検証成功、消えた民家の報告書【4話】
あれから数日が経ち、ノクシスは自室でマリエルから届いた書簡に目を通していた。
その内容はというと、民家とその住民はナーシャの手によって無事守られたという報告だった。
――上手く行った。
ノクシスの口角が上がる。
前回は詰めどころが甘かったせいか、謎の増援が現れるという不測の事態が起きてしまったが、今回はつつがなく成功したようだ。
不測の事態といえば軍師マリエルや騎士ナーシャがいたことぐらい。
だがそれも、山賊相手にはオーバースペック気味なナーシャを、民家の防備につかせることで無事完遂できたと考えれば悪くない。
いや、この結果を見ればむしろ僥倖であったとさえ言える。
「それにしても、人が住んでいたとは……」
考えてみれば民家は民家である。
誰か住んでいて当然ではあるが、ゲーム内でそれを確認する術はない。
しかし住民から送られてきたという、粗末な押花が、その存在を確かに感じさせた。
思わぬ収穫にノクシスは胸を撫で下ろす。
まぁ、救えるものは救っておいて問題あるまい――。
──コンコンコン。
不意に部屋の扉が叩かれる。
このタイミングで来るものなどひとつしかない。
「入れ」
「失礼します。ノクシス様宛に諜報部隊より報告書が届いておりましたので、お持ちしました」
待ってましたとばかりに報告書を受け取ると、その内容にざっと目を通す。
それによれば主人公達は無事、山賊を撃破しリーニュ地方へ向かったようである。
一抹の懸念点であった主人公達とナーシャの接触記録もない。
懸念していたズレは、一つも起きていなかった。
「ふ……検証は成功だ」
さて、次は──
と次の一手を考えようとしたところで、報告書に気になる一文を見つけた。
「……なんだと……」
視線が止まる。
理解が追いつかない。
いや、書かれている事実を脳が拒もうとしている。
再度視線を走らせる。
見落としではない、誤記でもない。
それは確かに記載されていた。
「ありえない……」
──特別観察報告。
件の民家は発見できず。
同地点に家屋の焼失跡を確認──。




