第二十一話
オイラ、仕事頑張ったんだぜ……
でも、休みはないんだぜ………なんでだろうな………..ほら、お天道様も笑ってら。オイラ、どこか遠くに旅がしてぇなぁ。
(お待たせしたうえに少なくてすいませんでした。二日起き更新できるように頑張ります)
「ここが占易組合だ」
「いや、これ銭湯……」
「いいから」
お蝶が俺の手を引き、中に引き入れる。俺は引かれるままに、銭湯の暖簾をくぐった。
客のいない小汚い桟敷に、脱衣所。手前の古びた番頭台には留守番だろうか、小さい子供が座っている。
「へいらっしゃい、大人は500バールだよ」
「よくみろ、私だ」
「んぇ?……あぁ、幡随院の娘か。組合かい?」
「あぁ、古物屋のとこにな」
子供に似つかわしくない口調で、お蝶とやりとりを重ねる。お蝶は知り合いなのだろう。入れてもらうように頼むと、子供は木槌を取り出し、番頭台をカン!と叩いた。すると、脱衣所の扉の色が、茶色から黒に変わる。お蝶はそれを見ると、ありがとよと子供に言いつつ、扉を開いた。
外の銭湯屋の外観から想像できないほど広い空間に、様々な店が並んでいた。店の看板には「手相協会」「タロット占い協会」「水晶占い協会」など、それらの店の名前が記載されている。黒いローブを被って水晶を眺める集団の前を通り過ぎる。
「お蝶さんや、ここは」
「これが組合さ。占易組合にはたくさんの協会があってな。一つ一つの協会が、クランみたいになってる。今向かってる鑑定団は、「古物鑑定協会」の一つのパーティーみたいなもんさ」
「ほぇ〜……そういやさっきの子供は?」
「あの番頭台の?ありゃガキじゃねえ。この占易組合の組合長さ」
「組合長!?」
「ハーフエルフだかハーフドワーフだか忘れたが、数百歳らしいぞ。恨み妬みも集まりやすい組合なうえに、一見さんお断りなもんだから、組合長自らあそこに座ってんのさ」
俺とお蝶が話している間にも、八卦占い協会のプレイヤーからお蝶に「お嬢!ガラの悪い商売なんてさっさと辞めたらどうだ!」とヤジられていた。お蝶はここに何回も来ているのだろう。
広間の最奥に、古びたブースがあった。「古物鑑定士協会」と書いてあるそこには、客であるプレイヤーやNPCの姿はない。1人の老人が椅子に座り船を漕いでいた。
「じいさん、私だ」
お蝶が声をかけると、老人はフワフワと目を擦り、「ありゃ、幡随院の。鑑定団に用事かい?……ちょっと待ってな、セイちゃん!」
老人が奥へと呼びかけると、和服姿の黒ブチ眼鏡をかけたオールバックの老人が現れた。プレイヤーである彼は、お蝶を見ると、相好を崩す。
「お蝶さん。これはこないだぶりですねぇ。今日はどうしたんですか?おや、後ろの方は……?」
「セイさん、今日はこいつを見てほしいんだ。私のおんなじ仕事してんだよ」
「……ご同業の方でしたか。これはこれは。私、セイと申します。」
俺はどこかで見た顔だな〜と頭を軽く下げる。セイさんは、今日は手も空いてますし、すぐ見ますよと俺たちを奥へと案内する。
「セイさん、今日はいつもの画商屋とかは?」
「今日はみんな出張に行ってますよ」
「出張鑑定か」
「えぇ、なんでもローマ国のダンジョンで未確認の遺跡から絵が出てきたらしくて」
セイさんは、古めかしい土器や刀等が並んでいる部屋で、俺を椅子に座らせる。
「さて、改めて。はじめまして、私が古物鑑定士協会のトンデモ鑑定団のメンバー、セイです。貴方がた「侠客」のステータスを、私のスキル古物鑑定で調べてみますね」
「えっ、ステータス見れるの!?」
「えぇ、偉大なる先人たちがどう言う訳か、古物鑑定スキルだと侠客のステータスを確認できる上にポイントの操作も出来ることを発見しましてね。彼らが私のところに大挙してきた時は驚きましたが。」
「侠客を救いたいのメンバーだろ」
「えぇ、えぇ、彼らが「侠客なんざ、時代の遺物なんだから古物鑑定スキルなら見れるのでは?」と冗談半分で私のところに」
本当に確認できた時は思わず、「運営もいい仕事してますねえ」と言ってしまったとセイさん。
「しかし、古物鑑定はレアスキルでしてね。それを持っているのが、この国では私含めて、トンデモ鑑定団のメンバーと鑑定士協会の数人ですから、どこでも見れるわけじゃないですよ」
俺はゲーマーたちはすげぇんだなぁと感心する。だが、その事実は隠されているらしい。奉行所に見つかったら、侠客探しに使われるかもしれないうえ、この占易組合自体もガサ入れされてしまう。
「まぁ、内緒ですよ」
セイさんは、そう言うと和紙と筆を手に取り、「さて、では早速、鑑定スキル、古物鑑定」とスキルを言いつつ俺の顔を眺める。
どのくらい時間が経っただろう。セイさんの顔に脂汗が浮きはじめた。え、そんな大変なの?
「……こんな……バカな……」
セイさんが思わず、と言う感じで声を漏らす。なに!?何が起きてんの!?セイさんは受付にいた老人に声を張り上げた。
「なぜ……ちょっと!!!!カンジさん!!!」
「……ふわぁ?セイちゃん呼んだ?」
「……鑑定スキル持ちの組合の皆さんに連絡を」
「……来たのかい」
「えぇ、これはとんでもないのが」
「腕が鳴るねぇ〜」
カンジと呼ばれた老人はヨタヨタと広間の方へ走っていく。セイさんなんでそんな笑ってんの。何が起きてんの。隣を見ればお蝶も困惑しているようだ。
「セイさん、何があったんだ」
「みんなが集まったら話しますよ」
しばらくしてドヤドヤと占易組合のプレイヤーらが集合してくる。十数名だろうか。鑑定スキル持ちを集めてくれと言っていたから、ここには鑑定士が集まったんだな。
「皆さん、鑑定スキルで彼を見てほしいんですが」
「セイさん、「厄ネタ」かい」
「えぇ、とびきりですね」
十数名はそれを聞くと、勢いよく鑑定スキルを唱える。そして一斉に頭を抱えた。
「なんだこれ!?」
「どうなってんのよ!!」
「全くわからん!!!!」
必死に目を凝らす者もいれば、ブツブツと天井を眺める者もいる。俺は珍獣になった気持ちで、手を振ったら怒られた。いや、手を振ってる場合じゃないんよ。
「セイさん、わかんねぇってどう言う」
「お蝶さん……彼はね、レベル値以外が全て文字化けしてるんですよ。私の古物鑑定スキルを持ってしても。」
「なんでだ。私の時はすぐ」
「えぇ、お蝶さんの時はすぐ他の数値も出ました。ですがねぇ、全く読めないんですよ彼」
「そんな、そんなことあるのか?」
「いえ、初めてですね……ただ、この組合で誰かが鑑定できなかったもの「厄ネタ」はたまに出てきますから、そう言う時は、こんなふうに皆さんで解析するんですよ」
つまり、今、俺は厄ネタとしてパンダしてる訳か。どうすんのよこれ。だが、しばらくすると1人の水晶を持ったプレイヤーが「あ」と思い出したかのように声を上げた。
「私、呪いの文字列でこれ見たことあるかも」
その一言でやんやと言っていた鑑定士たちはすぐさま文献や資料を調べ始める。そして
「あった!これじゃないか!?」とタロットを操っていたプレイヤーが文献を取り出す。鑑定士たちはそこに群がると、俺と文章を見比べながら解読を始めた。
「解読できるのは、これ?」
「他の部分は無理だ」
コソコソと鑑定士が相談をして、結局セイさんが「申し訳ないのですが、いま、わかったことは」と切り出す。
「あなたがレベル2で……そのほかは、文字化けの羅列で……おそらく呪われているというよりも、祟られているのではないか?というのが見立てです。」
「そ、その祟りはどんな」
「えーとですね、色々あるみたいなんですが、一部解読できたのは「殺意や敵意のない魔物には本来の力の100分の1しか出ない」ですね」
「……」
セイさんは項垂れるように手元の紙に目をやる。いや、スライムくんたち敵意と殺意しかなかったけど!?謎が深まってんじゃねえか。
その後、俺の文字化けしたステータスをさらに研究するため、1週間程度の時間をくれと言われ、俺たちは占易組合を出た。
帰り際に番頭台の組合長から「動物の難に気をつけろ」と言われたが、こないだの火車の件だろ?もう遭遇してんだわ。落ち込む俺の背中をお蝶が優しく撫でる。優しい。泣きそう。
「まぁなんだ。1週間もすりゃセンさんたちが解読してくれるだろう。それまで待とう」
「うん……」
どーも!詳細不明の祟りに襲われているレベル2のクソ雑魚冒険者です!と俺は、スライムに向かって叫んでいた。
殺意が無ければ俺はこいつらに襲われないんだろうと思って、握手スタイルで近づいたら溶かされた。なぁ、センさん、本当にその鑑定あってんのか?
いつものようにフンドシでボコされて、門兵の与兵衛さんに励まされ町に戻る。冒険者組合へはしばらく行っていなかった。
低すぎるレベルの問題もあるし。そもそも俺はこのゲームに対するモチベがどん底近くまで下がっていたというのもある。
できることが少ないのだ。火車の件で佐之助にもらった2万バールはすでに鑑定代に消えている。金もないしモチベもない。
俺は、江戸の外れをのんびりと歩く。もうアカウント作り直そうか。祟りに遭っているらしいこの体ではできる事がない。
だが、この「雷門」というアバターで知り合ったNPC達は大勢いる。アバターを作り直すと、彼らの記憶から「雷門」は消えてしまう(らしい)それはそれで、嫌だという気持ちになったのが自分でも驚いた。
案外、「雷門」としてパンゲアをプレイすることに愛着がわいているのかもしれない。
「薬草摘みのクエストでもするか」
とりあえずは、鑑定士たちの鑑定を待つ間、俺はぼんやりと非戦闘のクエストを受けようと、両国に足を向けるのであった。
朝七時に間に合わなければ、昼か夜に更新します。
多分、2日ごととか。
よろしく願います。




