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第11話

―コールドウェル辺境伯領 北の森 ハーマル山 中腹―


 俺はドラゴン討伐のために北の森に来た…そのはずだ。

 だが、俺は今美少女に押し倒されている。

 それも討伐対象にだ。

 曰く、俺と結婚したいらしい。


 “一部のドラゴンは、伴侶に自分より強い他種族の者を選ぶ風習がある”


「完っ全に忘れてた…」


 思い返してみると、前世でプレイした時にそんな感じのクエストがあったような気がしないでもない。

 こいつに殺意が感じられなかったことにも説明がつくしな。 


「…ギルバート殿、ご無事ですか?」


 親衛隊隊長が困惑した様子で聞いてくる。

 そりゃそうだ。


「えぇ、御覧の通り無事です。

 彼女がその気ならば俺はとっくに死んでるでしょうしね」

「酷いっすよ旦那様!あたしを信じてくれないんですか?」


 若干おどけた様子で言ってくる。

 にしても距離が近いな。


「ついさっきまで殺し合いをしてた奴を信じろって方が無理があるんじゃない?」


 イリアさんも近づいてきた。

 敵意が無いことを見抜いている様子だ。

 

「その……大丈夫?ギルバート」


 若干気恥ずかしそうな様子で心配してくる。

 可愛いな。


「大丈夫ですよ。押し倒されてはいますが」

「そう…なら良かったわ」


 急に冷たくされてしまった。

 照れ隠しというやつだろうか?


「というか…いつまでそうやってくっついてるつもりなの?」


 若干嫉妬している様子でイリアさんが文句を言ってくる。

 なぜだろうか?


「一旦離れてもらえませんか?

 このままじゃ何もできないので…」

「嫌っすよ?やっと見つけた旦那様なんですから。

 絶対に逃さないっす!」


 そう言って抱きついてくる。

 若干からかっているような様子だが、半分くらいは本当なのだろう。


「どこにも行かないんで離してもらっていいですかね」


 そんなやりとりを続けていると、クレアがやってきた。


「ご無事ですか?」

「あぁ。拘束されてるがな」

「そうですか」


 相変わらずドライな奴だ。

 だが、クレアは何を思ったのか少女の首根っこを掴んで、強引に俺から引き剥がした。


「ちょっ、何すか!あたしの旦那様は渡さないっすよ!こ」

「お兄様が迷惑しています。離れてください」


 口先では冷たいやつなんだが、気遣いも配慮もできる良いやつなんだよな。

 憎めない奴だ。

 ん…?てか今お兄様って言ってなかったか?

 まぁ聞き違いか。


「ところであなた、お名前は?」

「ノエルっす!ノエル・ヴァンキッシュ!」

「わかりました。

 では、ノエルさん。今からあなたの処遇を決めるための話し合いを執り行うので、拘束させていただきます」

「えっ?」

「〈聖縛(ホーリー・バインド)〉」


 魔法が発動するとどこからか光る鎖が現れ、ノエルの体を拘束した。


「ちょっ、酷いっすよ!」

「こちらにもある程度の被害が出ていますし、妥当だと思いますよ」

「そうですな。ギルバート殿はどうお考えで?」

「彼女の事情も考慮する必要はあるでしょうが、流石にやりすぎ感がありますね」

「旦那様まで?!助けてくださいよぉ……」

「あんな奇襲を仕掛けておいてよく言うわよ……それに、最後のあれは何かしら?

 ギルバートが止めなかったら全員死んでいたと思うけれど?」

「うっ…、それはその……楽しくてやりすぎたっす…」


 そんなこんなで約数時間、ノエルを取り囲みながら議論は続いた。


―――――――

―コールドウェル辺境伯領 北の森 ハーマル山 麓―



 議論が終わり、処遇も決定したため、第二次討伐隊は解散する事となった。


「ギルバート殿、今日は本当にありがとうございました。

 あなたがいなかったらどうなっていたことか…」

「いえいえ。全員無事でなによりですよ」

「では、お気をつけて!」

「はい!」


 帰宅のために用意されている馬車へと向かう。

 どうやらクレアもリハンメルまで同行するようだ。


「馬車…乗ったことないから楽しみっす!」

「良かったな、ノエル」

「はい!」


 最終的にノエルの処遇は、第一次・第二次討伐隊共に死傷者が出ていないため、俺達が引き取る事となった。

 要はパーティー入りだ。


「ノエルさん、はしゃいでないで早く馬車に乗ってください。

 後がつかえてます」

「はーい!」


―――――――


 馬車が出発して少し経った頃、クレアが気恥ずかしそうになにかを話し始めた。


「あの…」

「どうした?」

「…私も、パーティーに入れてもらえませんか?」

「「?!」」


 俺とイリアさんの両方が驚く。

 一体どういう風の吹き回しなんだよ……


「…理由を聞いてもいいか?」

「戦闘の時のお兄様の最後の一撃、あれを見た時…かっこいいと思ってしまったんです。

 今までは、父上に叱責され続けている情けない姿しか見てきませんでしたが…」

「事実だが、よくもまぁボロクソに言ってくれるねぇ」

「あの姿を見て、その…こんなにかっこいい一面もあるんだな…と。

 私達が成す術もなくなっている時に、あんなにも鮮やか倒してしまうとは…」

「…」

「それに、元々あの家の方針には思う所もありましたし…」

「話はわかった。だが、パーティーに参加するということがどういう事かわかっているのか?

 コールドウェル辺境伯家令嬢の地位を捨てるに等しいぞ」

「覚悟の上です」

「…わかった。そこまで言うなら止めないよ」

「…ありがとうございます」


 クレアが深々と一礼する。


「…人気者ね?」


 イリアさんが茶化す様に言ってきた。


「…全く予想外ですがね。

 新しい宿、探しましょうか」

「宿代が嵩みそうね…」

「大丈夫っすよ、旦那様!あたしが沢山稼いであげますから!」

「それは心強いな」


 往路より賑やかに、和気あいあいとした雰囲気になった馬車に、俺達は揺られていた。

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