後で泣きついてきても知らんぞ?」

「こっちのセリフだ」


 俺達は決闘のために裏庭へと向かった。

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