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最強ギルドごと異世界に転移した最強種たち、暇なので世界を滅ぼしてみた  作者: 朝雨 さめ
第二章

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第二十話 不死王 VS 灼炎主 ①



【《ユグ:ドライアス》における、猛虎焔獣(ブレイズ・ビースト)の戦績】


■総合データ

――総挑戦者数:3,252,348人

――挑戦成功者数:100人

――挑戦成功時間:29分

――平均挑戦時間:42秒

――挑戦成功数:1回


この圧倒的なまでの戦績は、《ユグ:ドライアス》史上最も悲惨な戦績としてその歴史に名を刻んだ。

尤も、これ以降実装された種族主へ挑戦することすら諦めたプレイヤーが多かったために、同主とは単純な数値での比較はできないが、それを差し引いてもこの結果は圧倒的であった。


同時最大挑戦人数が100人であるレイドバトルにおいて、総挑戦者数が300万人を超えているということは、最低でも3万回以上の凄絶な戦いが繰り広げられたことを意味し、その大半が僅か40秒足らずで灰にされてきたことから、如何に種族主という存在が最強として設定されているかが伺えるだろう。


当然、唯一挑戦を成功させたパーティですら、参加種族王は10人、その他精鋭90名の当時の最高戦力をもってして成功させたものであり、たった一人でクリアする、なんて芸当は神でもない限りは不可能であった。


しかし、そんな最強のレイドボスが今――――たった一人のプレイヤーに対し、牙を剝いていた。


「――――ォラァッッ!!」


火山全体を揺るがすような地響きと共に、灼炎の巨躯が爆発的な速度でサクラノヴァへと迫る。

次いで、イーディスの四本の剛腕から放たれるのは、まるでこの火山内部の全エネルギーを凝縮したかのような、絶対的な破壊の嵐。

一撃一撃が当たれば即死級の連撃は、かつてのプレイヤーの悉くを蹴散らした純粋な暴力の塊ゆえに、簡易的な防御ですら意味を成さない。

その上、死ぬことがないというアドバンテージゆえの低ステータスを余儀なくされる不死種であれば、僅かに拳が掠める程度ですら致命傷となり得る可能性がある――が、しかしサクラノヴァは迫りくる暴威に対し、潜り抜けてきた激戦の経験から冷静に魔法を唱えた。


『……ふん、【略奪の死兵バンデッド・アン・デッド】』


サクラノヴァが骨の指先を微かに動かし、短くその呪文を紡いだ瞬間。

爆発的な突進を見せていたイーディスの目の前に六人の死者が這い出る。

目玉がこぼれ落ち、皮膚が爛れた海賊のような醜悪な不死者たちは、カトラスのような剣を掲げて巨獣へと立ち向かう。


「ハッ、小賢しいィ!!!」


とはいえ、最強と称されるほどの怪物を彼らが止められるはずもなく、イーディスはその剛腕の嵐によって悉くを消し炭と化し、そのままサクラノヴァに肉薄し、圧殺する――はずだった。


「ンなモンかァ!? この程度じゃ――――……ッ!?」


サクラノヴァを完全に射程圏内に捉えたその刹那、イーディスの肉体に、生まれて初めて経験する違和感が駆け巡った。

何が起きたのかは分からない。

だが自身の獣としての直観が、本能的な危機感として脳内に警鐘を鳴らしていたことで彼はすぐさま攻撃の手を止め、遥か後方へと大きく跳躍して距離を取った。


『……なんだ? 急に怖気づいたのか?』


そんな姿を見たサクラノヴァは、突然として後退するイーディスに挑発の言葉を残すが、しかしイーディスの脳内はその言葉に対する反論をする余裕はなく、依然として頭に浮かんでいたのは困惑と疑問だった。


(一体何が起きた……!? 奴ァ何もしてねェハズだが……!?)


イーディスは、自身が超速で動くための超反則的な動体視力を持つ獣である。

故に、彼の行動の何もかもが視えていたが――何も視えなかった。

相手の不死種は一切何もしていない。

それなのに、なぜか身体の制御が利かず、上下の感覚が激しく揺らぐ。

世界が歪むということを生まれて初めて経験したイーディスは、やがて己の意志に反してその場に膝をついた。


(ンだこりゃァ……!? 俺が膝を……いやッ、そんなことより力が――――)


イーディスが思考を巡らし、自身の体に起きた不調を把握しようとした時、死の宣告が脳内に響く。


『―――あぁそうか……力が思うように出ない、か?』


「ッ!? 何をした……!?」


膝をつき、隙だらけの無様な姿にもかかわらず、攻撃するでもなくただ見下ろしてくるだけの骸骨に、イーディスは激高する。

自身がしたことといえば、突如目の前に現れた人間を消し炭にしたことだけ。

たったそれだけの事なのに、まるで感じたことのない重圧に押しつぶされ、粘度の高い溶岩の中に閉じ込められたかのような身動きの取りにくさを感じる。


……だが、サクラノヴァは両手を広げ、こう、言葉を放った。


『……そう動揺するな。確か……"未知だから面白い"……ではなかったか? くくっ……そのまま"お願い"でもするのなら教えてやらんこともないが……?』


「―――!」


それは、決闘前にイーディスが放った言葉だった。

故に。


「クハッ、いいなァ、アンタ面白ェ、面白ェよ!!!!」


自身が発した言葉で煽られたイーディスは先の怒りを鎮め、愉悦に口元を吊り上げた。

未だ拳を交わした訳ではないというのに湧き上がる高揚感と、体中を満たす充足感が自身の細胞を活性化させているのを感じる。

そしてイーディスはそんな風に思わせた相手を、次第に心の底から叩き潰したいと思うようになり、自身の四つの腕に魔力を込め始めた。













―――この時、サクラノヴァがイーディスに対して一切の説明をする気もなかったために彼は知る由もなかったが、そもそもイーディスが違和感を感じたのは自身の予想通り、直接サクラノヴァが何かをしたからではなく、先の生まれた死者を殺したことによる影響である。


サクラノヴァが先に放った一つのスキル――【略奪の死兵バンデッド・アン・デッド】。


その能力は、《自身の視界内にスキルレベルに応じた数の死者――最大[6]体を好きな数だけ同時に召喚することができる》という簡単なものだが、このスキルには付随して発動する真価が存在する。


それが、この能力で生み出した死者を()()()()()()()()()()()()()[30秒間]、[80%]()()、という驚異的なまでの能力。


不死種が得られる一般スキルの一つでもあるにも関わらず、これほどまで破格の性能を有しているのには、当然理由がある。

強力な能力がある反面、デメリットとしては、このスキル使用時に生み出した死者が、[30]秒間、誰にも倒されなかった場合は、"術者本人"の"全ステータス"が"一体毎"に、[60秒間]、[100%]低下するというものであり、最大数召喚時の失敗を考えれば、なんと360秒間、全ステータスが600%も低下するという馬鹿げたものとなる。


さらに言えば、一体でも残った時点で全ステータスが100%も低下し、発動者のアドバンテージもまた一切消えるという点は、このスキルがいかに浪漫を追い求めたかのようなスキルでもあることを示している。

当然、多くの不死種プレイヤーは使うこと自体を忌避しているが、しかしサクラノヴァはこのスキルを戦闘時に必ず一度は使用する。

その背景には、彼自身の性格であるリスクを追い求めるという性質も少なからずあるが、しかし実際のところ、彼の知略と高度な読みを組み合わせることで、彼はこれを限りなく失敗しない技として昇華させているためである。

とはいえ彼自身の読みの中でさえ普段は流石に一、二体ほどの召喚に留めていることが多く、最大数まで出すなんてことは余程の馬鹿でなければしない。


……尤も、それはかつてのゲーム内での話だが。


―――この時、サクラノヴァが生み出した死者数は最大の6体。

ゲームでの常識で考えれば、攻撃を止めることでイーディス側は勝利したも同然の悪手中の悪手なのだが、そんな仕様などを知り得ないイーディスは最大数である六体を一瞬で壊滅。

結果として六つもの各ステータスを大幅に剥奪されることになる……が、ここで()()()()()()予想外の出来事が発生した。


サクラノヴァの狙いはあくまでゲームの仕様に基づいた、イーディスの高いステータス数値を奪うことだった。

種族主としての高い攻撃力や魔力、防御力など、厄介なステータスを一気に下げようとしていたものの、ところがここはゲームと似て非なる現実の世界。

この世界が弾き出したデバフの解釈ではシステム上の攻撃力や防御力が下がるのとは違い、なんと現実の肉体を構成する基礎体力や筋力、免疫力に魔力、さらには神経伝達力や判断力といった、実世界に即した能力値に適用されたのだ。


そして、不幸にもこの予想外の出来事こそが……結果的にイーディスの運命を完全に狂わせることになってしまった。

なかでも致命的だったのは、戦闘において最も重要な判断力の低下だった。


判断力とは即ち、周囲の情報を精査し、自身にとって最適な選択を取るための力。

根源を守り、種族の頂点たる種族主がその地位にあるためには、圧倒的な武力のみならず、この優れた状況判断力が不可欠。


だが……大きすぎる能力は、時に大きな代償を伴う。


「ハッ、()()()()なら問題ねェ! 俺の火力を舐めるなァッ!!!!!」


イーディスが種族主として誇っていた初期の判断力の実数値があまりにも高すぎたがゆえに、【略奪の死兵バンデッド・アン・デッド】によって割合で減少した絶対量もまた、あまりに大きすぎたのだ。

その結果、彼は自身の肉体に起きている異常事態を正しく認識することすらできず、自ら破滅へと突き進む選択を重ねるという、最悪の状況に陥ってしまった。


そして、時間の限られた中でその好機を見逃すほど、サクラノヴァも愚かではない。


『この程度だと思うのなら、貴様の真価とやらを見せてもらおうか? ……【時の墓標(セメント・モーリー)】』


「……! なんだァ?」


この時、サクラノヴァの放った呪文をイーディスが理解できなかったのは、決して判断力が低下している影響からではなかった。

いかに判断力が低下していようが、自身の身に起こる影響があれば流石に認識することは可能である。

だが、サクラノヴァが放った魔法は、この決戦場すべてを黒い液体で埋め尽くすのみで、イーディス自身には何の影響もなかったのだ。


『……さて……遺言があるなら聞くが……』


サクラノヴァが冷酷にそう言い放ったその時、しかしイーディスの魔力が徐々に膨張を始め、周囲の大気が熱で揺らぎ始めた。


「……んだとォ? ……つくづく俺の事ァ舐めてやがるな……? 良いだろう……俺の全力で灼き尽くしてやるよ……!」


―――――そう、彼はだれが何と言おうが最強の一主。


たとえ判断力が鈍ろうとも、どれほど力を落とされ、体力を削られようとも。

ゲームの中での特殊なレイドボスには多くの場合、あるシステムが構築されている。


狂信的な大神官や世界を制する魔王、呪われた最強の剣士に古代の超兵器。

それら最高峰の強者たちに共通して組み込まれているシステム――それは『第二形態』への移行システムである。


通常の形態を第一形態として、自身の体力を削りきられた瞬間、あるいは特定の条件を満たした時に本来の力を解放するというチートじみたものは、多くのゲームにおいても絶望の瞬間と言っても過言ではない。

第一形態よりもステータスを爆発的に上昇させ、あらゆるデバフを強制解除し、体力を全回復させる究極のチート能力。


当然それは、灼炎主であり、レイドボスとして君臨していたイーディスにも備わっている。


「ハァアアアアアアアアアッ!!!!!」


力を籠め、自身の魔力を膨らませるイーディス。

抑圧された魔力を自身の熱量に変換し、大気を震わせるほどの圧力とともに咆哮を上げる。

背に揺れる蒼炎が火花を散らし、四本の腕をマグマに煌めかせていく――――。



【応援お願いします!】


「続きはどうなるんだろう?」「面白かった!」

など思っていただけたら、下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします!


面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!

 

ブックマークもいただけると本当にうれしいです。


何卒よろしくお願いいたします!

 

次回更新は……!

盛り上がりって大切だと思うんです……が、平日に出すのは悩ましい……、。

うーん、う~~~ん……明日、1時に出します……。

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