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竜は静かに暮らしたい  作者: イエス・ノー
一章 王位継承の争い
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チェックメイト

酒場を出て高級店が建ち並ぶエリアに来てエルドール商会を探す。

エルドール商会は指輪やネックレスなどを扱っているらしく、店内も貴族らしき人物をよく見かける。


今はどうでもいいので、店員にオーナーに合わせてくれるように頼む。

紹介状もないから会わせられないと断られ、重要な話があると食い下がり、少しもめたが渋々許可してくれた。


奥の部屋に案内され、応接室で待つように言われた。

応接室は意外と質素だった。

最低限必要なものと調度品が置かれているだけである。

もとからこうなのか、それとも一番ランクの低い応接室に通されたのか。

おそらく後者だろう。


しばらく待っていると、太り気味の眼鏡をかけた中年男性が現れた。

派手すぎない程度に豪華な服を着ている。

男は不機嫌そうにこちらを見て、面倒くさそうに口を開いた。


「困りますよ、紹介状もなしに無理矢理合わせてくれと言われても・・・こちらも多忙ですので、手短にお願いします」


「では単刀直入に。あなた不倫してますよね?」


私がそう言った瞬間、男は目に見えて動揺した。


「な、何のことだかわかりませんね」


「そう言いつつも動揺してるじゃないですか」


「く・・・何のつもりだ?脅して金を奪うつもりか?」


「違いますよ。ほんの一週間程度、この商会の役員にしてほしいだけですよ」


「何のために?」


「あまり詳しくは言えませんが、とある商会が邪魔なんですよ。それを潰すために協力してもらいたいだけです」


「・・・あんた、どこかのスジのもんか?」


「いいえ、違います。私はどこにも属していません。フリーの事件屋もどきですよ」


「・・・断ったら?」


「その時は不倫をあなたの奥さんと新聞社に教えるだけです。このまま破滅したくないのなら、私のお願いを聞いてください」


「・・・分かった、要求を呑もう。ただし条件がある。あんたの雇用期間が終われば、あんたはもう二度と私にかかわらないでくれ。裏社会のもんと関わるとろくなことがない」


「分かりました。ありがとうございます。では」


案外簡単に話がまとまったので、応接室を後にする。

職員証をもらい、レート商会へ向かう。


レート商会はザグレブ商会と同じように宝石を扱っている。

そこでもエルドール商会と同じようにオーナーと会い、協力してもらうよう要求する。

レート商会は商売敵のザグレブ商会を潰せるのはうれしいことらしく、すんなりと引き受けてくれた。


準備はできた。


あとは追いかぶせで潰すだけだ。


私はレート商会のオーナーと共にザグレブ商会へと向かった。










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「・・・で、あなたがエルドール商会の方ですか」


ザグレブ商会の応接室ででっぷりと太った男がこちらを見る。

値踏みするような、見下すような不快な視線だ。


「ええ、こちらがエルドール商会のオーナーの代理として来たルカート・ヘリダ氏です」


ルカートというのは私の偽名だ。

服装も和服ではなくエルドール商会の役員の制服を着ている。


「ルカートです。本日はお忙しい中、わざわざ時間をとっていただき誠にありがとうございます。さっそくですが、本題に入りましょう。本日は我が商会との取引をお願いするためにやってきました。取引したいのはザグレブ商会の宝石です。もちろん対価は払いますので、取引をお願いできますでしょうか」


「ふーむ・・・」


こちらを訝しむかのように見てくるザグレブ商会のオーナー。

何か失敗しただろうか?


「うーん・・・どうもおかしくないですか?」


気づかれたか?


「なにがでしょうか?」


「いや、言っちゃあ何ですが、我がザグレブ商会とレート商会は敵ではないですか。それなのに新しい取引先をレート商会が独占せずに我がザグレブ商会に紹介している。普通、独占した方が利益が出ると思うのですが・・・」


「なんだ、そんなことですか」


答えるのは長身瘦躯のレート商会のオーナーだ。


「実はですね、最近我がレート商会の職員の気が抜けておりまして、ライバルであるザグレブ商会に新しい取引先を紹介し、このままでは追い抜かれると職員たちに発破をかけるためにこの場を設けたのです」


「なるほど、そういうことでしたか。では私の方でエルドール商会のオーナーに連絡しておきます。詳しい取引内容はまた後日ということで・・・」


ここだ。


「オーナーさん、後日では困ります。できれば今すぐに大量の宝石を仕入れてくださいませんか。実はエルドール商会の従来の取引先が問題を起こし取引が出来なくなりもうすぐ宝石が底を尽いてしまうのです。ですからすぐに宝石を仕入れ、売ってください。それと申し訳ないのですが、仕入れたときに軽く形を整えておいてください。すぐにでも商品にできる状態にしておかないと大損失が出てしまうのです。もちろん手数料なども上乗せしますので、どうか・・・」


仕入れたときに少しでも宝石に手を加えれば、もう返品はできなくなる。

そして宝石をエルドール商会に売る直前でキャンセルする。

そうすれば大量の不良在庫を抱え、返品もできずに資金繰りがショートする。


私はザグレブ商会が宝石に手を加えた時点でエルドール商会の職員証を返却し、書類をでっち上げて私が独断でやったことにして解雇すればいい。


あとはザグレブ商会のオーナーが承認すればいい。


「分かりました。では今この場で軽く決めておきましょう。まず宝石の量ですが・・・」


チェックメイトだ。

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