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最強ギルドごと異世界に転移した最強種たち、暇なので世界を滅ぼしてみた  作者: 朝雨 さめ
第二章

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第三十六話 いつかの誓い④



「……みんながそれを望んでくれるのなら、俺は……このギルドに入りたい。……マスターなんていう大層な称号は要らない。ただ、このギルドで。……《ネクサス・レグリア》で、俺もやっていきたい……そう思うから……どうかこれから、よろしくお願いします……!」


どこか不安のこもった頼りない笑みだったかもしれない。

……思い返せば、ひどく情けなく、かっこ悪い声だったような気もする。


……でも――。


『……ふん。……これから忙しくなるぞ、マ(・)ス(・)タ(・)ー(・)」


不意を突くその言葉に、俺は思わず目を丸くする。

――ってあれ? マスター?


「あ、いや、だから別に俺はマスターじゃなくてもいいんだけど……」


そもそも俺がこのギルドに誘われたのは、あくまでサクラノヴァという"ギルドマスター"と勝負をして、運良くその勝負に勝ったからにすぎない。

なのにも関わらず、古参のメンバーを差し置いてトップの座に居座るなんて、どう考えても分不相応に決まってる。

それに、いくら今のギルドマスターに勝ったとはいえ、それだけでギルドマスターまで譲渡する理由になんてならないもんね。


『……? 何を言っている? 今更何と言おうが、すでに貴様がマスターだ。……譲渡が済んでいるからな』

「―――んえ?」


……? 何を言っている? はこっちのセリフなんだが……???

え、ここって、あの《ネクサス・レグリア》だよね???

ランキング上位常連の少数精鋭ギルドとして名を馳せる、あの《ネクサス・レグリア》だよね???


いやいや、そんな雲の上の存在みたいなギルドのトップともあろう人が、新参者に対して当たり屋とか詐欺紛いみたいなことをするわけが……。


……とは頭で思いつつも、俺は慌てて目の前に半透明のウィンドウを表示させ、自らのプレイヤープロフィールを確認する。


えーっと……?

役職は、っと……え~、《ネクサス・レグリア》・ギルドマスター――――って!!!


「はぁああ~~~!!? 本当にギルドマスターになってんじゃん!? いやいやいやいや!! 俺、今日ここに来て加入したばっかだよ!? 加入早々にギルドマスターになるやつがいるか!? "最強ギルドに誘われて入ってみたら、いきなりギルドマスターに任命された件について"……ってか!? つーか、さっき『俺の意思を尊重する』って言ったよね!? 選択する余地すらなかったくない!?」


などと……嫌な予想が的中した俺が捲し立てるようにサクラノヴァさんへと詰め寄ると、彼は一言、こう言った。


『……??? お前は何を言っているんだ……?』

「こっちのセリフだよッ!!!!!!」


これまで溜めこみ、飲み込み続けたその言葉は、思ったよりも声量が大きかったのか、闘技場の広い空間に響き渡り、何度も反響する。

相対する彼は……クッソ! 骸骨だから表情が読めねぇ!!!

こいつは今、何を思って―――。


『……ふん、まぁなんでもいいが……これからよろしく頼むぞ、マスター?』

「――っ!?」


お前……それ、って……!


「……オイ、なんか良いようにまとめてないか、それ……? まだ納得いってないからね?」

『……ふん。納得だの納豆だの、俺にはなんのことだか……』


お、お、おまえ~~~~!! ……とは言わず。

そんな白々しいサクラノヴァさん……って、あっ、外見のことじゃなくてね? ……コホンコホン。

そんな適当なサクラノヴァさんをさておいて冷静になったとき、ふと、俺の頭に嫌な考えが過った。


あれ……? これ、もしかしてサクラノヴァさんの独断じゃないよね……? と。


ギルドに入ることはみんなには伝えているけれど、マスターまで譲渡するとまでは言ってない……なんてことはないよね……!?


いいや……これまでのこいつの事を考えるに、誰にも伝えていないなんてこともあり得る……!

そうだ、そうに違いない!


もしそうなら、長い間このギルドを支えてきた他のメンバーたちは、彼の思惑による独断専行なんて到底納得できるわけがないに決まっているんじゃ――!?


……嫌な汗が背中を伝い、俺は恐る恐る周囲を見渡して、それぞれの表情を見る……が、そこに広がっていたのは、俺の予想の斜め上の光景だった。


「……ム、どうした? マスター、もしかして俺の炎をまた見たいのか? それならそうと――」


燃え盛る鬣を揺らす巨躯の獣人――灼炎種の王であるゴラクZさんは、どこか満足そうに太い腕を組んで微笑みを向けていて。


「久しぶりの新メンバーだから、なんか嬉しいなぁ! 後輩って感じ! ……ってあれ? マスターだから先輩になるのかな……? ……後輩? 先輩? 上司……? ウッ……ウゥァッ……」


その隣にいる、美人巫女九尾おねえさん……じゃなくて、巫狐種の王である休日さんは、嬉しそうに目を細めながら両手を合わせ……たのになんか急にまた暗くなりだして……。

……こ、これは俺は関係ないよな、ウン……。


そして。


「むー! むぐむぐ……ふぬぅあ! むぅむぐ! まむむぁ~!!」


え……えーっと……その……今もなお壁に埋まっている創造種の王の猫バイトさんは、隙間から飛び出るフリフリとした猫の尻尾……? のようなものを、ゆらゆらと楽しげに横に揺らしながら何かを喋っていて……????


……少し不安は残るものの、しかし誰一人として異を唱えるどころか、むしろなんていうか……逃がさないぞと言われているかのような、完全包囲の歓迎ムードが漂っているのがよくわかる。

そして、それを見た俺は、あぁ、そうかと、漸くあることに気が付いた。


(―――そういうことか……今日の出来事も全部、みんな最初からそういうつもりで……)


俺が、疑念と恨みを込めた視線をサクラノヴァさんに向けなおすと、彼は露骨にそっぽを向く。


こっ、こいつ……っ! 嵌めやがったっ! と、拳を握りしめかけるけれども……うん。


それでもまあいいかとも思う。


こんなにも緩い雰囲気だから忘れがちだけれど、ここにいるみんなはそれぞれ各種族のプレイヤーの中で頂点に立つほどの傑物。

みんなそれぞれに強いこだわりがあって、誇りがあって、考え方も、目指す先もそれぞれ違うものだろう。


だけど、そんな面々にさえ自分の意見を押し通し、意思を統一させ、みんながこうしてすんなりと俺を受け入れてくれているのも、きっとこの人がそれなりに信頼が厚いギルドマスターだったからだろうし、なんだかんだしつつも、ちゃんとみんなにも説明するような人なんだろう(見当違い)。


……あれ? そう考えるとこの骸骨、もしかしてめちゃくちゃ良い奴なんじゃ……!?

―――そう思い直した矢先のこと。


『……さて。では早速、新たなマ(・)ス(・)タ(・)ー(・)より新加入の挨拶と、今後の抱負でもありがたく頂戴しようではないか!! きっと素晴らしいご高説をしてくれることだろう……! それではギルドメンバー諸君! 敬礼!』


サクラノヴァの声質からはあまりにもかけ離れた言動が脳に揺蕩った瞬間、ゴラクZさんと休日さんが姿勢よく敬礼のポーズを取り、それを俺に差し向け……いや、は???


「……は……???」


おっと、心の声と言葉が被ってしまった。

しかし、なんど思い返しても、「は?」以外の感想は出てこない。


……辛うじて出すのなら、壁に埋まった猫バイトさんの敬礼が、お尻に手を添える形だったのが気になったぐらい。


えっ、なに、ご高説????


「いや、あの、聞いてないヨ……?」

「ムッ? そうなのか? だが、男の門出の初口上というものは、かくあるべきだろう! マ(・)ス(・)タ(・)ー(・)!」

「いや、別にかくないよ? 初めて聞いたよそんなの?」


俺が困惑していると、即座に我が事のように腕を組みながら胸を張るゴラクZさんに俺は必死に両手を振って抗議する。

なんだよ、男の門出の初口上はかくあるべきって。本当に初めて聞いたよ。


「うんうん! わかるよ~? 最初の一言って緊張するよね~? あ、でもうちのギルドは四人しかいないんだから大丈夫だよ、マ(・)ス(・)タ(・)ー(・)!  私なんて昔、リアルの入社式の時は緊張のあまり過呼吸になりかけて、その場で"数十人"にお茶をぶちまけて――あッ――あぁッ―――!」

「……大丈夫じゃないのはそちらでは……???」


休日さんは優しく俺の背中を押そうとしてくれたのだろうが、再び途中で自身の生々しすぎるトラウマを掘り起こしてしまったのか、ピタッと動きを止めて盛大に目を泳がせ始める。


……いや、俺はまだ全然この人の事を知らないけど、この人が一番やばいんじゃないかな? マジで。


「むぅむぅ! んまもむぅままみまももまむぅ! まぁ! ま(・)む(・)ま(・)ー(・)! めんむみもむぁむ! みもむぁむ! もぅめまままっもむぅめみゃもうめっ☆!」


…………。


―――さてと。

俺はすぅっと息を吸い込む。


……先ほどの記憶を消し、再び彼らが受け入れてくれたあの記憶に差し替える。


―――。


あぁ、そうだ。

彼らはこんなにも優しく、初対面の俺を受け入れてくれる人たちだ。

そんな彼らが、初対面の俺を認め、マスターだと言ってくれる。


ならば、俺の役目はなんだ?


人として? それとも……仲間として?

いや、多分どちらも正解で、少し違う。


なんて言うのが正解かはわからない。

だけど、自然と頭に浮かんだ言葉を、俺は口に出す。


「……俺はきっと、この先何十年、何百年経っても、今日のこの日を忘れない。ゴラクZさん。休日さん。猫バイトさん。そして……サクラノヴァさん。……みんなが俺を認めてくれる限り、俺はみんなの為に何でもできる。たとえ今後何があったとしても俺にとってみんなは大切な存在。だから――――――これから、"マスターとして"、改めてよろしくお願いします……!」


気恥ずかしさと、どうしようもなく真っ直ぐな想いが混ざり合ったその台詞は、しんと静まり返った地下闘技場の空気にゆっくりと溶けていく。


―――いつか遠い未来に、この日を振り返る時があるとすれば、俺はきっと確信するだろう。


自分の人生の中で、この瞬間が何よりも温かく、最高に輝いていた時間だったのだと―――。















―――……なんて、いい感じの余韻に浸ったままおとなしく幕を引くほど、俺の性格は出来ちゃいない。


なんださっきの嫌な記憶は!

おいサクラノヴァ! お前、絶対この人らのまとめが面倒くさくなって、マスターの座を俺に押し付けただろ!? あっ、おい! 目を逸らすな!?


なるほどそう来るのなら俺にも考えがあるぜ!!!


「さ……じゃあ、俺の宣言も終えたところで、最初のマスター命令でも使っちゃおうかなぁ?」

「ム……『は……「「え……!?」」!?』!?」


俺のその予測不能すぎる一言に、空気が綺麗に凍りつき、全員が文字通り動きを止めた。

いやいや~、だって、ねぇ?


「ギルドのマスターがさっきまであんなに恥ずかしい目に合わされたんだよ? いや~、絆を深めるためにも、メンバーのみんなも同じ痛みを分かち合うのが本当の仲間じゃない? 俺もみんなの事、知・り・た・い・し! ということで! みんなのこれからの目標……っ……いや、ご高説でも聞かせてもらおうか!!」

『……おまっ、いや、お前……すごいな……???』


さすがのサクラノヴァも、冷徹な仮面の奥で僅かに呆れたような眼差しを向けてくるが、しかしその肩がかすかに震えているのが見て取れる。


「お?? おおぉ??? っ、くっはっは!! オイオイ最高じゃないか、マスター! 俺は好きだぞ、そういうの!」

「あははっ、確かに! いいねいいね~!! 飲み会みたいでいいね~!! ……飲み、会……?」


――と、再び休日さんの周りに暗い空気が漂いそうになったとき、ようやく壁に埋まった岩の巨人が大きな音とともに壁から這い出し、休日さんの言葉に割り込む。


「んはぁ~~~っ! ちょっとちょっと!? 飲み会は別に会社関係ないでしょ~!? あ、僕もマスターの意見に賛成だよ~~!! なんかそのほうが楽しそうだし! んじゃ~誰から行く?」


全員が全員戸惑いつつも、それぞれの顔に楽しげな笑みを浮かべる。

そして、彼らの言動に思わず俺の口角も上がった瞬間、一人の男が前に出る。


「ウム、では我がギルドのマスターの記念すべき初命令! まずは俺から行こう!」


そう言って一歩前に踏み出したのはゴラクZさん。

彼は金色の鬣を揺らし、じっと自身の力強い拳を見つめながら、決意を込めた深く長い息を吐き出す。


「俺は……今までずっと、灼炎種としての誇りだけを胸にここまで歩んできた。……だが、今日、この場所で、かつての自分がいかに視野の狭い井の中の蛙……。いや、井の中のサラマンダーだったかを思い知らされた……。因縁深き竜種を目の前にして、勝手に絶望し、勝手に劣化だと思い込み、あまつさえ自らの原点を見失ってしまっていた……! 俺にとって信じるべき炎を、他でもない俺自身が疑い、恐れていた……! だから……!」


そうしてゴラクZさんは……ん? 井の中のなんだって……?

あぁいや、それはいいか別に……。


そうしてゴラクZさんは、瞳に太陽のごとき強烈な、決して消えることのない闘志の炎がふつふつと灯り始め、まっすぐに俺を一心に射貫く。


「俺はこの先、灼炎種として自身の炎をさらに極め、いつか――いつか、竜の体さえも焼き尽くすほどの、真の極限の炎を生み出そう……!」


それは、かつてのコンプレックスを完全に克服した男が放つ、魂の宣戦布告だった。

凄まじい決意を込めた真っ直ぐな眼差しが、地下闘技場の薄暗さを黄金の光で塗り替えていく。

その巨体から放たれる熱量は――先ほどまでの殺伐とした威圧感ではなく、信じられないほどに暖かく……心地よいものだった。


そして―――――。


「……その時は、覚悟してもらうぞ? マスター……!」

「ははっ……それは楽しみだけど……あの……殺さないでね……?」

「はっはっは!! どうだかな! ……では次は――――」


熱を帯びた豪快な笑い声が闘技場全体に響き渡る。


――――――――――この言葉が、決意が。


まさか、こんなにも遠い未来の――。

これほどまでの過酷な戦いへと繋がっているとは、この時の俺はまだ知る由もなかったよ……!



◆◇◆



―――思い出の中で眩しく笑う仲間たちの姿が、一瞬にして目の前の灼熱の炎へと塗り替わる。


吹き荒れる熱風が、剥き出しの皮膚を容赦なく焼き続ける。

目の前に立ちはだかるは、すべてを灰燼に帰す圧倒的な業火の王。


かつて優しく俺を迎え入れてくれたあの巨躯の獣人が、かつての宿敵でもある竜主とともに、今は容赦のない敵として、この翼を焼き尽くした。


熱い。痛い。呼吸ができない。

頭の中に何度も駆け巡る、安楽死への渇望。


……でも、その絶望の底でさえ、不思議と恐怖はなかった。


――そうだ。

あの時、あんなにも温かい場所で、俺たちは確かに誓い合ったのだ。


「……ッ、にじでも……やっば殺す気だっだじゃんかよ……ゴラクZざん……!」


血塗られた唇の端を吊り上げ、俺は崩れ落ちる身体を無理やり奮い立たせる。

翼を焼かれようとも、俺は……俺だけはここから墜ちるわけにはいかない。


だって……俺はまだ……!!

やるべきことをやり遂げていないのだから―――――!!!


【応援お願いします!】


「続きはどうなるんだろう?」「面白かった!」

など思っていただけたら、下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします!


面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!

 

ブックマークもいただけると本当にうれしいです。


何卒よろしくお願いいたします!

 

次回更新は、来週の土曜日を予定しています!【AM1時】更新予定なので、ぜひご覧ください!!

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