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最強ギルドごと異世界に転移した最強種たち、暇なので世界を滅ぼしてみた  作者: 朝雨 さめ
第二章

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第二十九話 真実の欠片



ゴラクZさんの言葉が最後まで紡がれることはなかった。


空間を切り裂くような高周波の風切り音。


オルガヌスの紅玉のような縦長の瞳がゴラクZさんだけを射抜いた直後、その巨大な前脚が霞むほどの速度で振り下ろされた。


殺意の具現化ともいうべきだろうか。

それは、直前までゴラクZさんが立っていた空間めがけて振り下ろされ、数千トンもの鉄塊が落下したかのような衝撃が地面へと伝わった瞬間、凄まじい衝撃波が放射状に爆発四散し、天井から無数の巨大な鍾乳石がまるで雨あられのように崩れ落ちていく。


抉られた大地の裂け目からは、先ほどまでとは比較にならない高熱のマグマが、まるで意思を持った間欠泉のように一気に噴き上がり、飛び散った灼熱の飛沫が周囲の硬質な岩肌をバターのように溶かし、白煙と猛烈な熱風が俺たちの肌を容赦なく焼き焦がす。


「~~~~ッ! なんたる威力……!」

「―――ゴラクZさん!? 大丈夫!?」


叫ぶ俺の視線の先。

そこでは遥か後方へと吹き飛ばされながらも、辛うじて受け身を取ったゴラクZさんの無事を確認し、一瞬だけ胸をなで下ろす。


この場面では当然として、ゴラクZさんは常日頃から油断や慢心、自惚れがない人だ。

……無論、想定外にして避けられぬような罠である場合は、実直すぎる性格ゆえに嵌まることも多いが、それはそれとして、こと対面での真剣勝負ともなれば、彼に対して隙を突くことは至難の業に近い。


――だからこそ、今の攻撃がいかに規格外の速度で行われた不意打ちだったかが分かるというもの……!

にしても……!


「っ、おい待ってくれ! 俺たちは戦いにきた訳じゃないんだ! 話を聞いてくれないか!?」


俺は、先の奴の一撃により僅かに歪んだ足場を踏み締めながら、眼前の巨躯をまっすぐに見据えた。


オルガヌスは【憤怒】の権能を持つ竜主。

自身が抱く【怒り】を【熱量】へと変換し、あらゆる物質を灼き尽くすその性質上、こいつの精神は常に【怒り】に支配されている。


普通ならまともな話し合いを提案するだけ無駄なことだろう。


……以前の俺も、そう考えていた。


だが、当時のオルガヌスと出会い、戦う中で俺はある事実に気づいた。

こいつの抱く【怒り】は、何も衝動的な感情なだけじゃないことを。


そして、決してこちらが【怒り】に触発されず、【怒り】を抱くことがなければ、こいつとは意志の疎通――対話の余地は残されていることを。


「~~~っていうかさ! その……問いかけ……? ってのが俺には分からないんだけど……まずはそこから教えてくれないか?」


―――冷静な問い。

敵意は一切見せず、当然【怒り】の欠片もない疑問。

それは当然、奴の権能の影響を受けないがためのもの。

戦闘を回避するために、思考をフル回転させて紡いだ言葉。





……だったからこそ、俺はある事実を見逃してしまっていた。


そんな、取り繕うような、ご機嫌を取るかのような俺の問いに、やがてオルガヌスは怒りに燻らせた赤い瞳を細め、再び声を広間に響かせた。


《……世界が再び大きな災厄に覆われ、理が歪められたとき、我らは再び目覚めの時を迎える―――》

「……? なんだ、それは……?」


冷徹なまでの威圧感を含んだその響きに、俺は思わず眉をひそめる。

って、あれ? これ、どこかで聞いたことがあるような――と、俺がそう思ったと同時、後方にいたゴラクZさんが再び俺の近くに歩みを進めながら言葉を零した。


「ム、これは……メインストーリー第二章五幕、『原生の胎動』の導入で流れた叙事詩の一節か……? だが、なぜ奴がこれを……!?」


『原生の胎動』……? って、そうだ! 確かに間違いない!

あれは《ユグ:ドライアス》のメインストーリーに登場する叙事詩の一節だけど……。


《―――我らは滅びず、形を変え、ただ、虚構の中で生き続ける……》


さらに紡がれる言葉に合わせ、空間の温度が跳ね上がっていく。

空気が赤く歪み、額から流れ落ちる汗は地面に届く前に沸騰して霧散する。


オルガヌスは、ゆっくりと巨大な四肢を動かして巨躯を起こし始める。

背に折り畳まれていた翼が耳障りな軋みを上げて広がり、その漆黒の影が広間全体の太陽を――いや、天井の赤白い光を完全に覆い尽くした。

足元のマグマが激しく逆巻き、熱風が暴風となって吹き荒れる。


……まるで世界そのものが、オルガヌスという存在に呼応しているかのように。


《真なる王の、名の下に―――》


そうして限界まで高まった熱量の中で、竜主は静かに、しかし絶望的にクリアな声音で……。








―――――あり得ない名前を告げた。







「我らが竜種の王、マ(・)ス(・)タ(・)ー(・)。……全てを滅ぼす刻が来た」


「――――――――は?」



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