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最強ギルドごと異世界に転移した最強種たち、暇なので世界を滅ぼしてみた  作者: 朝雨 さめ
第二章

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第三十三話 いつかの誓い①




「……なんだと!? サクラノヴァ……! もう一度言ってみろ!」


黒曜の輝きを放つ冷たい床。

見上げるほどの位置に穿たれたステンドグラスから差し込む微光が、殺伐とした一室の空気を鈍く照らし……そこに怒号が響く。


ドンッ、と強く叩かれた机の先。

メラメラと湧き立つ金色の鬣を宿す獣の面相をした男の名は――ゴラクZ。

そして―――。


『あぁ……だから、今回新しくこのギルドに入る奴をギルドマスターにすると言ったんだ』


思わず背筋が凍りつくような冷徹さを孕んだ、脳に直接響き渡る声が今度は場を支配する。


闇よりも深い漆黒のローブをはためかせ、僅かに袖口から見える彼の細い指……否、指の骨をカタカタと鳴らす骸骨――サクラノヴァ。


――――運命の歯車が崩れだすより数年前。

彼らはギルド《ネクサス・レグリア》の保有する拠点――【オルディレスト城】の会議室で、とある討論をしていた。


ゴラクZの放つ【熱気】とサクラノヴァが放つ【死臭】。

互いの熱量がぶつかり合う視線の交錯の最中、その地に"二つの"間の抜けた声が零れる。


「いや~、こればっかりは僕もゴラクZさん寄りかな~? さっすがにそれはサクラノヴァさんの職権乱用だと思うよ~?」

「う~ん、私も初めて来た人がいきなりギルドマスターなのはちょっとなぁ……? それこそゴラクZさんとか猫ちゃんじゃダメなの?」


巨大な岩の姿をした頭部に、なぜかピョコと生えた特徴的な猫耳を持つ岩男――猫バイト。

純白の九尾を背に揺らし、深緋の巫女装束を纏った女性――休日。


灼炎種。不死種。創造種。巫狐種。


彼ら四種族の王、総勢四名からなるギルドの面々が一堂に会する理由。

それは、不死種の王であるサクラノヴァが出した提案がもたらしたもの。


「なぜ俺たちの知らない奴がギルドマスターになるのだ!? 筋を通してもらわねば納得せんぞ!」

「うんうん、でもさ~? "あの"サクラノヴァさんがギルドマスターを譲るなんて、ドユコト?」

「えっ! ていうことは……サクラノヴァさん、ゲームやめちゃうの?」


三者三様の困惑。

それらはすべてサクラノヴァに向けられるが、彼は一切取り乱すことも焦ることもせず、ただ淡々と説明を始める。


『……ふん、俺は辞めんが……しかし理由は簡単なことだ。俺が、奴との戦いで負けたから――――』


だが、その言葉がすべて伝わる前に彼らは同時に椅子を飛ばし、一斉にサクラノヴァへと詰め寄る。


「「「エッ!? 負けた!? "あの"サクラノヴァさんが!?」」」


重なる声。

ゴラクZの野太い低い声、猫バイトの軽妙な高い声、そして休日の弾むようなさらに高い声。

綺麗にハモった驚愕の三重奏は、しかし、当のサクラノヴァの居心地を悪くさせた。


『……チッ……何を驚くことが……』


などと首を振るサクラノヴァだが、その視線の先では、全員が頭を抱えて唸っている。


「い、いやいや驚くって!? えっ、サクラノヴァさん本当に負けたの!? なんで!? どうして!? 私でも勝ったことないのに!?」

「ムム……そ、れは……なんとも……いや、しかしそれは本当、なのか?」


ぐいぐいと骸骨の肩を揺さぶる休日に、困惑を隠せないゴラクZ。

しかし彼らの困惑ぶりは、何もふざけているわけではない。


サクラノヴァの口から飛び出た敗北宣言。

それは、彼らにとって地殻変動と同等の衝撃なのだ。


なぜならこのサクラノヴァという不死種の王。


――PVP勝率:九割。

――高難易度レイドボスの単独討伐成功者。

――イベントランキングのトップ常連。


……という異常なまでの経歴を誇るが、それはさておき。


「いやなに……お前が"負けた"というのも信じ難いが、それ以上に、"消滅"を免れてなお、お前が負けを認めているというのがどうにも腑に落ちなくてなぁ……」


ゴラクZが低く唸る。


そう、彼らが戸惑っていた理由。

それは不死種の宿命にして、最大のデメリット――【消滅】の仕様にこそあった。


通常のプレイヤーであれば、戦闘不能になってもリスポーン地点から復活することができるものの、しかし彼ら不死種は、敗北時にデータそのものが消失する"完全消滅"のペナルティが設定されている鬼畜仕様。

つまり、負け=データリセットであり……が、故に今、サクラノヴァが負けたと宣言しているにもかかわらず、その存在が目の前にこうして残っているという現状が、彼らに強い疑問を抱かせていたのだった。


「プライドの高いサクラノヴァさんが、消滅もなしに敗北を認めるなんて……一体どんな勝負を……?」


しかしそんな彼らの疑問についても、彼は軽くいなし……。


『……まぁそれについては後ほど話そう。……とにかく、俺は奴をここに―――』

「―――ねぇねぇ!? そいつってどんな人どんな人!? うっわぁ!www 俄然興味湧いてきた~~~!!wwww えっ、サクラノヴァさん負けたんでしょ!? "あの"サクラノヴァさんが!?www くはぁ~~~それぁ見たかったなァウアッ―――ッ!?」


―――壁に、巨大な岩がめり込む。


「……それで、そいつの名前は?」


ゴラクZは壁にめり込む仲間と、それに両手を合わせて祈る仲間から目を逸らし、サクラノヴァに問いかける。

そうして彼は一拍置いた後、静かに答えた。


『あぁ……。皆も知っていると思うが――――――』





◆◇◆





広大な円形の空間。

天井は高く、周囲には段状の観客席がぐるりと取り囲んだ中央。

直径三十メートルほどもある円形の地下訓練場に、女性の声が零れ落ちる。


「うわーっ、緊張するなぁ! なんかこれ、私たち面接官みたいじゃない!? って、あ……面接、官……あ、あぁ……明日仕事なんだ……あぁ~……」

「……休日パイセン~……全部仕事に繋げるのヤメテヨー……。あぁ~あ、僕もいつかこんな風になっちゃうのかなぁ~? ……嫌だな~~~~~」


天井に吊るされた煌びやかな魔力灯に明るく照らされつつも、暗く、どんよりとした空気を纏う観客席。

その一角を一瞥して呆れたように頭を振ったサクラノヴァは、隣の座席でぶつぶつと何かをしきりに呟いている巨獣に声をかけた。


『……何を拗ねているんだ、いい歳した男が……』

「ヌゥ……しかし、だな……」


ゴラクZはそう言いながら、反対側に座る同じ仲間の女性を見て、再び深刻そうに頭を垂れた。


「……も、もし、俺が負けることになったら……彼女は俺を嫌いになったり―――」

『しない』

「だ、だが、もしかしたらその男に恋を―――」

『しない……!』

「はっ!? だがそうなれば俺は彼女を応援するべきなのか!? ……なぁ! 俺は一体どうすればいいんだ!? サクラノヴァァウアッ―――!?」


―――観客席の階段に、巨獣が転がる。


『……ふん、貴様がどう思おうとも勝手だが、それほど心配ならば、そうならないよう精々気張ったらどうだ? ……貴様もこのギルドを支える王の一人だろう?』


サクラノヴァがそう呟き、ゴラクZが埃を払いながら立ち上がったと同時。

全員のシステム表示画面に、一言のメッセージが表示される。


《――制限エリアに入室申請が一件届きました。承認しますか?――》


その瞬間、場の空気が一変する。

先まで漂っていた朗らかな空気は鳴りを潜め、今やピりついた緊張感が漂いだす。


しばしの沈黙の後。

互いに顔を見合わせ、全員の意思を確認したサクラノヴァは、自身の細い指をディスプレイの画面に伸ばす。


《―――はい》


彼がその項目を選択したと同時に、闘技場へと繋がる鉄製の扉が、ギリギリと音を立ててゆっくりと開き始める。

高まる期待と緊張感の中、やがてザリッ、と、闘技場の砂を踏む音が近づき――――一人の青年が姿を現す。

外見としてはおよそ二十代ほどの青年。

特徴的なものは一切なく、しかしむしろそれこそがこの場にいる誰もに警戒心を抱かせる。


彼らは知っている。

警戒心を抱かせることのない相手ほど……警戒するべきだと。


そして、漂う緊張感がピークに達しそうな頃合い。

その青年は、周囲をグルっと見回したのち、喉を鳴らしてこう呟いた。


「あ、あの~これってぇ……俺、殺される感じですか……?」


――――それが、後に伝説に残る最強ギルド―――新生《ネクサス・レグリア》の始まりだった――――――――――。












……などは当然、誰もこの時は思っておらず。

恐怖に縮こまる青年の前に、ゴラクZはフッと空気を吐き出すと、威風堂々と立ち上がり、青年の前へと踊り出る。

そして……。


「ほう? 君が……。いや、お前が……? おぬし……ウゥム……貴様……ウム、貴様がアレか? ギルドの入(・)会(・)希(・)望(・)て(・)ゃ(・)か?」

「……????? え、っと……なんて……?」


颯爽と登場した割には締まりのない口上に、噛み噛みのセリフ。

そんな哀れな獣に、観客席で見守っていた三人は一斉に頭を抱え、両手で顔を覆った。


「あ~あ。あの人ってああいうとこあるよね~……折角登場まではかっこよかったのにさ~?」

「あはは、あの人も緊張してるんだね。……というかさ? もしかしてあれって、サクラノヴァさんの真似してるんじゃない?」

『……あいつには、俺があぁ見えているのか……?』


そんな観客席からの容赦ない陰口はさておき。


「……まぁいい! 今回は、おま……貴様に試練を与える! これに合格することができれば……君、貴様は晴れてこのギルドの仲間入りというワケだ! 分かったか!?」

「……え……あ……ハイ……なん、となくは……? え、ていうかコレって――」


説明の練度はともかくとして、青年がどうにか理解したと見るや、ゴラクZは即座にビシッと構えを取る。


「良し。なれば言葉はもう要らないだろう。……最初の試練は、この俺との決闘だ。そこに立て!」

「あ、あぁ……そういう感じね? 話聞かないタイプだコレ……え~っと……」


戸惑う青年はそう呟きつつ、視界の端に映った顔見知りの骸骨に目をやるが、しかし彼が黙認しながら首を横に振るのを見て、自身も考えることを諦めるかのように構えを取る。


「はぁ……、それじゃ、いつでもいいですよ」


――その瞬間。

ゴラクZの険しい面持ちがピクリと引き締まる。


(……ム? あの重心の落とし方に、無駄を削ぎ落とした隙の無い構え……こいつ、ただの素人ではないのか?)


数々の修羅場や厳しい戦闘を潜り抜けた、獣の如き嗅覚が危険信号を鳴らす。

ゴラクZは低く唸るように、牙をむく猛獣の低い声で問い質した。


「……貴様、武道の心得があるのか?」

「……え? あ~、まぁ少し動画で……」


返ってきたのは、あまりにも拍子抜けした答え。

しかし、ゴラクZの表情は緩まないどころか、その巨躯の奥底で滾る瞳の熱量が一段と跳ね上がる。


「……成程。であるのならば容赦は不要、か……ハッ、では小手調べと行こうかァッ!」


轟音と共に放たれた宣戦布告。

その瞬間、彼の鍛え抜かれた屈強な巨体が、カッと暴威の熱を帯びて紅く染まった。


―――屈強な人間の肉体と、燃え盛る百獣の王の顔を併せ持つ男、ゴラクZ。

世界に存在する十種族の一つである灼炎種にして、その王。

彼の持つ常時発動(パッシブ)スキル――【熱気】という、単純にして圧倒的な力が青年に洗礼を浴びせる。


……小手調べとは一体……というのは兎も角。


「……そうか……目にするのは初めてだが……それが"竜の"―――!」


先制して攻撃を仕掛けたゴラクZの背筋に、歴戦の王としての野性的な警鐘が走る。

底知れぬ気配を獣特有の第六感で捉え、本能が歓喜と警戒の混じった声を頭蓋に響かせた。


本来ならば、ゴラクZの周囲にいるだけで皮膚が焼け爛れるほどのスリップダメージを負うはずの高熱波。

しかして相対する青年は、一切の温度感を感じさせない姿で、依然として構えを取り続けている。


「……面白い……ッ!! ならば……ッ!」


それを見たゴラクZは自然と口角を吊り上げ、次なる一撃を叩き込むために大地を粉々に蹴り砕いた。

巨体にあるまじき超音速の突進。

一瞬にして懐へともぐり込むと、青年の顔面を捉えてその掌を凄まじい勢いで翳し―――叫ぶ。


「【炎皇(フレイム)】ッ!」


――刹那。

五指の隙間から奔流となった灼熱の光線が、空間を焼き切るように撃ち出された。


「―――っ、うわぁっっぶねぇ!?」


青年は咄嗟に首を傾げたことで直撃は免れたが、僅かに頬をかすめた熱線の余波だけで皮膚がヒリつき、冷や汗を飛び散らせながら情けない悲鳴を上げた。


「~~~っ、いやいやいやいや!? 待ってよ!? 初手で確殺が過ぎないですか!? ねぇ!? 頭だよ!? 一撃目でそこ行く!?」

「ッ、当然だろうッ! ここは決闘場! ただのじゃれ合いなどでは、ないッ!!」


至近距離での……いや、それ以上に"異常とも思える反応速度"での回避に、ゴラクZの動きがわずかに硬直する……が、そこはさすがに歴戦の猛者。

彼は即座にその勢いのままに深く踏み込み、青年を叩き潰すべく鋭い前蹴りを見舞う。


だが――尚も当たらず。


青年はその軽薄な口ぶりとは裏腹に、一切の無駄のない足捌きでゴラクZの蹴りをスルリと躱す。


(っ、なぜ……何故今のを避けられる……!? これが見えているとでもいうのかッ!?)


次第に焦りが募るゴラクZは、その場で致命的な油断をしてしまった。


その隙の間を縫い、スッと彼の目の前に差し出されたのは、白い手のひら。

何を、と思う間もなく、青年はニヤリと笑う。


「あっそう! んじゃこっちも……! 【炎皇(フレイム)】!」

「~~~んなにッ!?!?」


予想外すぎる迎撃の言葉に、ゴラクZの全身の毛が逆立った。


(何故!? 出来るのか!? コピー!? しかし!? いや、避けれるか!?)


一瞬にして様々な思考が脳を駆け巡るが、本能が命じるまま、咄嗟に上体を限界まで反らせる。


……が。


「……?」


いつまで経っても、青年の掌から熱線が放たれる気配はない。

虚を突かれた格好で体勢を戻したゴラクZが、片眉を上げて怪訝に首を傾げる。

すると、当の青年は気まずそうに頭を掻きながら、どこかおどけた小さな笑みを浮かべてこう続けた。


「あぁ……いやぁ……かっこよかったから俺も真似したかったんですけど……それ、"灼炎種特有の魔法"なんですね……"残(・)念(・)"……」


一聞して、何も可笑しなところはない。

だがその、底抜けに呑気な言葉が。

ゴラクZのなかに眠る戦神の如き闘志に、ドロリとした熱を爆発的に注ぎ込んだ。


「……そうか……貴様"も"その手合いだったか……」

「……え?」


青年が間抜けな疑問符を漏らすのと同時。

ゴラクZの全神経が沸騰し、その巨大な肉体から周囲の光景を歪ませるほどの凄まじい熱量が、文字通り爆発的に放射された。


「出し惜しみはしない。さァ、焼き尽されるがいいッ! ――【爆芯焔(パルスバースト)】ッ!!!」




【応援お願いします!】


「続きはどうなるんだろう?」「面白かった!」

など思っていただけたら、下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします!


面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!

 

ブックマークや、感想もいただけると本当にうれしいです。


何卒よろしくお願いいたします!

 

次回更新ですが、本日のAM1:00に投稿する予定です。

ぜひ、お楽しみに。

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