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竜は静かに暮らしたい  作者: イエス・ノー
一章 王位継承の争い
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情報屋

「あのサディストには悪い噂がかなりあるし、問題が発覚しても金と権力とコネでもみ消す。だからだれも奴を裁けねぇ」


「別に法で裁くわけではない。手段を問わないならやり方はいくらでもある」


「お前、相当ヤバいな」


「お互い様だろう?お前も裏社会の情報屋なんだから悪事になんども関わっているはずだ」


「確かにな。それで、何のネタがほしい?不正か?闇金か?腰から下か?」


不正はもみ消されるし、腰から下もたいしたダメージにならないだろう。


だから私が選ぶのは闇金だ。


「闇金のネタだ」


「闇金か。えっとな、あいつは裏の仕事で暴力団と関係がある。その暴力団は大規模でそれぞれの組が経済、情報、武力を担当していて、一番よく関わているのが経済だ。それで、裏の仕事を進めるために常に闇金をン億も借りて、それで利益を出して借金に上納金を上乗せして返してる。だからかなり仲がいいから、裏切らせるのは難しいぞ」


「別に裏切らせるわけではない。サディスト王子の利用価値を無くすだけだ」


「・・・やっぱお前、そんなことさらっと言うあたり相当イカレてやがる」


「よく言われるよ」


官僚だったころの後遺症みたいなものだ。


公私混同はしないが、そのせいで仕事時はかなりおかしいとよく言われた。

最終的には省庁内で『血と涙の概念すらないサイコパス』と言われた。失礼な。

少なくとも仕事と全く関係ないことをしているときは普通の人だ。・・・多分。


閑話休題。


暴力団、つまりヤクザはいくら仲が良くても借金が払えなくなった途端に追い込みをかけてくる。

ヤクザは貸金業法とか全く気にしないから何するか分からない。


やり方としては、まず後ろ盾の商会を潰したあと、リリアに頼んで警察の上部を動かしてもらう。

そのあと犯罪資金という名目でサディスト王子の口座をすべて凍結する。


さすがに不動産などは難しいが、何億もの借金をすぐに返せるほどの現金は持っていないだろう。

おそらく闇商会が潰れた時点で現金を用意し始めるかもしれないが、銀行は数千万の金を用意するだけでも数日はかかる。

さすがに一つの銀行では管理が大変なため、支店に分散させるのだ。

だからいきなり何億も用意しろと言われても用意できるわけがない。


おそらく王子の権限で無理矢理現金を作らせようとするだろうが、そんなことをすれば銀行からの信用を失う。


つまり闇商会が潰れた時点でほぼ勝負は決まったようなものだ。


「よくわかった。かなりいいネタをありがとう。もしまた機会があれば利用させてもらう」


「おい、酒はどうするんだ?」


あ、大切なことを忘れていた。


「すまない、もう一つ情報が欲しい。酒代は情報料として受け取ってくれ」


「・・・まあ、『滅怨の輝石』をもらったから、酒代ぐらいじゃ足りんが特別に教えてやろう」


「ありがとう。俺が知りたいのは、サディスト王子の後ろ盾の商会の名前とその商会と取引をしている商会、それとまだ取引をしていない大規模な商会の弱みだ」


「それを知ってどうするつもりだ?」


「それは教えられんな。教えるとシノギを横取りされるかもしれんからな」


「そうだな。ここは裏の業界の者が集まる酒場だ。事件屋に聞かれたら横取りされる。それで商会だが、後ろ盾の商会だが名前はザグレブ商会。その商会と取引のある商会はレート商会。そして最後だが、取引をしていないのはエルドール商会で、オーナーが妻がいるのにも関わらず不倫をしてる。・・・こんなところだ」


「なるほど。役に立ったよ。じゃあこれから俺は仕事をしてくるよ」


「頑張れよ。サディスト王子が消えるのは俺たちにとっても嬉しいことだからな」


サディスト王子はかなり嫌われているようだ。


王位継承権所有者からも国民からも。


そんなことは私の知ったことではないが、嫌われ役を引き受けていた上司を思い出す。

あの人はずっと煙たがられていたが、あの人は本当はとてもいい人だったと私は思っている。

罵声や嫌がらせにも耐え、陰ながら職員を支援していた。

私はその人に憧れ、行政の裏仕事を引き受けていた。

私は上司のようになれていただろうか。


いや、今は感傷に浸っている場合ではない。


でも、もしそのサディスト王子が私の憧れた上司のような人だったとしたら。


私はリリアを裏切り、そのサディスト王子に味方するのだろうか?


・・・。


・・・・・・・。


・・・・・・・・・・・。


何を迷っているんだ、私は。


まだサディスト王子が上司のようとは決まったわけではない。


一度味方になると決めた以上、それを覆すわけにはいかない。


今は余計なことを考えず、仕事に集中しなければ。

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